wolf
〜第二章〜 モリブデンとハロゲン
コバルトの帰還が嘘のように翌日からはいつもの日常が待っていた。
身仕度を済ませ、魔法学校へと向かったネオン。
「よーっすネオン!」
「クロムうるさい」
学校へ着くと早々にクロムにからまれた。
煩わしいと思いながらも、これがいつもの光景。
「授業始まるから教室移動しようぜ!サルファ先生怒ると怖いからな」
一限目は魔法薬学。
薬品の性質、知識を深め、調合することによって強力な魔法を生み出すことを目的とする授業。
「みなさん、揃っているザマスか?これより遅刻した者はもちろん、体調を崩した者、話を聞かない者も退出してもらいます」
サルファ・コッパー先生、通称ザマスはその厳しい性格と口調によって生徒たちに嫌われている。
「今回調合する魔法はあらゆる物を溶かすdissolveザマス」
サルファはdissolveを発動させるための魔法薬が入った小瓶を生徒たちに見せた。
そして、用意されていた巨大コンクリートの壁に向かって呪文を唱える。
「dissolve」
すると、コンクリートはみるみるうちに溶け出した。
同時に小瓶の中の魔法薬は少し減ったように見える。
教室内は生徒たちの驚きの声が響いた。
「呪文の後に対象物、今回の場合はコンクリートを指定すると更に効力が上がります。また杖を使えばコントロールも出来るようになります」
実践が終わると、サルファは調合素材の説明と、調合方法を丁寧に説明し始めた。
「準備ができた者から始めるザマス」
合図と共に生徒たちは素材の計量を始めた。
「これが出来るようになったら、俺は最強になるのか」
「喋ってると間違えるぞ」
黙々と作業しているネオンに対して、余計なことを考えているクロム。
そんな中、椅子が倒れる音がしたかと思えば、一人の生徒が声を上げた。
「先生!テルルが倒れました!」
テルルことテルル・ルテニウムは薬品の臭いにあてられて倒れしまったのだ。
「彼女のことは放っておきなさい。さて、そろそろ出来た者はいますか?順番に実践を始めるザマス」
サルファは呪文を唱え、杖をひょいっと振るとテルルを教室の外へと弾き出す。
続けて一つしか用意されていなかったコンクリートを地面からいくつも生やした。
そうこうしているうちに薬品の用意が出来たクロムは一番に名乗り出た。
「よーっし、一番最初は誰だ!dissolve!」
しかし、クロムの杖はうんともすんとも言わず。
「あははっ!クロムだっせぇ!」
「わ、笑うなよ」
他の生徒たちに笑われて、顔を真赤にさせるクロム。
ふと、サルファの方へ顔を向けると、
「ビスマスさん、真面目にやるザマス」
「すみません」
冷ややかな目で説教されてしまう羽目に。
席に戻ると、ネオンがクロムの肩をポンと叩き、まあ見ていなとでも言わんばかりの顔でコンクリートの前までやってきた。
「dissolve。コンクリートを溶かせ」
ジュワ〜〜……
サルファのときとまではいかないが、コンクリートは見事に溶けた。
「はい、結構ザマス」
ネオンは威ばるでもなく、出来て当然の澄ました顔で席へと戻る。
「ネオンスゲェな!後でコツを教えてくれよ!」
「後でな」
こうして次々と生徒たちは合格をもらう中、気絶したテルルとクロムは合格を貰えなかった。
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