この世界には、オルという青いオオカミがいました。そのオオカミは体は青く、目は黒でした。

その黒の中には少しだけ青色が入っています。それが、そのオルの特徴です。オルは大変珍しいオオカミなので、毎年、南から北へ戻ってくる時に、ハンターが次々森にやってくるのでした。

ある秋、オルは北の寒い森から暖かい南の森へ向かいます。その途中に村がありました。

「こんなところに村があるなんて知らなかったな」とオルは不思議に思いました。

「見つからないように少し避けていこう」とオルは身を伏せました。

「オ……ル……？」とどこからか子供の声が聞こえてきました。

「何だ⁉︎」とオルは叫びました。「オルなの？本当に本当に帰ってきたの⁉︎」と子供はびっくりして聞きました。

「えっ？お前何で俺のことを…？」とオルが聞き返しました。

「ほら、君助けてくれたでしょ？その時の赤ちゃんさ！覚えてくれているかな？僕だよ、ビリー！」とビリーは言いました。

「うん？あの時の人間？あの時の赤ん坊か！やっと思い出したぞ！確かお前の母親もビリーとか言ってたな。そうかそうか。お前か。久しぶりだな。大きくなったな。赤ん坊の時は俺の手で押し潰せるぐらいの大きさだったのに」とオルはうなずいて言いました。

「えっう、うん。そうだね……」とビリーはドン引きしました。

「ん？どうかしたか？」とオルはその様子を見て不思議そうに聞きました。

「えっいや、何でもない！ない！」とビリーはシャキッとして首を振りました。

「そうか。じゃあ、俺はもう行くぞ。お前と会えてよかった。またな！」とオルは南の方へ走って行きました。

「うん！またいつでも来てね！君なら大歓迎だから！」とビリーは手を振って見送りました。それからずうっと南の方へ行くと、また森が現れました。

「おっ、南の森だ。そろそろ着くかな」とオルは言いました。それからもっと進んで行くと、動物たちしかいない、集落がありました。「みんな！久しぶりだな！」とオルが叫びました。

「おおっ！やっと来たか！待っていたぞ。今夜は晩餐会じゃからな。間に合ってよかった」とこの集落の族長が言いました。

ここの集落の族長はゾウのゾラでした。

「お久しぶりです。ゾラ族長。今夜は晩餐会と聞いて、喜んで飛んで来ました。いやあそれにしても、やはり大きな集落ですね。誇れます。あっでは、私はこれで。皆に挨拶して回ります」とオルが頭を下げて言いました。

「ああ、回って来るといい。皆も喜ぶじゃろう。行っておいで」とゾラは優しく言いました。

「キルア（キリン）くん！久しぶりだな！あっパルア（パンダ）ちゃん、赤子できたの⁉︎おっ決まってるねえライ！（ライオン）ネウ（ねこ）ちゃん何年ぶり⁉︎イグ（いぬ）結婚したの？おめでとう！あれ？ブーイ（ブタ）またちょっと太った？」と順々に言いました。（ああ、またみんなと話せて嬉しいな！）とオルは思いました。

「あら、オルじゃない！久しぶりね！」と白いオオカミがオルに話しかけました。

「あっミカ！久しぶりだな！」とオルは白いオオカミに言いました。

「本当ね。そういえば、あなたってこんなに立派だったっけ？また一年たって、たくましくなったんじゃない？」とミカが聞きました。