？「おい大丈夫か！」
誰かの悲鳴のような叫びが聞こえる。うるさい。大袈裟な反応だった。
いつも私を見てくる男だった。
「…え」

なんで私が見えているの

見えるはずがない。だって今私死のうとした。あの男以外私のことが見えていない。
なんで？見えるはずがない、私が見える人なんて今までいなかった。
「うるさい。あんた何者なの。私は大丈夫だけど」
同様を隠しながらも冷静に答えた。
？「俺は坂本悠馬だけどー！坂元さんこそそれで怪我しないとか何者‼」
なんで私の名前を知っているのか。ということが気づかないうちに感じた。
久しぶりに自分の名前を呼ばれた。
今私は凄く驚いている表情をしているのだろう。
（これから坂本のセリフを『』とする。）
『あれ？坂元ななさんじゃなかったっけー！ちがったのかな。てかはやく上がってきな！』
「ご心配ありがとう。そしてなんでこんなに早い時間にいるの。あと近所迷惑なことに気づいてない。」
私は落ち着いた声で心配してくれたことに対してお礼を言い、気なったことを指摘した。
『なんてー‼』
返事をするのがめんどくさい。あぁ…そんな高くもない崖を上るのもめんどくさい。
私はゆっくり崖を上り終えた。
『大丈夫なの。なんで崖から落ちて無傷なの。今絶対わざとこけたよね。なんでわざとこけたの。あぶないでしょ。なんで無傷なの（2回目）すごくすごく体が頑丈なんだね。』
たぶん聞きたかったことを全部聞いたのだろう。
全部まとめて話したほしい。

　これが私と彼の出会いだった。

　５：４０

『それでななちゃんはどうしてそんなに頑丈なの。』
彼はそう言ってほっぺをつんつんしてくる。
　どうしてこうなった。何故私は人と登校しているのだ。
　（めんどくさい。）
　会話をよくキャッチボールと人々を例える。投げられたボールをキャッチするそして返す。そういうあたりまえなことが会話の中で人々はする。
でも私はその“あたりまえ”が面倒くさいのだ。
　「しらない。」
　この一言で私は十分だとこれで会話を終わらせられると思った。
　でも彼はそうじゃなかったみたいだ。
『へぇ…不思議だねぇいつからなの。痛いとか思わないの。』
　だんだん質問が増えていっているような気がする。なぜ彼はこんなに愛想が悪くてねぐらで面倒くさい人とこうやって話せるのだろうと不思議に思った。
　何時もの朝のはずが何時もみている景色のはずが少し違った景色のような知らない景色な気がした。そんなことありえるはずがないというのに。
　彼と話しているからだろうか。それとも実は私が少し楽しいと感じているからだろうか。（楽しいって今私思った…）
　面倒くさいはずの会話を楽しいと感じた。まだ私の心の中では楽しいという感情があったのだと思った。
「楽しい…」
私の口角が上がっていた。
笑った。無意識に楽しいということまで声に出してしまった。面倒くさいはずなのに。
『え…？ななちゃん笑った⁉楽しいって言った⁉え⁉俺の聞き間違い⁉』
小さな声だったのに聞こえていたのか。
相当耳がいいのだろう。
「あなたにとって私は何なの。」
普段笑わないがなんとなく聞いてみた。
『いっつも目が怖くてあんま好きじゃない人』
　「素直でよろしい。」　
　初めてふざけてみた。こんなのでいいのか。
　そして今普通に悪口を言われたような気がしたが素直で変な気を遣わず嘘をつかない彼がいい人だと感じた。
　『ありがとう。』
　…ありがとうなんて初めて人に言われた気がする。

そしてまた事件が起こる。