【僕は俺>俺が勇者になった理由】〜異世界行って人探しのついでに英雄になってやる〜
4月28日
「こんなところで何やってるんすか」
「え?」
「こんな遅い時間に一人で公園のブランコで座ってる人なんて、恋愛漫画ですか?」
「君、初対面でグイグイ来るね」
「初対面ではありますけど、僕は結構あなたのことを知ってますよ?」
「あははは、そっか、流石に私のことは知ってるのか」
「ええ、だって生徒会長さまですからね」
「ふふふ、私も有名になったもんだな…君のネクタイ的に一年生かな?」
「はい、ごく一般生徒、高校一年生佐久間涼太と言います。」
「じゃあ、私は生徒会長の桜田桃華。というかなんで私に声をかけたの?」
「なんとなく、ですかね。先輩はいつもここにいますよね?」
「げっ、私のことそんなにみてるの?変態エッチ」
「そりゃ、そんな悲しそうな顔して毎日公園にいたら気にしますよ」
「ははは、確かにそうだな」
「先輩、帰らないんですか?」
「帰りたくないからここにいるんでしょ?」
「そんなキリッとした顔で言わないで下さい」
「ふふ、君は面白いね」
「はあ、話しかけなければよかった」
「ああ!おいていかないでくれ!わかったから、帰るよ〜!」
[水平線]
「げっ、君もしかして私の家の隣だったの?」
「そうっすけど。逆に知らなかったんですね。まあ、初対面って言ってたんですもんね?ちょっと僕は傷つきましたよ」
「うい、それは本当にごめん」
「ああ、先輩あとこれどうぞ」
「お守り?」
「はい、俺の大事なお守りです」
「私なんかにいいのかい?会ってから数分の私に」
「いいんです、今の僕にはこれは必要ないです」
[水平線]
「んうう、またあの夢か…」
ここ最近ずっと同じ夢を見ている。それも全部先輩ばかりが出てくる…俺はやっぱり諦めきれていないのか。いくら探したって見つからないのにな…
「先輩一体どこに行ったんですか…」
天井を見つめながら、かすれた声で言った一言はとて情けなかった。
俺がこんなになっちまったのも、全ては三ヶ月前にあった出来事のせいだ。
[水平線]
12月24日
「おっはよ〜サクマ君!今日もいい天気だね!」
「先輩いい加減、朝から飛び乗っかってくるのはやめて下さい」
俺と先輩はあの日以来、一緒にいることが多くなったというか、毎日一緒に登校するくらいの仲にまでなった。
「ったく…なんで勝手に僕の部屋に入ってきているんですか?」
「それは、私が君の先輩だからかな?」
「理由になってません。いい加減降りて下さい…重いです」
「ああ!それは女性に言っていいことではないよ!サクマ君!」
はあ、いざ蓋を開けてみればまさかこんな人とは…学校では清楚でクールな生徒会長なのになあ。僕以外に知っている人はいないだろう。
「それはそうとしてサクマ君!今日は12月24日だよ?」
「それがなんですか」
先輩はつまりこう言いたいのだろう。
「また、どうせこんなかわいい先輩がいるんだからデートしてプレゼントを与えたまえ!っとか言うんでしょ?」
「さすがサクマ君だな、そんな君にはご褒美に私とデートできる権利を与えよう」
「まったく、僕はあなたの彼氏でないんです。せっかくの冬休みを台無しにしないで下さい」
「私の彼氏になってくれてもいいんだよ?」
「遠慮しときます」
これが毎日続くとなれば僕の苦労も伝わるだろうか。誰が好き好んでこの変人と一緒にデートするんだよ。
「てか、はやく降りろよ!」
キョトンとした顔でこちらを見る先輩に、深いため息が出る…
僕の平和はもう、帰ってこないのだろうか?
