wolf
必死で逃げるがネオンは太い幹に躓いて転んでしまった。
「うぐっ!痛っ……」
後ろを振り向くとハロゲンは直ぐ側まで来ていた。
なにか、なにかないか。
ローブに手を入れると小瓶が一つ入っていた。
これは……。
ネオンは杖をハロゲンに向けて呪文を唱えた。
「dissolve!ハロゲンを溶かせ!」
しかし、魔法は発動しなかった。
習いたての魔法だったからなのか、それとも対象物が違うのか。
所持している魔法薬品、もしくは身に着けている生物の一部と呪文が合っていても、その後に唱える対象物が違えば魔法は発動しない。
アイツがハロゲンではないと言うのか。
じゃあ、アイツは何だと言うのか。
まるで自分が物語の主人公ではないと言われている感覚。
もう、ここまでか。
ネオンは目を瞑る。
すると、脳裏に記憶が走馬灯のように流れた。
自分に無関心な父親、忘れてしまった母親。
孤児だからと貶してきた村の人たち。
不遇な人生。
せめて才能だけでも父親と似ていたら違う人生を送ることができていたのだろうか。
父親のことを憎んでいるくせに、そう思う自分が嫌い。
不幸のまま終わらせてもよいのか。
終わらせたくない。
見返したい。
「このまま諦めてたまるかァァ!!」
ネオンは杖を強く握りしめ、ウルフのエメラルドグリーンに輝く左目に突き立てた。
「グオオオォォ!!」
低く響き渡る叫び声。
空気が揺れたように感じる。
「これなら少しはダメージ入るだろう」
杖をぐりぐりと動かしていると、ウルフはネオンを振り払い、深く突き刺さった杖を引き抜きいて、草むらに投げ捨てた。
杖には血がベッタリと付いていた。
弱るどころか逆上したウルフは荒い鼻息を立てながらジリジリとネオンに近づく。
今度こそ駄目かもしれない。
そう思ったとき、どこからともなく呪文が聞こえてきた。
「freeze!ウルフ!」
空を見上げると箒に跨ったタンタルがいた。
タンタルが呪文を唱えると、ウルフはみるみるうちに凍りついて、程なくして動かなくなった。
それを確認すると、タンタルはネオンの元に降りた。
「ネオン、大丈夫だったか」
「あ、はい……でもどうして」
「あんな雄叫びが聞こえてきたら、確認しに行くのが教師の役目だろ」
「……あの、こいつはハロゲンじゃないんですか」
ネオンの魔法は発動しなかったのに、タンタルの魔法は発動した。
そのことが引っかかっている故の質問。
「ああ、おそらく。だから私は対象物を“ウルフ”と唱えた。そうすればこいつも含まれるからな」
「……」
ネオンはそんなことも思い浮かばなかったのか、と自分の機転の利かなさに……余裕がなかったことに、情けなく思った。
「君はこのウルフに顔を覚えられているから、今日の狩猟は中断しなさい。このまま外まで送っていこう」
「あ、いえ実はさっきまでクロムも一緒にいて、あいつも多分顔を見られています。だから、クロムを迎えに行かないと」
早々に気絶して離脱したけれど、念の為を思ってタンタルに伝えた。
「そうか。気を付けろよ」
「はい」
そう言うと、タンタルはあっさりと空へ飛び立った。
「うぐっ!痛っ……」
後ろを振り向くとハロゲンは直ぐ側まで来ていた。
なにか、なにかないか。
ローブに手を入れると小瓶が一つ入っていた。
これは……。
ネオンは杖をハロゲンに向けて呪文を唱えた。
「dissolve!ハロゲンを溶かせ!」
しかし、魔法は発動しなかった。
習いたての魔法だったからなのか、それとも対象物が違うのか。
所持している魔法薬品、もしくは身に着けている生物の一部と呪文が合っていても、その後に唱える対象物が違えば魔法は発動しない。
アイツがハロゲンではないと言うのか。
じゃあ、アイツは何だと言うのか。
まるで自分が物語の主人公ではないと言われている感覚。
もう、ここまでか。
ネオンは目を瞑る。
すると、脳裏に記憶が走馬灯のように流れた。
自分に無関心な父親、忘れてしまった母親。
孤児だからと貶してきた村の人たち。
不遇な人生。
せめて才能だけでも父親と似ていたら違う人生を送ることができていたのだろうか。
父親のことを憎んでいるくせに、そう思う自分が嫌い。
不幸のまま終わらせてもよいのか。
終わらせたくない。
見返したい。
「このまま諦めてたまるかァァ!!」
ネオンは杖を強く握りしめ、ウルフのエメラルドグリーンに輝く左目に突き立てた。
「グオオオォォ!!」
低く響き渡る叫び声。
空気が揺れたように感じる。
「これなら少しはダメージ入るだろう」
杖をぐりぐりと動かしていると、ウルフはネオンを振り払い、深く突き刺さった杖を引き抜きいて、草むらに投げ捨てた。
杖には血がベッタリと付いていた。
弱るどころか逆上したウルフは荒い鼻息を立てながらジリジリとネオンに近づく。
今度こそ駄目かもしれない。
そう思ったとき、どこからともなく呪文が聞こえてきた。
「freeze!ウルフ!」
空を見上げると箒に跨ったタンタルがいた。
タンタルが呪文を唱えると、ウルフはみるみるうちに凍りついて、程なくして動かなくなった。
それを確認すると、タンタルはネオンの元に降りた。
「ネオン、大丈夫だったか」
「あ、はい……でもどうして」
「あんな雄叫びが聞こえてきたら、確認しに行くのが教師の役目だろ」
「……あの、こいつはハロゲンじゃないんですか」
ネオンの魔法は発動しなかったのに、タンタルの魔法は発動した。
そのことが引っかかっている故の質問。
「ああ、おそらく。だから私は対象物を“ウルフ”と唱えた。そうすればこいつも含まれるからな」
「……」
ネオンはそんなことも思い浮かばなかったのか、と自分の機転の利かなさに……余裕がなかったことに、情けなく思った。
「君はこのウルフに顔を覚えられているから、今日の狩猟は中断しなさい。このまま外まで送っていこう」
「あ、いえ実はさっきまでクロムも一緒にいて、あいつも多分顔を見られています。だから、クロムを迎えに行かないと」
早々に気絶して離脱したけれど、念の為を思ってタンタルに伝えた。
「そうか。気を付けろよ」
「はい」
そう言うと、タンタルはあっさりと空へ飛び立った。
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