溺愛バトル 〜第二期〜
昨日。
Klonoa教会の出来事から、私は深く絶望を覚えた。
何もできずに時間だけが過ぎていく。
そんな無力な自分に、腹が立つばかりだ。
結衣「クロノア」
あんなことがあっても私は教会に通う。
依織と父に会える、その日まで。
クロノアが私に危害を加えるとは思ってないし。
ノア「…結衣さん」
…あんたは何でそんな優しい目で私を見てくるんだ。
やめろ。私をそんな哀れな目で見るな。
結衣「やめろ……」
ノア「結衣さん…?」
心配そうに駆け寄ってきたノアが、落ち着かせようと私の方に手を置く。
その温かい手を反射で振り払った。
結衣「あ…っ」
ノア「…結衣さんの気持ちは自分の身も案じずに[漢字]蘇生[/漢字][ふりがな]リサシテーション[/ふりがな]を使うほど大きい。
私が言うことではないが、決して諦めてはならないよ。その思いはきっと届く。
私もできる限り協力しよう。誰かが辛い思いをしている姿はもう見たくない」
…なぜ、そこまで言える。
他人としか言いようがない私に、なぜそのような綺麗事を言える。
悪魔の「神殺し」は多いだろう。そんな私に、なぜ…。
結衣「あんたは、私を誰かと重ねているのか?」
ノア「…そうかもしれない」
結衣「っ…私はあんたの愛人とは違う」
ノア「知っていたのか?私が結衣さんを…」
結衣「[漢字]結鬼[/漢字][ふりがな]ユウキ[/ふりがな]と言う悪魔と重ねていることか?」
そう、私は知っている。クロノアが望み続けているものを。
結衣「あんたもわかっているだろう?悪魔は嘘を見抜けると。
それだけじゃない。悪魔には欲望が見えるんだよ。
あんたの場合、強すぎたんだ。結鬼に会いたい、結鬼に会いたいってな」
ノア「……そうか。…あぁ、その通りだ。似ている。結衣さんは結鬼に。
おそらく、結衣さんは結鬼の子孫だ。魂の形も、結鬼とほとんど同じだ」
魂の形まで見えるのか。
つまり、結鬼の人柄は私のようだったということか?
だが、私が結鬼の子孫だとしたら、魂の形が似ているのは当たり前と言っていいのではないだろうか。
もしかしたら母が…と思いもするが、母は私と違いすぎる。
結衣「…残念だが、私は結鬼さんじゃない。
生まれ変わりじゃない…はずだ。結鬼さんの魂は、他の誰かに…」
ノア「違う…。結衣さんは、結鬼だ。私にはわかるのだ。
瞳も髪色も、覚醒した時の姿も、人柄も…。全て結鬼そのものだ」
違う。私はあんたが愛した人ほど綺麗じゃない。
そもそも、愛される資格なんていないんだ。
私は悪魔で、天界人を殺して…それで、人間まで巻き込んで…。
この罪を誰が許してくれようか。
心の広い神でも無理なのではないか。
結衣「私は…自分の仇うちに人間を巻き込んだ。
許されざる罪を犯して…その尻拭いに、あんたも巻き込もうとしている」
ノア「…確かに、そうかもしれない。
たとえあなた結鬼じゃなくとも…私は力になりたい。
教会を造ったのも、力の弱い人間を守るためなのだから」
どこまでも優しいな、この神は。
人間界にまで降りて、今もなお教会を守り続けている。
結衣「…じゃあ、力になって。私のために働いて。教会を一時的に捨てて」
ノア「……わかった。教会の警備は天使に任せよう」
パンパン、とクロノアが両手を叩くと、見るからに天使の天使が現れた。
??「あいよー、呼んだかあるじ」
ノア「この子はエル。こんな子だけど十二分に警備を任せられる。
人間には一切危害は加えない。…信じてもらえるかい?」
いや信じるだろ。
こんなに尽くしてもらって信じないってむしろ何?
エル「あれ、結鬼じゃん!生きてたの!?
なんだよー、何万年も顔見せないで。心配したぞー!?」
この天使も私を結鬼だと言っている。
私はそれほどまでに結鬼に似ているのか?