「着替えて、朝ごはん食べたら、考えてあげますよ」
「やった〜サクマ君最高!結婚してもいいよ?」
「冗談やめて下さい」
「え?」
「え?」
これ、冗談じゃないの?やめてそんな目で見るのは。僕がおかしいみたいな流れになってるから。
[水平線]
「母さん、父さん、おはよう」
「おお、起きたか涼太。今日は早いな」
「先輩がいなければあと1時間は寝てるよ」
後ろにニヤニヤしながら立っている先輩に、鋭い眼光を当てる。まったく、朝だけで何回ため息をついただろうか…
「あら、リョウタ起きたのね」
「ああ、おはよう母さん。そういえば真里と隼人は?」
「今日は朝から出かけたわ」
「そっか」
僕には双子の妹と弟がいる。俺が高一で、妹たちが中3、先輩は高ニだ。
「朝ごはんできてるからはやく食べなさい。あ、トウカちゃんは何かいる?」
「そうですね、う〜んじゃあココアが飲みたいです」
この人なんで朝から人ん家でココアもらってるんだろうか。全く理解できないのだが。
『今日のニュースです。昨夜から行方不明になった鈴木賢太くん14歳。いまだに見つかっておらず、捜査は続いて…』
そこでテレビは消された。せっかく僕がつけたのに。しょんぼりしていると小さくボソッと父さんが口を開いた。
「もう、行方不明なんざ懲り懲りだ…」
「…」
きこえたのは僕だけだろう。一瞬だけ父さんの顔が暗くなった。
それもそうだ。僕の父さんの父、僕からしたらおじいちゃんだ。
おじいちゃんは、おばあちゃんと結婚してすぐに行方不明になったらしい。だから生まれた時にはもうすでにおばあちゃんだけだった。
まあ、おばあちゃんは今でも元気に畑仕事やってるけどね。
「おーい、サクマ君?どうしたのボーってしてるけど」
「ああ、いやすみません。寝ぼけてて」
「ふ〜ん、まあそれはおいといてはやくして」
「え?」
「え?って何よ、ついさっき言ったじゃん!」
先輩が僕を指を刺しながら睨みつける。
「クリスマスなんだから二人で出かけようって」
「ああ、そんなこと言ってましたね。正確に言うと今日はイブですけどね」
「ぬう、いいからはやく!ねっおばさんいいでしょ?」
またそうやって母さんを味方にする。ったく、先輩はかまってちゃんじゃないか。
「はい、はい、じゃあ着替えたら行きますよ…」
僕は呆れた顔をしながら、リビングを出て二階へ上がった。
「先輩、のぞかないで下さいよ」
「なななな!何を言ってるんだ!のの、のぞくわ、わけないでしょ!」
「先輩、無理があるっす」
[水平線]
午後19時35分
「いやあ、今年も賑わってるね〜」
あたりを見渡しながら先輩が、イルミネーションに目を細める。
「僕には無縁の世界ですね」
「君は本当に空気を読まないね」
呆れたように話す先輩に、僕は一つ提案をする。
「先輩、どちらがいいプレゼントを買ってこられるかしょうぶしませんか?」
「ほ〜う、サクマ君よいい提案じゃないか」
顎に手を当てながら考える先輩。
「ルールは?」
顔をキリッとさせながら先輩が質問をしてくる。
「時間は20分お金は出せる範囲内ならいくらでもいいです。20分後にまたここに来てください」
「よし、決まりだ。ふふふ、サクマ君この勝負勝たせてもらうよ!」
「上等ですよ」
そして僕らの、無謀な戦いが始まった。
[水平線]
「う〜ん、どうしようかな。結構悩むなあ。自分で勝負仕掛けてはみたけど、失敗だったか」
ショッピングモールの中をぐるぐると歩き回る。開始から5分くらいで諦めかけていた。
「おっ」
そして僕が見つけたのは、ブレスレットやネックレスが売ってある店だった。
「へえ〜こういうの喜んでくれるかな」
悩む。とても悩む。う〜ん。葛藤すること数分。
「おっし、これに決めた」
[水平線]
「おうおう、サクマ君来ましたかね。どうだい私に白旗をあげなくってよ?」
「先輩、どうしたんすか。周りがリア充すぎて頭がお花おばかさんになったんですか」
「むう」
頬を膨らませ、足を蹴ってくる先輩はちょっと可愛かった。はっ、僕は何を言ってるんだ…とうとう壊れてしまったのか…?
