# 完璧令嬢は悪女を演じる .
私は視線を真っ直ぐに国王陛下に向けた。
「 しかし、もちろんのこと この婚約解消が両家の友好関係にヒビを入れることのないよう、私及びクローディア家より最大限の配慮をいたします 」
カローラが口元を手のひらで覆い、小さく喜びの声を上げた。
殿下は呆然としたまま、私と己の両親を交互に見ている。
( まぁ、想定外でしょうね ... )
私とて、この計画が上手くいくかどうかは 天の采配に賭けているのだ。
つうっと冷や汗が首元を伝う。
王妃様がゆっくりと息を吐き出した。
「クローディア嬢 ... 貴女は ... 」
彼女の目には驚きと共に、ある種の尊敬の念が宿っていた。
「そして、もう一つ ... 」
私は人差し指を立てて続けた。
「 今回の件は、あくまで殿下個人の問題であり、王家に対する不信感を抱くものではございません。つきましては、もしも陛下がお慈悲をくださるのなら、この国の発展のため 引き続き王家に尽力させて頂きたく存じます 」
これは、私の人生計画において非常に重要な一手だった。
殿下との婚約解消は、確かに計算通り。
しかし、それだけでは終わらない。
私はクローディア家と王家との繋がりを保ち、さらに強固なものにすることで、自身の地位を盤石にするつもりだった。
国王陛下は深く考え込むように顎に手を当てた。
王妃様は、私の言葉の真意を探るようにじっと私を見つめている。
殿下は、顔を真っ青にして俯き、カローラ嬢は隣で もはや感涙の涙も出ないといった顔で固まっていた。
「 クローディア嬢 ... 貴女は、本当に ... 」
国王陛下は言葉を探すように宙を見つめ、やがて大きく息を吐き出した。
「 ... 承知した。その提案、慎重に検討させてもらおう 」
「 ありがたく存じますわ、陛下。」
私はにこやかに頭を下げた。
これで、私の計画の第一歩は成功したも同然だ。