──…出会ってしまった。
気分は最悪、雰囲気も最悪。
何もかもが最悪な状況である。
少し、時を戻そうか。
「学校へ行きましょう？」
そう、咎人の二人に言ったところまではよかった。
歩きで行くかと言うところまでもスムーズにまとまった。
学校の正門付近に一人の女性が立っていたのだ。
まるで、誰かを待つかのように。
その女性こそヒロインのシュランデ・スタッカト。
彼女は私たちを見つけた瞬間、気難しい顔をしてやけに高いヒールをコツコツと鳴らし、近づいてきた。
「ごぎげんよう、クレカリー様」
下の名前で呼ぶなんて無礼な人。
私の方が立場は上なのに。
「えぇ、ごぎげんよう、スタッカト令嬢」
スタッカトのヒールが高いため、自然にスタッカトの方が目線が高くなる。
コイツ、何もわかってない。
ゲームじゃ、もうちょっと作法とかはしっかりしているほうだったのに。
「アクシア様の好物を教えていただけませんか？」
彼女は兄様の婚約者と言う立ち位置である。
まぁ、全くと言っていい程好かれてはいないが。
「いえ、私も把握はしていないのですよ。気難しい方ですからね」
知るわけない。
ゲーム上でもほとんど出演していないキャラなのだから。
「まぁ、御兄妹ですのに？そんな…。よっぽどアクシア様はクレカリー様の事を好いておられないのですね…」
しくしくとわざとらしい泣き真似を披露してみせるスタッカト。
ウザイ。
「あら、それでしたら愛情が必要であるはずの婚約者様が何故、夫の好物をご存じなくて？」
「それはっ、その...........」
そういうことで、空気は最悪。
剣持はご自慢の剣をスタッカトに向けるわ、伏見は強めの妖気をスタッカトに当てるし。
もう、なんか嫌だ。
「ねぇ、刀也、ガク。早く行きましょう」
逃げたい…。