「まあ、とりあえず見せ合いっこしますよ」
「そうだね、このやりとりも不毛だ」
そして先輩は持っていた袋から何やら箱を取り出して中身を出す。
「はい、メリークリスマス」
キラキラした笑顔に僕は目が眩しくなる。直視ができない…それは置いといて。
渡された箱を受け取り、中を見る。
「これはブレスレット?ってやつですか」
「うん、綺麗でしょ?」
花のブレスレット…少し可愛いではあるが、本当に綺麗だ。この花は…なんだろう思い出せない。
まあ、いいか。これはちょっと予想外だったな先輩のことだからてっきりドッキリでも仕掛けてくるのだと思ったけど。
「ほら、手出して」
「え、いや自分でつけますよ」
「いいから早く」
「は、はい」
左手を先輩の右手に差し出すと、ブレスレットはつけられた。
「これからも、そのよろしくね?」
いつもとは違い照れくさそうな先輩の顔に僕は、頬を赤らめ下を向く。僕も男だ。これは心臓に辛い。
「先輩、じゃあ僕からのをどうぞ」
ぎこちない雰囲気に我慢できない僕が先に口を開いた。
そしてプレゼントを渡す。
「花の髪飾り…」
あれ、反応悪い?もしかして失敗したのか…!?なんかダメなやつ?
「サクマ君ってこの花はしってるのかな?」
「え?そんなの知りませんけど。ただ先輩に似合いそうだったから」
「知らないか。ふふふ、私に似合うって」
口に手を当ててニマ〜ってした笑顔で見つめてくる先輩。
「僕がつけましょうか」
「え?ああ頼もうかな」
黒くて長いサラサラ髪は、とても甘い匂いがする。よく手入れされているのがわかる。
「できましたよ」
「どう?」
「似合ってます。綺麗ですよ」
「んん〜」
だんだん赤くなる先輩の顔は今にもパンクしそうだ。
「どうしたんですか?」
「いや、なんでもないさ…この無自覚キラーめ」
「え?」
よくわからないが、もう時間も遅いしそろそろ帰ろう。
「コチョウラン…あなたを愛しています、っか」
「先輩何か言いました?」
「いいや、なんでもないさ」
[水平線]
「先輩は大学どうするんですか?」
街を抜けて、イルミネーションもなく暗くなった道を二人で歩きながらふと思ったことを口にした。
「あ〜、そうだね今のところは決まっていないかな」
「先輩のことだから東大にでもどこにでも行けるんじゃないんすか」
一応こう見えて勉強、スポーツ万能な先輩は周りからしたらとても高嶺の花だった。おまけに生徒会長…憧れの存在。
「サクマ君」
ぼーっと考えているとき、先輩が話しかけてくる。
「なんでしょうか」
「私は来年から受験だし、生徒会長の座を退かなければならない」
「そう、っすね」
先輩がいなくなるのか。なんだか、ちょっと寂しさを感じている自分がいる。なにせこの人は濃すぎるからな。
「だから君に、生徒会長の席を渡したい」
「え…?」
あまりにも投げやりで突然すぎないか。
「前生徒会長は、次の生徒会長を推薦することができる。あくまで推薦だがな。私も去年の生徒会長に推薦をもらい、選挙で勝ったのだからね」
「へ、へえ…。」
いや、いやいや、僕には荷が重すぎるだろ。
「やってくれるかい?」
「…」
長い沈黙。僕は考える…深く。果たして僕に務まるのか?ごく一般生徒の僕に。
先輩は一体何を考えているのかさっぱりわからない。
先輩はじっとこちらを見て何も喋らない。
「わかりましたよ。でも、選挙で落ちたら意味ないですけどね」
「ふふふ、ありがとう」
踏切の手間まで来ているとき、先輩が僕の左手をグッと寄せて上目遣いで見てくる。
「な、なんですか」
距離の近さに、僕は顔を赤る。
「もう、私は今我慢できない。だからこの際言わせてもらおう」
「は、はい?」
「サクマ君、そ、その…私と」
何か言おうとした瞬間、踏切の音が鳴り響く。
掴んでいた手を離し、先輩は笑顔でこっちを見る。
「やっぱりいいや!気にしないでくれ」
「え〜」
踏切が上がると、先輩は走るように渡っていく。
「はやく〜サクマ君も!」
「はい、はい」
急かしてくる先輩に追いつこうと走る。一瞬だった。何かがバチっと弾けるような音がして、目の前にいた先輩はすでに消えていた。
「は?」
おい、おい意味がわからない。どうなっているんだ?は?消えた?先輩は?
