景♂晴 魔力混濁ネタ
#1
「な、何が起こったのでしょうか……」
「…………」
通信から聞こえる心底不思議そうなマシュの言葉に、マスターである立香はなんと返すべきか分からなかった。
「……とりあえず……戻ろっか」
永倉さん、お願いしていい? 何かを悟ってしまったかのような表情で絶句している永倉新八に声をかけながら、立香は少し離れたところでうつ伏せに倒れている武田晴信と傍らで棒立ちになって晴信を見下ろしている長尾景虎に目を向けた。
**
事の発端はレイシフト先で想定外のエネミーの大規模な群れに遭遇したことだった。元々の目的である巨大エネミーを撃破した後だったこともあり、多少消耗があったものの戦力としては何も問題は無かった。
……はずなのだが、召喚されてからまだ日が浅く強化が十分でない晴信が運悪く相性の悪いエネミーに横から突き飛ばされてしまった。
「大将!!」
「俺のことは気にすんな! 新八は目の前の敵を倒すことととマスターを守ることだけ考えてろ!!」
視界の端でその様子を捉えた永倉が思わず晴信が飛ばされた方に振り返って吠えるが、晴信はそう怒鳴ると体勢を立てなおして服の汚れを払った。
「くそっ! 量が多くてまどろっこしい!! おい! 新八と景虎はマスター連れて離れたところに退避しろ!」
「……宝具か! 了解だ!!」
「え~、私が宝具解放すればよくないですか? 晴信と違ってピンピンしてますし」
「ちょうど俺の近くに敵が固まってるからその方が都合がいいんだよ! お前は先駆けだ!!」
「……はーい」
行くぞマスター、と永倉に声をかけられた立香はエネミーが大立ち回りをしている晴信に気を取られている隙をついて、景虎と永倉と共に『風林火山』の射程範囲外まで逃れるために走り出した。
「……よし」
3人の後ろ姿を横目で確認した晴信は宝具解放の為、魔力の放出量を上げた。しかしその瞬間、晴信のエーテルで編まれた心の臓がドクリ……と嫌な跳ね方をした。
「う゛ぐ……!?」
晴信は思わず息をつめて胸の辺りのスーツをぐしゃりと握り、背中を丸めながら片膝をついた。晴信が引き付けていたエネミーたちは絶好のチャンスを逃すまいと、一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「……晴信!?」
「嘘……!? も、戻らないと晴信さんが!!」
先頭を走っていた景虎が晴信の魔力の乱れを感じて振り返ったのと同時に立香も異変に気付き、思わず晴信の方に戻ろうとした。
「駄目だマスター!! どう考えても間に合わねぇ!!」
「けど……!!」
永倉の制止に思わず立香が足を止めた瞬間、晴信を取り囲んだエネミーがほぼ同時に光線を放った。
「「「……!!!!」」」
3人が同時に言葉を無くして立ち尽くした。終わった、と三人が絶望したのもつかの間、その光線はすぐに消え、周囲にいたエネミーが瞬きの間に真っ二つに切り裂かれていた。
「晴信さん!! 無事だったん……えっ?」
「な、何が起きてやがる……」
3人が見つめる先にはいつものようにまっすぐに敵を見据える晴信の姿があった。しかし、その後ろ姿には多くの違和感があった。
いつもなら日月の軍配を携えているはずの右手には洋装の時は使用しない太刀が握られており、首筋が隠れるほどの長さしかないはずの白銀の襟足が肩甲骨を覆う程にまで伸びて毛先から中間にかけて漆黒に変化していた。
「…………」
通信から聞こえる心底不思議そうなマシュの言葉に、マスターである立香はなんと返すべきか分からなかった。
「……とりあえず……戻ろっか」
永倉さん、お願いしていい? 何かを悟ってしまったかのような表情で絶句している永倉新八に声をかけながら、立香は少し離れたところでうつ伏せに倒れている武田晴信と傍らで棒立ちになって晴信を見下ろしている長尾景虎に目を向けた。
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事の発端はレイシフト先で想定外のエネミーの大規模な群れに遭遇したことだった。元々の目的である巨大エネミーを撃破した後だったこともあり、多少消耗があったものの戦力としては何も問題は無かった。
……はずなのだが、召喚されてからまだ日が浅く強化が十分でない晴信が運悪く相性の悪いエネミーに横から突き飛ばされてしまった。
「大将!!」
「俺のことは気にすんな! 新八は目の前の敵を倒すことととマスターを守ることだけ考えてろ!!」
視界の端でその様子を捉えた永倉が思わず晴信が飛ばされた方に振り返って吠えるが、晴信はそう怒鳴ると体勢を立てなおして服の汚れを払った。
「くそっ! 量が多くてまどろっこしい!! おい! 新八と景虎はマスター連れて離れたところに退避しろ!」
「……宝具か! 了解だ!!」
「え~、私が宝具解放すればよくないですか? 晴信と違ってピンピンしてますし」
「ちょうど俺の近くに敵が固まってるからその方が都合がいいんだよ! お前は先駆けだ!!」
「……はーい」
行くぞマスター、と永倉に声をかけられた立香はエネミーが大立ち回りをしている晴信に気を取られている隙をついて、景虎と永倉と共に『風林火山』の射程範囲外まで逃れるために走り出した。
「……よし」
3人の後ろ姿を横目で確認した晴信は宝具解放の為、魔力の放出量を上げた。しかしその瞬間、晴信のエーテルで編まれた心の臓がドクリ……と嫌な跳ね方をした。
「う゛ぐ……!?」
晴信は思わず息をつめて胸の辺りのスーツをぐしゃりと握り、背中を丸めながら片膝をついた。晴信が引き付けていたエネミーたちは絶好のチャンスを逃すまいと、一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「……晴信!?」
「嘘……!? も、戻らないと晴信さんが!!」
先頭を走っていた景虎が晴信の魔力の乱れを感じて振り返ったのと同時に立香も異変に気付き、思わず晴信の方に戻ろうとした。
「駄目だマスター!! どう考えても間に合わねぇ!!」
「けど……!!」
永倉の制止に思わず立香が足を止めた瞬間、晴信を取り囲んだエネミーがほぼ同時に光線を放った。
「「「……!!!!」」」
3人が同時に言葉を無くして立ち尽くした。終わった、と三人が絶望したのもつかの間、その光線はすぐに消え、周囲にいたエネミーが瞬きの間に真っ二つに切り裂かれていた。
「晴信さん!! 無事だったん……えっ?」
「な、何が起きてやがる……」
3人が見つめる先にはいつものようにまっすぐに敵を見据える晴信の姿があった。しかし、その後ろ姿には多くの違和感があった。
いつもなら日月の軍配を携えているはずの右手には洋装の時は使用しない太刀が握られており、首筋が隠れるほどの長さしかないはずの白銀の襟足が肩甲骨を覆う程にまで伸びて毛先から中間にかけて漆黒に変化していた。
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