好きなひと
#1
ひらりと身を翻して湖畔の上を舞う蝶が、彼女の姿によく似合う。
身分違いの恋に悩まされた、大昔の彼女と彼。
彼女の容貌はまるで華のようで、そこらの男は皆虜にした。
彼女の住む街は、ちょっとした繁華街。
彼女の家がやる店、呉服屋の看板娘は、彼女ではなかった。
格の高い彼女のお姉様。彼女とは比べ物にならないものの、またきれいなお嬢であった。
お姉様が、自分より綺麗な女は嫌いじゃと彼女を虐げていたことを、世間は知るまい。
彼女の仕立て術はとんでもないもので、都から来た男に高値で買われていた。
彼女の家の近くには美しい瑠璃色をした湖があった。街の皆の安息の地といえば、誰もがここの名をあげるであろう。凍玻璃湖との名であった。
凍玻璃湖の近くに広がる森は深緑の魔物が住むと言われていた。
ある朝、暴虐なお姉様から逃げ、彼女は凍玻璃湖に出てきた。
お姉様の今日の昂り具合は、もう狂っているようにも見えた。お姉様の婚約者が、彼女のほうが好きだと婚約を放棄したのだ。彼女は、今回はお姉様が悪いわけではないとわかっていた。そのため、誰にも告げ口をせず逃げたのである。
お姉様は苛立ちに身を任せ、体の赴くままに動く。お姉様は凍玻璃湖とは反対側の街に出て、暴動を起こしてしまった。
そこで彼女が戻ろうとすると、森の中に信じられぬものを見た。
「あなた…もしかして…」
「ほう、娘、ちょっと付き合ってくれないか」
深緑の魔物だった。
身分違いの恋に悩まされた、大昔の彼女と彼。
彼女の容貌はまるで華のようで、そこらの男は皆虜にした。
彼女の住む街は、ちょっとした繁華街。
彼女の家がやる店、呉服屋の看板娘は、彼女ではなかった。
格の高い彼女のお姉様。彼女とは比べ物にならないものの、またきれいなお嬢であった。
お姉様が、自分より綺麗な女は嫌いじゃと彼女を虐げていたことを、世間は知るまい。
彼女の仕立て術はとんでもないもので、都から来た男に高値で買われていた。
彼女の家の近くには美しい瑠璃色をした湖があった。街の皆の安息の地といえば、誰もがここの名をあげるであろう。凍玻璃湖との名であった。
凍玻璃湖の近くに広がる森は深緑の魔物が住むと言われていた。
ある朝、暴虐なお姉様から逃げ、彼女は凍玻璃湖に出てきた。
お姉様の今日の昂り具合は、もう狂っているようにも見えた。お姉様の婚約者が、彼女のほうが好きだと婚約を放棄したのだ。彼女は、今回はお姉様が悪いわけではないとわかっていた。そのため、誰にも告げ口をせず逃げたのである。
お姉様は苛立ちに身を任せ、体の赴くままに動く。お姉様は凍玻璃湖とは反対側の街に出て、暴動を起こしてしまった。
そこで彼女が戻ろうとすると、森の中に信じられぬものを見た。
「あなた…もしかして…」
「ほう、娘、ちょっと付き合ってくれないか」
深緑の魔物だった。
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