ノア「エル、その子は結鬼じゃないよ」
エル「はー!?うっそだー!同一人物じゃんねー!」
結衣「残念ながら、私は結鬼じゃないわ」
エル「うそ!絶対うそ!喋り方も結鬼そっくりじゃん!」
結衣「だから違うって…」
ノア「…エル、しばらくの間教会の警備を頼む」
エル「おっ、珍しいね。どっか行くの?」
ノア「少しね」
エル「了解。僕がいるからには安心しなー」
ノア「あぁ、任せたよ。…ほら、行くんだろう?[漢字]神界[/漢字][ふりがな]しんかい[/ふりがな]に」
…神界。
魔界、境界…そのさらに上にある神たちが住まう場所。
そのさらに上には[漢字]大神界[/漢字][ふりがな]だいしんかい[/ふりがな]がある。
ゼウスやカオスなど、神の中でも高位な神が住まう場所だ。
ここにはクロノアですら立ち入ることを許されない。
だが、神界でも大神界でも、そこに住まう神の許可が降りれば立ち入ることができる。
結衣「もちろん行く」
なぜ神界に行くのかと言うと、神界に違う蘇生の仕方を知っている神がいるかもしれないからだ。
クロノアが使おうとしていた蘇生は、とても高難易度だと言う。
奇跡でも起こらない限り、ゼウスやカオスでも難しいらしい。
それほど複雑で高難易度の魔法なのだ。
…まぁ、とても大神界より位の低い神が、その方法を知っているとは思えないが。
手当たり次第探っていくしかない。
ノア「なら掴まりなさい。ちゃんと掴まっていないと、次元の狭間で一生を彷徨うことになる」
結衣「………わかった」
それだけは本当に勘弁なので、クロノアの手をぎゅっと握る。
ノア「転移」
クロノアがそう唱えてからコンマ数秒後に見えた景色は、すごく綺麗だった。
結衣「………わぁ」
その光景を見て、思わず、らしくもない声が出てしまった。
本当に綺麗で…ふわふわしている。
今まで見たことがない、言葉にできないほど美しいところ。
ノア「驚くだろう。魔界からすれば、ここは本当に天国のようなところだからな」
結衣「…そうね。…何だろう…。不思議とここに来たことがある気がする。
まぁ、来たことがあるのなら、忘れるはずないけど」
ノア「……いや、その感覚は正しいと思うよ。少なくとも私は。
ここには、結鬼と一緒に住んでいたからね」
何かを思い出すような目で、周りを見渡すクロノア。
結衣「そう」
あり得ない…。でも、この場所に体が馴染む感覚…。
ほぼ確実で、私はここに来たことがある。
本当に、私が結鬼の生まれ変わりだと言うのか?
ノア「…とりあえず、知り合いの神に依織さんと王魔さんの魂が通ってないか聞いてみよう」
まずクロノアが紹介してくれたのは、ガブリエルという高位の天使だった。
ガブ「お、珍しいな、くろのんがここに帰って来るなんて」
くろのん……?
ノア「色々あったんだ」
ガブ「それで、何か用か?ゆっきーに似た女も捕まえて」
随分と話が早いな。
というかゆっきーとはなんだ?結鬼のことか?
ノア「蘇生の方法を探してるんだ。何か思い当たることはないか?」
ガブ「蘇生ぃ?知らねぇな。てか癒しの力とか何も持ち合わせてないウチに聞くなよ。
…まぁ、そうだな…ラッフィーなら知ってんじゃね?」
ラッフィー……?
いやさっきからあだ名のセンス皆無。
ここの神達は本当に頼りなるのか…?
ノア「そうか、助かった」
それで伝わるんかい。
次に紹介してもらったのは、ラッフィーことラファエル。
ラファエルも高位の天使だ。癒しの神と呼ばれている。
ラファ「珍しいわね、クロちゃんがここに帰って来るなんて」
クロちゃん……?
クロノアは嫌われているのか??