死んだ?いや、それはないか…まずい頭が回らない。とりあえずどうすれば…
[水平線]
まるまる5時間…警察、家族全員で捜索したが見つからなかった。
先輩は一体どこに行ってしまったのか…
[水平線]
それから三ヶ月。僕は、いや俺は亡骸のように過ごした。何せ生きる意味を失ったようなものだったからな。
「はあ…」
ベットに倒れ込みまた深く眠りについた。
「あ、れ?」
なぜか俺は広い荒野のど真ん中に立っていた。あたりは荒れ果て風は強く、空はとても曇っていた。
「俺は寝ていた…よな?夢ってことか?」
感覚もある。声も出る。でもなんだか不思議な感じだ。周りのものが全て触れることができない。
「不気味だ」
少しずつ進んでいくと、誰かの後ろ姿が見える。腰には刀?をつけているのだろうか。銀色の鎧から見える黒髪と、髪飾りはどこか見覚えがある。
「先輩…?」
俺の声が聞こえたのか、女性はこちらを振り向く…がその顔は白色の仮面で見えなかった。
「先輩なんですか…?」
じっと見つめられるが、声もかえってこない。
『ぐわおおおおおおおおおお!!』
大地が震えて、風がさらに強くなる。腰にあった刀を抜き、どこかえはしり出す先輩に似た人は俺の想像を絶するものとたたかっていた。
「ドラゴン…?」
大きな翼に、白い鱗に包まれた巨体。口から何かを吸収しているかのようなエネルギーの光は、俺でもわかるような最悪の事態だった。一気に放出された謎のエネルギーは謎の少女に放たれた。
「先輩!!」
そう叫んだ瞬間、俺は一気に飛び起きた。
「夢、だった…のか」
左腕がズキズキとする。よく見るとつけていたブレスレットが熱を発するように熱くなっていた。
「ますます意味がわから…」
独り言の途中で、つけていたブレスレットが青く光始める。
「え、ちょ!?はっ?」
待ってくれ、意味が!?なんでこうも変なことが起きるんだ!情報量がおおすぎるんだよ!!
そして俺は、光に包まれ姿を消した。
「こんなところで何やってるんすか」
「え?」
「こんな遅い時間に一人で公園のブランコで座ってる人なんて、恋愛漫画ですか?」
「君、初対面でグイグイ来るね」
「初対面ではありますけど、僕は結構あなたのことを知ってますよ?」
「あははは、そっか、流石に私のことは知ってるのか」
「ええ、だって生徒会長さまですからね」
「ふふふ、私も有名になったもんだな…君のネクタイ的に一年生かな?」
「はい、ごく一般生徒、高校一年生佐久間涼太と言います。」
「じゃあ、私は生徒会長の桜田桃華。というかなんで私に声をかけたの?」
「なんとなく、ですかね。先輩はいつもここにいますよね?」
「げっ、私のことそんなにみてるの?変態エッチ」
「そりゃ、そんな悲しそうな顔して毎日公園にいたら気にしますよ」
「ははは、確かにそうだな」
「先輩、帰らないんですか?」
「帰りたくないからここにいるんでしょ?」
「そんなキリッとした顔で言わないで下さい」
「ふふ、君は面白いね」
「はあ、話しかけなければよかった」
「ああ!おいていかないでくれ!わかったから、帰るよ〜!」
[水平線]
「げっ、君もしかして私の家の隣だったの?」
「そうっすけど。逆に知らなかったんですね。まあ、初対面って言ってたんですもんね?ちょっと僕は傷つきましたよ」
「うい、それは本当にごめん」
「ああ、先輩あとこれどうぞ」
「お守り?」
「はい、俺の大事なお守りです」
「私なんかにいいのかい?会ってから数分の私に」
「いいんです、今の僕にはこれは必要ないです」
[水平線]
「んうう、またあの夢か…」
ここ最近ずっと同じ夢を見ている。それも全部先輩ばかりが出てくる…俺はやっぱり諦めきれていないのか。いくら探したって見つからないのにな…
「先輩一体どこに行ったんですか…」
天井を見つめながら、かすれた声で言った一言はとて情けなかった。
俺がこんなになっちまったのも、全ては三ヶ月前にあった出来事のせいだ。
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12月24日
「おっはよ〜サクマ君!今日もいい天気だね!」
「先輩いい加減、朝から飛び乗っかってくるのはやめて下さい」
俺と先輩はあの日以来、一緒にいることが多くなったというか、毎日一緒に登校するくらいの仲にまでなった。
「ったく…なんで勝手に僕の部屋に入ってきているんですか?」
「それは、私が君の先輩だからかな?」
「理由になってません。いい加減降りて下さい…重いです」
「ああ!それは女性に言っていいことではないよ!サクマ君!」
はあ、いざ蓋を開けてみればまさかこんな人とは…学校では清楚でクールな生徒会長なのになあ。僕以外に知っている人はいないだろう。
「それはそうとしてサクマ君!今日は12月24日だよ?」
「それがなんですか」
先輩はつまりこう言いたいのだろう。
「また、どうせこんなかわいい先輩がいるんだからデートしてプレゼントを与えたまえ!っとか言うんでしょ?」
「さすがサクマ君だな、そんな君にはご褒美に私とデートできる権利を与えよう」
「まったく、僕はあなたの彼氏でないんです。せっかくの冬休みを台無しにしないで下さい」
「私の彼氏になってくれてもいいんだよ?」
「遠慮しときます」
これが毎日続くとなれば僕の苦労も伝わるだろうか。誰が好き好んでこの変人と一緒にデートするんだよ。
「てか、はやく降りろよ!」
キョトンとした顔でこちらを見る先輩に、深いため息が出る…
僕の平和はもう、帰ってこないのだろうか?
