無色な僕と透明な君
#1
世界には様々な色が溢れている。メロンは緑、向日葵は黄。同じ空も夕焼けはオレンジ、快晴は青。青も空と海は違う色。ものにはそれぞれ色がある。それは人も同じ。あの元気な男の子はオレンジで、そっちの可愛い女の子はピンク。
人の色はその人の性格や感情が現れる。でも、僕は無色だ。一ノ瀬透という存在がないかのように。
朝、窓からの朝日に起こされ始まる。朝ごはんを食べ支度をして学校に行く。退屈な授業を聞いて家に帰る。この毎日だ。でも人とは違う、僕の毎日がある。
僕は演技屋だ。様々な役を演じ、依頼のシチュをつくる。彼氏や友達があれば、アイドルもあった。なぜこんな事をやっているのか。
僕には心がない。何をしても何も感じない。文化祭、みんなは笑顔でいっぱい。体育祭で優勝したとき、みんなは喜んだ。僕以外は。
そして両親のお葬式の日、みんな泣いていた。でも、僕は一滴の涙も出なかった。何故泣いているのか分からなかった。その時気づいた。僕には感情がない。心が動かされることはないんだと確信した。つまらない人生だと。
高いビルに入り、上へ、空へと伸びる階段を登った。全てを諦めた。この先何も楽しいとは思えないだろう。
「楽しいが何かわからないんだった。無色の人間だからw。」
手すりに手をかけ、身を乗り出したとき、あの人が現れた。笑っているけど、どこか哀れんでいるような表情。その人は、飛び降りるなら僕についてきてと言った。僕はその人を気にせず再び手をかけたが、次に放たれた言葉が僕を振り向かせた。
「君に仕事がある。それは感情を無にして行う仕事だ。」
僕にピッタリだ。親はいず、お金を稼ぐあてもない。こんな時に最高な仕事と出会うとは。僕が役に立てる。
その人は大変かもなぁ、無理かもしれないなぁ、と呟いているが、そんなこと構わずその仕事を受けた。これが僕が演技屋になったきっかけだ。
今日も依頼が来た。今回の依頼は友達として一緒に遊んでくれというものだ。依頼主は羽住璃久という男子高校生だった。知らない人と遊んで何が楽しいのか、と思ったが考えても僕に分かるわけもなくやめた。羽住とは日曜日にファンタジーランドで遊ぶ。ファンタジーランドに行くのは僕は初めてだ。璃久はワクワクだそうでだが僕はワクワクとは何なのか、気になっていた。
日曜日、少し早くついてしまい辺りを見渡していると笑っている子供やそんな我が子を愛おしく見ている親ばかりで気分が悪くなり木陰で休んでいると僕を呼ぶ声が聞こえた。
「透さん。お待たせしました。」
そこには羽住と思われる男がいた。一見、僕と同じ男子高校生だが、彼の足を見るとズボンと靴の隙間から義足が見えている。僕は驚くでもなく同情するでもなく、何も気づかなかったように中に入るよう促した。中に入ってからも僕はいつも通り依頼の役、羽住の友達を演じた。そして別れを告げる時間。
「今日はありがとうございました。またの演技屋のご利用お待ちしております。」
お決まりの言葉を羽住に伝え、報酬を貰おうとするが、一向に渡す気配がない。報酬の事を知らないのかと思ったが違うようだ。
「お金は多く払いますのでもう少し、俺の話を聞いてもらえませんか。」
予想外の言葉に返答を迷うも、お金を貰えるならと提案を受けた。それから羽住は僕をカフェへと連れていった。何を話すのかと待っていたら、彼は急に靴を脱ぎ始め、隠していたであろう義足を僕に見せた。すると羽住は語り出した。
「俺は子供の頃から義足でした。だから小、中学校ではあまりクラスに馴染めず、いじめはなかったけど卒業まで友達がいませんでした。僕には生きている意味があるのかと。」
羽住の話にどこか親近感が湧く。僕は、欠けているのは足ではなく心だが、そのせいで苦労したという境遇に共感と同時に同じ無色がいることに喜びを感じた。その時ハッとした。僕は今まで感じたことのない喜びと安堵を感じていると気づいた。そんな僕を置いて羽住は語り続ける。
「でも、高校である人と出会ったんです。彼は陸上部で、高校で一人だった僕を陸上部に勧誘したんです。最初は義足に気付いてないと思い断ったんですが、気づいてもそれが何だと、諦めず結局は入部しましたwその行動が生きる意味を持たない俺に楽しみをくれたんです。そこからは色んな事に挑戦してみようと思えるようになりました。」
そう語った羽住は僕と同じはずの無色なのにどこか違った。羽住は無色だと思っていたけど、透明なんだ。何色でも染まれる透明。それに比べて僕は無色。色がない。染める土台すらもない。決定的な違いだった。羽住はありがとう、とお礼を言いカフェを出ていったがが、僕は出て行けなかった。僕は無色、だからと諦めてきたから無色なんだ。羽住みたいに頑張れば、色はなくても少なくとも透明になれる日が来るのかなぁと少しの希望を抱き、口元を綻ばせていた。