ノア「色々あったんだ」
なんかデジャヴだな。
ラファ「あら、結鬼ちゃんじゃない!久しぶりねぇ!」
ラファエルまで…。どんだけ顔が広いんだよ結鬼。
ノア「ラファエルもか。
彼女は違うと言っているが、私は結鬼の生まれ変わりだと思っている」
ラファ「…そうだったわね。結鬼ちゃんはもういない。
…でも、私もこの子は結鬼ちゃんの生まれ変わりだと思うわ」
結衣「………」
わからない。そこまで言われると、私も自分がわからなくなってきた。
私は一体、なんなんだ…?何として生きればいい?
悪魔として?人間として?結衣として?結鬼として?
でも、今はそんなことどうでもいい。
結衣「あの、生物を蘇生する方法ってありますか?」
ラファ「…誰かを蘇生しようとしているのね?」
結衣「はい」
ラファ「…無理よ」
結衣「なぜですか?」
ラファ「無理なのよ。ゼウス様でも無理だった。……でも…」
結衣「でも…なんですか?」
ラファ「…これは…成功例がほとんどない魔法なのよ…。
この魔法で新たな犠牲者を出すわけには…」
結衣「お願いします!教えてください!!」
ラファ「………あなたは自分を犠牲にしてもいいと言うの?」
結衣「はい。方法があるのなら、なんでもいいです」
ノア「それは…ダメだ…!せっかく…せっかく見つけたのに…」
結衣「…クロノア。あんたが結鬼を愛する気持ちは痛いほどわかる。
大切な人を失った悲しみも。
でも…私は結鬼じゃない。結衣なんだよ」
ノア「………そう…か…私が求める人は…もうすでに……」
結衣「死んでも、私は生まれ変わる。その時は、また探しに来て。
それに、あくまで一つの方法でしょ?他の安全な方法が見つかるかもしれない。
…ラファエル様、教えてください。その魔法を」
ラファ「…わかったわ。その魔法の名は…[漢字]生死の天秤[/漢字][ふりがな]ライフアンドデスバランス[/ふりがな]。
文字通り、自分の命を天秤にかけて他人を蘇生する魔法よ。
ゼウス様でも一度も使ったことがないと聞くわ。それぐらい、危険な魔法なのよ」
結衣「ありがとうございます…っ」
私は喜びに溢れた気持ちになった。
これで…依織が戻ってくる…。
ラファ「ハァ…こんな命知らずがいたとはね。
他の方法なら、オシリスに聞くといいわ。彼なら何か知ってるかもしれない。
この魔法は最終手段として使って。いいわね?」
結衣「はい。本当にありがとうございました」
ノア「オシリスか…。生きているのか?」
ラファ「わからないわ。わからないけど…手当たり次第探すよりいいでしょ?」
ノア「そうだな」
ラファエルはひらひらと手を振って私たちを見送ったのだった。
次は“オシリス“という神に会いに行くらしいが、どうやら生きているかわからないと言う。
ノア「オシリスの屋敷はここのはずだが…」
結衣「…?何もないけど」
ノア「……。どうやらオシリスは亡くなったらしい。生まれ変わってもいない」
結衣「えっ…!?」
亡くなった…だと…!?一体どうして…?
結衣「神は死ぬことがほとんどないんだろう!?じゃあなんで!?」
ノア「おそらく彼は…生死の天秤を試して死んだのだろう」
結衣「はぁ!?」
神がなんでそんな危険なことをしようとしているんだ!?
ノア「オシリスは研究好きだった。生死の天秤の成功率を少しでも上げるために…」
それで死んだと…?