「着替えて、朝ごはん食べたら、考えてあげますよ」
「やった〜サクマ君最高!結婚してもいいよ?」
「冗談やめて下さい」
「え?」
「え?」
これ、冗談じゃないの?やめてそんな目で見るのは。僕がおかしいみたいな流れになってるから。
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「母さん、父さん、おはよう」
「おお、起きたか涼太。今日は早いな」
「先輩がいなければあと1時間は寝てるよ」
後ろにニヤニヤしながら立っている先輩に、鋭い眼光を当てる。まったく、朝だけで何回ため息をついただろうか…
「あら、リョウタ起きたのね」
「ああ、おはよう母さん。そういえば真里と隼人は?」
「今日は朝から出かけたわ」
「そっか」
僕には双子の妹と弟がいる。俺が高一で、妹たちが中3、先輩は高ニだ。
「朝ごはんできてるからはやく食べなさい。あ、トウカちゃんは何かいる?」
「そうですね、う〜んじゃあココアが飲みたいです」
この人なんで朝から人ん家でココアもらってるんだろうか。全く理解できないのだが。
『今日のニュースです。昨夜から行方不明になった鈴木賢太くん14歳。いまだに見つかっておらず、捜査は続いて…』
そこでテレビは消された。せっかく僕がつけたのに。しょんぼりしていると小さくボソッと父さんが口を開いた。
「もう、行方不明なんざ懲り懲りだ…」
「…」
きこえたのは僕だけだろう。一瞬だけ父さんの顔が暗くなった。
それもそうだ。僕の父さんの父、僕からしたらおじいちゃんだ。
おじいちゃんは、おばあちゃんと結婚してすぐに行方不明になったらしい。だから生まれた時にはもうすでにおばあちゃんだけだった。
まあ、おばあちゃんは今でも元気に畑仕事やってるけどね。
「おーい、サクマ君?どうしたのボーってしてるけど」
「ああ、いやすみません。寝ぼけてて」
「ふ〜ん、まあそれはおいといてはやくして」
「え?」
「え?って何よ、ついさっき言ったじゃん!」
先輩が僕を指を刺しながら睨みつける。
「クリスマスなんだから二人で出かけようって」
「ああ、そんなこと言ってましたね。正確に言うと今日はイブですけどね」
「ぬう、いいからはやく!ねっおばさんいいでしょ?」
またそうやって母さんを味方にする。ったく、先輩はかまってちゃんじゃないか。
「はい、はい、じゃあ着替えたら行きますよ…」
僕は呆れた顔をしながら、リビングを出て二階へ上がった。
「先輩、のぞかないで下さいよ」
「なななな!何を言ってるんだ!のの、のぞくわ、わけないでしょ!」
「先輩、無理があるっす」
[水平線]
午後19時35分
「いやあ、今年も賑わってるね〜」
あたりを見渡しながら先輩が、イルミネーションに目を細める。
「僕には無縁の世界ですね」
「君は本当に空気を読まないね」
呆れたように話す先輩に、僕は一つ提案をする。
「先輩、どちらがいいプレゼントを買ってこられるかしょうぶしませんか?」
「ほ〜う、サクマ君よいい提案じゃないか」
顎に手を当てながら考える先輩。
「ルールは?」
顔をキリッとさせながら先輩が質問をしてくる。
「時間は20分お金は出せる範囲内ならいくらでもいいです。20分後にまたここに来てください」
「よし、決まりだ。ふふふ、サクマ君この勝負勝たせてもらうよ!」
「上等ですよ」
そして僕らの、無謀な戦いが始まった。
[水平線]
「う〜ん、どうしようかな。結構悩むなあ。自分で勝負仕掛けてはみたけど、失敗だったか」
ショッピングモールの中をぐるぐると歩き回る。開始から5分くらいで諦めかけていた。
「おっ」
そして僕が見つけたのは、ブレスレットやネックレスが売ってある店だった。
「へえ〜こういうの喜んでくれるかな」
悩む。とても悩む。う〜ん。葛藤すること数分。
「おっし、これに決めた」
[水平線]
「おうおう、サクマ君来ましたかね。どうだい私に白旗をあげなくってよ?」
「先輩、どうしたんすか。周りがリア充すぎて頭がお花おばかさんになったんですか」
「むう」
頬を膨らませ、足を蹴ってくる先輩はちょっと可愛かった。はっ、僕は何を言ってるんだ…とうとう壊れてしまったのか…?
