瑠衣said
『よしっ！』

俺には秘密がある。

誰にも言えない秘密が、

『なんとかならねえかな？』

そんなことを口に出しても変わらないから、俺は今日も隠す。

秘密にしておいたほうが身のためだ。

・・・

『おっはよ、仁！おっさん！』
「たく、うるせえ」
「もう少し抑えなさい」

元気に挨拶しただけなんだけどなぁ？

『そっちのが元気出るだろ？』
「黙ってろ」

こんな時間でも俺にとっては大切だった。

ずっとここにいたいと思った。

でも、そんな時間も崩れ落ちる。

今までのように

・・・

『待てっ！』
「おらっｯ！」

どごっ

『ｯｯ！』

背中に一発受けちまった。

「捕まえたぞｯ！」
「瑠衣、平気か？」

ズキｯ

『ｯ』

顔を歪めたのが分かったのだろう。

「帰るぞ」

それだけ言って俺を抱え、仁は歩いて行く。

「手当てをするか、見せてみろ」

おっさんはそう言ってくれるが、俺は背中を見せられない。

『大丈夫だって！大したことねえよ！』

努めて明るく話しても2人にはバレバレだった。

「ふんっ、」

思いっきり剥ぎ取られてしまった。

「は？」

どうすればいいんだ？

「瑠衣…？」

またバケモンのような目で見られるのか？

「瑠衣っ！」
『あ、』

俺の背中には羽が生えている。

「病気か？」
『…わかんねえ、でも昔からこうだ』
「それは平気なのか？」
『なんの症状もねえんだよ』

そんなことを打ち明け、一週間。

2人は俺のことを化け物扱いすることもなく、毎日が過ぎていく。

『な、なんとも思わねえのかよ…？』
「？なにがだ」

仁もおっさんも理解し損ねる、という顔で見つめてくる。

「そんなものがあっても瑠衣は瑠衣だろう？」
『！』

仁のその言葉が数ヶ月経った今でも、俺の心の支えとして深く残っている。

ホークアイズの時間はどんなものよりも、柔らかく、心地よかった。