意味がわからない。これじゃあもう方法が一つしかないじゃないか。
でも…成功する可能性もある。
生きて依織に会えるかもしれない。
結衣「……人間界に戻ろう」
ノア「なっ……正気か!?まだ方法があるかもしれないんだぞ…!」
結衣「私は一刻も早く依織と父を生き返らせたい。もう、この方法しかないんだ」
ノア「そんな…っ」
クロノアは膝から崩れ落ちた。
神がらしくもない。
結衣「…大丈夫。絶対成功させる。絶対。」
ノア「本当に…?」
結衣「絶対よ」
ノア「…わかった…戻ろう…」
これ以上この優しい神の心を壊してはならない。
私のようにさせてはならない。
少しばかりの不安を抱えながら、私たちは人間界に戻ったのだった。
Klonoa教会の出来事から、私は深く絶望を覚えた。
何もできずに時間だけが過ぎていく。
そんな無力な自分に、腹が立つばかりだ。
結衣「クロノア」
あんなことがあっても私は教会に通う。
依織と父に会える、その日まで。
クロノアが私に危害を加えるとは思ってないし。
ノア「…結衣さん」
…あんたは何でそんな優しい目で私を見てくるんだ。
やめろ。私をそんな哀れな目で見るな。
結衣「やめろ……」
ノア「結衣さん…?」
心配そうに駆け寄ってきたノアが、落ち着かせようと私の方に手を置く。
その温かい手を反射で振り払った。
結衣「あ…っ」
ノア「…結衣さんの気持ちは自分の身も案じずに[漢字]蘇生[/漢字][ふりがな]リサシテーション[/ふりがな]を使うほど大きい。
私が言うことではないが、決して諦めてはならないよ。その思いはきっと届く。
私もできる限り協力しよう。誰かが辛い思いをしている姿はもう見たくない」
…なぜ、そこまで言える。
他人としか言いようがない私に、なぜそのような綺麗事を言える。
悪魔の「神殺し」は多いだろう。そんな私に、なぜ…。
結衣「あんたは、私を誰かと重ねているのか?」
ノア「…そうかもしれない」
結衣「っ…私はあんたの愛人とは違う」
ノア「知っていたのか?私が結衣さんを…」
結衣「[漢字]結鬼[/漢字][ふりがな]ユウキ[/ふりがな]と言う悪魔と重ねていることか?」
そう、私は知っている。クロノアが望み続けているものを。
結衣「あんたもわかっているだろう?悪魔は嘘を見抜けると。
それだけじゃない。悪魔には欲望が見えるんだよ。
あんたの場合、強すぎたんだ。結鬼に会いたい、結鬼に会いたいってな」
ノア「……そうか。…あぁ、その通りだ。似ている。結衣さんは結鬼に。
おそらく、結衣さんは結鬼の子孫だ。魂の形も、結鬼とほとんど同じだ」
魂の形まで見えるのか。
つまり、結鬼の人柄は私のようだったということか?
だが、私が結鬼の子孫だとしたら、魂の形が似ているのは当たり前と言っていいのではないだろうか。
もしかしたら母が…と思いもするが、母は私と違いすぎる。
結衣「…残念だが、私は結鬼さんじゃない。
生まれ変わりじゃない…はずだ。結鬼さんの魂は、他の誰かに…」
ノア「違う…。結衣さんは、結鬼だ。私にはわかるのだ。
瞳も髪色も、覚醒した時の姿も、人柄も…。全て結鬼そのものだ」
違う。私はあんたが愛した人ほど綺麗じゃない。
そもそも、愛される資格なんていないんだ。
私は悪魔で、天界人を殺して…それで、人間まで巻き込んで…。
この罪を誰が許してくれようか。
心の広い神でも無理なのではないか。
結衣「私は…自分の仇うちに人間を巻き込んだ。
許されざる罪を犯して…その尻拭いに、あんたも巻き込もうとしている」
ノア「…確かに、そうかもしれない。
たとえあなた結鬼じゃなくとも…私は力になりたい。
教会を造ったのも、力の弱い人間を守るためなのだから」
どこまでも優しいな、この神は。
人間界にまで降りて、今もなお教会を守り続けている。
結衣「…じゃあ、力になって。私のために働いて。教会を一時的に捨てて」
ノア「……わかった。教会の警備は天使に任せよう」
パンパン、とクロノアが両手を叩くと、見るからに天使の天使が現れた。
??「あいよー、呼んだかあるじ」
ノア「この子はエル。こんな子だけど十二分に警備を任せられる。
人間には一切危害は加えない。…信じてもらえるかい?」
いや信じるだろ。
こんなに尽くしてもらって信じないってむしろ何?
エル「あれ、結鬼じゃん!生きてたの!?
なんだよー、何万年も顔見せないで。心配したぞー!?」
この天使も私を結鬼だと言っている。
私はそれほどまでに結鬼に似ているのか?
