# 完璧令嬢は悪女を演じる .
王城の広間は、祝祭の熱気に満ちていた。
完璧令嬢●●・クローディアは、今日、王太子デトワール・アイリスとの婚約披露宴を迎える。
七年もの間、この日のために完璧な令嬢を演じてきた●●の心には、婚約破棄という密かな計画が渦巻いていた。
眩いばかりの青いマーメイドドレスを身にまとい、父クローディア公爵と共に入場した●●は、集まった貴族たちに優雅な微笑みを向ける。
正面の壇上には、現国王と王妃、そして婚約者となる王太子デトワール様が、いつもの冷酷な表情で座っていた。
儀式は粛々と進み、いよいよ婚約の誓いの言葉を交わす時が来た。
形式的な言葉を述べるデトワールの声を聞きながら、●●の心臓は静かに高鳴る。
「殿下」
●●は、普段の柔らかな声とは異なる、深みのある声でデトワールに話しかけた。
広間の空気が一瞬にして張り詰める。
「私には、どうしてもお聞きしたいことがございます」
ざわめきが広がる中、●●はデトワールを真っ直ぐに見据えた。
「殿下は、わたくしとの婚約期間中、他のご令嬢と不適切な関係を持たれていたと伺っております。これは、事実でしょうか?」
デトワールの顔が険しく歪む。
だが、すぐに勝ち誇ったような表情になり、私を指差す。
「 ... ああ、だがお前はもう私の婚約者ではなくなるんだ! 」
その時だった。
デトワールの背後から、一人の可憐な令嬢がおずおずと歩み出てきた。
侯爵令嬢カローラ・ロミリアだった。
彼女は、不安げな表情ながらも、どこかな自身ありげな光を瞳に宿している。
カローラの予想外な登場に、広間は騒然となる。
貴族たちは、一体何が起こっているのか理解できずにいる。
「殿下……」
カローラは、震える声でデトワールに話しかけた。
「私は、もう隠し通すことはできません。●●様のおっしゃる通り、私は殿下…いえ、デトワール様と……親しくさせていただいておりました」
カローラの告白に、●●は冷ややかな微笑みを浮かべた。
驚くほど、計画通りに進んでいる。
「カローラ……!」
デトワールは、狼狽した様子でアメリアを振り返る。
「ですが、●●様がお考えのような、不誠実な関係ではございません!私たちは、互いの境遇を理解し、慰め合っていただけなのです!」
カローラは、涙ながらに訴えかける。
その言葉は、一部の貴族たちの同情を誘い始めた。
デトワールも、カローラの言葉に真意を見出したように、力強く頷いた。
「そうだ!●●、貴様はいつも私を邪険に扱い、心を開こうとしなかった!カローラは、そんな私の心の拠り所だったのだ!」
そして、デトワールは、 自信満々に●●に婚約破棄を突きつけた。
「●●・クローディア!私は貴様のような冷酷な女と、人生を添い遂げることはできない!よって、この場で貴様との婚約を破棄する!」
デトワールの言葉に、●●は一瞬、 プランが狂ったかのように見えた。
( そう…それでいいのよ。 )
しかし、すぐに普段の朗らかな微笑みを浮かべ、ゆっくりと答えた。
「はい、承知いたしました」
そのあまりに落ち着いた返答に、デトワールはもちろんカローラや王妃様たちも動揺に驚きの声を上げる。
周囲の貴族たちも、●●の態度に戸惑いを隠せない。
そして、●●は、冷たい表情をカローラに向け、ゆっくりと口を開いた。
「ですが、ロミリア嬢。」
ぱちんと扇子を閉じ、にこやかに微笑む。
( さぁ、私の時間よ。 )