人の色はその人の性格や感情が現れる。でも、僕は無色だ。一ノ瀬透という存在がないかのように。
朝、窓からの朝日に起こされ始まる。朝ごはんを食べ支度をして学校に行く。退屈な授業を聞いて家に帰る。この毎日だ。でも人とは違う、僕の毎日がある。
僕は演技屋だ。様々な役を演じ、依頼のシチュをつくる。彼氏や友達があれば、アイドルもあった。なぜこんな事をやっているのか。
僕には心がない。何をしても何も感じない。文化祭、みんなは笑顔でいっぱい。体育祭で優勝したとき、みんなは喜んだ。僕以外は。
そして両親のお葬式の日、みんな泣いていた。でも、僕は一滴の涙も出なかった。何故泣いているのか分からなかった。その時気づいた。僕には感情がない。心が動かされることはないんだと確信した。つまらない人生だと。
高いビルに入り、上へ、空へと伸びる階段を登った。全てを諦めた。この先何も楽しいとは思えないだろう。
「楽しいが何かわからないんだった。無色の人間だからw。」
手すりに手をかけ、身を乗り出したとき、あの人が現れた。笑っているけど、どこか哀れんでいるような表情。その人は、飛び降りるなら僕についてきてと言った。僕はその人を気にせず再び手をかけたが、次に放たれた言葉が僕を振り向かせた。
「君に仕事がある。それは感情を無にして行う仕事だ。」
僕にピッタリだ。親はいず、お金を稼ぐあてもない。こんな時に最高な仕事と出会うとは。僕が役に立てる。
その人は大変かもなぁ、無理かもしれないなぁ、と呟いているが、そんなこと構わずその仕事を受けた。これが僕が演技屋になったきっかけだ。
今日も依頼が来た。今回の依頼は友達として一緒に遊んでくれというものだ。依頼主は羽住璃久という男子高校生だった。知らない人と遊んで何が楽しいのか、と思ったが考えても僕に分かるわけもなくやめた。羽住とは日曜日にファンタジーランドで遊ぶ。ファンタジーランドに行くのは僕は初めてだ。璃久はワクワクだそうでだが僕はワクワクとは何なのか、気になっていた。
日曜日、少し早くついてしまい辺りを見渡していると笑っている子供やそんな我が子を愛おしく見ている親ばかりで気分が悪くなり木陰で休んでいると僕を呼ぶ声が聞こえた。
「透さん。お待たせしました。」
そこには羽住と思われる男がいた。一見、僕と同じ男子高校生だが、彼の足を見るとズボンと靴の隙間から義足が見えている。僕は驚くでもなく同情するでもなく、何も気づかなかったように中に入るよう促した。中に入ってからも僕はいつも通り依頼の役、羽住の友達を演じた。そして別れを告げる時間。
「今日はありがとうございました。またの演技屋のご利用お待ちしております。」
お決まりの言葉を羽住に伝え、報酬を貰おうとするが、一向に渡す気配がない。報酬の事を知らないのかと思ったが違うようだ。
「お金は多く払いますのでもう少し、俺の話を聞いてもらえませんか。」
予想外の言葉に返答を迷うも、お金を貰えるならと提案を受けた。それから羽住は僕をカフェへと連れていった。何を話すのかと待っていたら、彼は急に靴を脱ぎ始め、隠していたであろう義足を僕に見せた。すると羽住は語り出した。
「俺は子供の頃から義足でした。だから小、中学校ではあまりクラスに馴染めず、いじめはなかったけど卒業まで友達がいませんでした。僕には生きている意味があるのかと。」
羽住の話にどこか親近感が湧く。僕は、欠けているのは足ではなく心だが、そのせいで苦労したという境遇に共感と同時に同じ無色がいることに喜びを感じた。その時ハッとした。僕は今まで感じたことのない喜びと安堵を感じていると気づいた。そんな僕を置いて羽住は語り続ける。
「でも、高校である人と出会ったんです。彼は陸上部で、高校で一人だった僕を陸上部に勧誘したんです。最初は義足に気付いてないと思い断ったんですが、気づいてもそれが何だと、諦めず結局は入部しましたwその行動が生きる意味を持たない俺に楽しみをくれたんです。そこからは色んな事に挑戦してみようと思えるようになりました。」
そう語った羽住は僕と同じはずの無色なのにどこか違った。羽住は無色だと思っていたけど、透明なんだ。何色でも染まれる透明。それに比べて僕は無色。色がない。染める土台すらもない。決定的な違いだった。羽住はありがとう、とお礼を言いカフェを出ていったがが、僕は出て行けなかった。僕は無色、だからと諦めてきたから無色なんだ。羽住みたいに頑張れば、色はなくても少なくとも透明になれる日が来るのかなぁと少しの希望を抱き、口元を綻ばせていた。
※ダブルクリック(2回タップ)してください
/ 1