ノア「エル、その子は結鬼じゃないよ」
エル「はー!?うっそだー!同一人物じゃんねー!」
結衣「残念ながら、私は結鬼じゃないわ」
エル「うそ!絶対うそ!喋り方も結鬼そっくりじゃん!」
結衣「だから違うって…」
ノア「…エル、しばらくの間教会の警備を頼む」
エル「おっ、珍しいね。どっか行くの?」
ノア「少しね」
エル「了解。僕がいるからには安心しなー」
ノア「あぁ、任せたよ。…ほら、行くんだろう?[漢字]神界[/漢字][ふりがな]しんかい[/ふりがな]に」
…神界。
魔界、境界…そのさらに上にある神たちが住まう場所。
そのさらに上には[漢字]大神界[/漢字][ふりがな]だいしんかい[/ふりがな]がある。
ゼウスやカオスなど、神の中でも高位な神が住まう場所だ。
ここにはクロノアですら立ち入ることを許されない。
だが、神界でも大神界でも、そこに住まう神の許可が降りれば立ち入ることができる。
結衣「もちろん行く」
なぜ神界に行くのかと言うと、神界に違う蘇生の仕方を知っている神がいるかもしれないからだ。
クロノアが使おうとしていた蘇生は、とても高難易度だと言う。
奇跡でも起こらない限り、ゼウスやカオスでも難しいらしい。
それほど複雑で高難易度の魔法なのだ。
…まぁ、とても大神界より位の低い神が、その方法を知っているとは思えないが。
手当たり次第探っていくしかない。
ノア「なら掴まりなさい。ちゃんと掴まっていないと、次元の狭間で一生を彷徨うことになる」
結衣「………わかった」
それだけは本当に勘弁なので、クロノアの手をぎゅっと握る。
ノア「転移」
クロノアがそう唱えてからコンマ数秒後に見えた景色は、すごく綺麗だった。
結衣「………わぁ」
その光景を見て、思わず、らしくもない声が出てしまった。
本当に綺麗で…ふわふわしている。
今まで見たことがない、言葉にできないほど美しいところ。
ノア「驚くだろう。魔界からすれば、ここは本当に天国のようなところだからな」
結衣「…そうね。…何だろう…。不思議とここに来たことがある気がする。
まぁ、来たことがあるのなら、忘れるはずないけど」
ノア「……いや、その感覚は正しいと思うよ。少なくとも私は。
ここには、結鬼と一緒に住んでいたからね」
何かを思い出すような目で、周りを見渡すクロノア。
結衣「そう」
あり得ない…。でも、この場所に体が馴染む感覚…。
ほぼ確実で、私はここに来たことがある。
本当に、私が結鬼の生まれ変わりだと言うのか?
ノア「…とりあえず、知り合いの神に依織さんと王魔さんの魂が通ってないか聞いてみよう」
まずクロノアが紹介してくれたのは、ガブリエルという高位の天使だった。
ガブ「お、珍しいな、くろのんがここに帰って来るなんて」
くろのん……?
ノア「色々あったんだ」
ガブ「それで、何か用か?ゆっきーに似た女も捕まえて」
随分と話が早いな。
というかゆっきーとはなんだ?結鬼のことか?
ノア「蘇生の方法を探してるんだ。何か思い当たることはないか?」
ガブ「蘇生ぃ?知らねぇな。てか癒しの力とか何も持ち合わせてないウチに聞くなよ。
…まぁ、そうだな…ラッフィーなら知ってんじゃね?」
ラッフィー……?
いやさっきからあだ名のセンス皆無。
ここの神達は本当に頼りなるのか…?
ノア「そうか、助かった」
それで伝わるんかい。
次に紹介してもらったのは、ラッフィーことラファエル。
ラファエルも高位の天使だ。癒しの神と呼ばれている。
ラファ「珍しいわね、クロちゃんがここに帰って来るなんて」
クロちゃん……?
クロノアは嫌われているのか??
ノア「色々あったんだ」
なんかデジャヴだな。
ラファ「あら、結鬼ちゃんじゃない!久しぶりねぇ!」
ラファエルまで…。どんだけ顔が広いんだよ結鬼。
ノア「ラファエルもか。
彼女は違うと言っているが、私は結鬼の生まれ変わりだと思っている」
ラファ「…そうだったわね。結鬼ちゃんはもういない。
…でも、私もこの子は結鬼ちゃんの生まれ変わりだと思うわ」
結衣「………」
わからない。そこまで言われると、私も自分がわからなくなってきた。
私は一体、なんなんだ…?何として生きればいい?
悪魔として?人間として?結衣として?結鬼として?
でも、今はそんなことどうでもいい。
結衣「あの、生物を蘇生する方法ってありますか?」
ラファ「…誰かを蘇生しようとしているのね?」
結衣「はい」
ラファ「…無理よ」
結衣「なぜですか?」
ラファ「無理なのよ。ゼウス様でも無理だった。……でも…」
結衣「でも…なんですか?」
ラファ「…これは…成功例がほとんどない魔法なのよ…。
この魔法で新たな犠牲者を出すわけには…」
結衣「お願いします!教えてください!!」
ラファ「………あなたは自分を犠牲にしてもいいと言うの?」
結衣「はい。方法があるのなら、なんでもいいです」
ノア「それは…ダメだ…!せっかく…せっかく見つけたのに…」
結衣「…クロノア。あんたが結鬼を愛する気持ちは痛いほどわかる。
大切な人を失った悲しみも。
でも…私は結鬼じゃない。結衣なんだよ」
ノア「………そう…か…私が求める人は…もうすでに……」
結衣「死んでも、私は生まれ変わる。その時は、また探しに来て。
それに、あくまで一つの方法でしょ?他の安全な方法が見つかるかもしれない。
…ラファエル様、教えてください。その魔法を」
ラファ「…わかったわ。その魔法の名は…[漢字]生死の天秤[/漢字][ふりがな]ライフアンドデスバランス[/ふりがな]。
文字通り、自分の命を天秤にかけて他人を蘇生する魔法よ。
ゼウス様でも一度も使ったことがないと聞くわ。それぐらい、危険な魔法なのよ」
結衣「ありがとうございます…っ」
私は喜びに溢れた気持ちになった。
これで…依織が戻ってくる…。
ラファ「ハァ…こんな命知らずがいたとはね。
他の方法なら、オシリスに聞くといいわ。彼なら何か知ってるかもしれない。
この魔法は最終手段として使って。いいわね?」
結衣「はい。本当にありがとうございました」
ノア「オシリスか…。生きているのか?」
ラファ「わからないわ。わからないけど…手当たり次第探すよりいいでしょ?」
ノア「そうだな」
ラファエルはひらひらと手を振って私たちを見送ったのだった。
次は“オシリス“という神に会いに行くらしいが、どうやら生きているかわからないと言う。
ノア「オシリスの屋敷はここのはずだが…」
結衣「…?何もないけど」
ノア「……。どうやらオシリスは亡くなったらしい。生まれ変わってもいない」
結衣「えっ…!?」
亡くなった…だと…!?一体どうして…?
結衣「神は死ぬことがほとんどないんだろう!?じゃあなんで!?」
ノア「おそらく彼は…生死の天秤を試して死んだのだろう」
結衣「はぁ!?」
神がなんでそんな危険なことをしようとしているんだ!?
ノア「オシリスは研究好きだった。生死の天秤の成功率を少しでも上げるために…」
それで死んだと…?
意味がわからない。これじゃあもう方法が一つしかないじゃないか。
でも…成功する可能性もある。
生きて依織に会えるかもしれない。
結衣「……人間界に戻ろう」
ノア「なっ……正気か!?まだ方法があるかもしれないんだぞ…!」
結衣「私は一刻も早く依織と父を生き返らせたい。もう、この方法しかないんだ」
ノア「そんな…っ」
クロノアは膝から崩れ落ちた。
神がらしくもない。
結衣「…大丈夫。絶対成功させる。絶対。」
ノア「本当に…?」
結衣「絶対よ」
ノア「…わかった…戻ろう…」
これ以上この優しい神の心を壊してはならない。
私のようにさせてはならない。
少しばかりの不安を抱えながら、私たちは人間界に戻ったのだった。