「まあ、とりあえず見せ合いっこしますよ」
「そうだね、このやりとりも不毛だ」
そして先輩は持っていた袋から何やら箱を取り出して中身を出す。
「はい、メリークリスマス」
キラキラした笑顔に僕は目が眩しくなる。直視ができない…それは置いといて。
渡された箱を受け取り、中を見る。
「これはブレスレット?ってやつですか」
「うん、綺麗でしょ?」
花のブレスレット…少し可愛いではあるが、本当に綺麗だ。この花は…なんだろう思い出せない。
まあ、いいか。これはちょっと予想外だったな先輩のことだからてっきりドッキリでも仕掛けてくるのだと思ったけど。
「ほら、手出して」
「え、いや自分でつけますよ」
「いいから早く」
「は、はい」
左手を先輩の右手に差し出すと、ブレスレットはつけられた。
「これからも、そのよろしくね?」
いつもとは違い照れくさそうな先輩の顔に僕は、頬を赤らめ下を向く。僕も男だ。これは心臓に辛い。
「先輩、じゃあ僕からのをどうぞ」
ぎこちない雰囲気に我慢できない僕が先に口を開いた。
そしてプレゼントを渡す。
「花の髪飾り…」
あれ、反応悪い?もしかして失敗したのか…!?なんかダメなやつ?
「サクマ君ってこの花はしってるのかな?」
「え?そんなの知りませんけど。ただ先輩に似合いそうだったから」
「知らないか。ふふふ、私に似合うって」
口に手を当ててニマ〜ってした笑顔で見つめてくる先輩。
「僕がつけましょうか」
「え?ああ頼もうかな」
黒くて長いサラサラ髪は、とても甘い匂いがする。よく手入れされているのがわかる。
「できましたよ」
「どう?」
「似合ってます。綺麗ですよ」
「んん〜」
だんだん赤くなる先輩の顔は今にもパンクしそうだ。
「どうしたんですか?」
「いや、なんでもないさ…この無自覚キラーめ」
「え?」
よくわからないが、もう時間も遅いしそろそろ帰ろう。
「コチョウラン…あなたを愛しています、っか」
「先輩何か言いました?」
「いいや、なんでもないさ」
[水平線]
「先輩は大学どうするんですか?」
街を抜けて、イルミネーションもなく暗くなった道を二人で歩きながらふと思ったことを口にした。
「あ〜、そうだね今のところは決まっていないかな」
「先輩のことだから東大にでもどこにでも行けるんじゃないんすか」
一応こう見えて勉強、スポーツ万能な先輩は周りからしたらとても高嶺の花だった。おまけに生徒会長…憧れの存在。
「サクマ君」
ぼーっと考えているとき、先輩が話しかけてくる。
「なんでしょうか」
「私は来年から受験だし、生徒会長の座を退かなければならない」
「そう、っすね」
先輩がいなくなるのか。なんだか、ちょっと寂しさを感じている自分がいる。なにせこの人は濃すぎるからな。
「だから君に、生徒会長の席を渡したい」
「え…?」
あまりにも投げやりで突然すぎないか。
「前生徒会長は、次の生徒会長を推薦することができる。あくまで推薦だがな。私も去年の生徒会長に推薦をもらい、選挙で勝ったのだからね」
「へ、へえ…。」
いや、いやいや、僕には荷が重すぎるだろ。
「やってくれるかい?」
「…」
長い沈黙。僕は考える…深く。果たして僕に務まるのか?ごく一般生徒の僕に。
先輩は一体何を考えているのかさっぱりわからない。
先輩はじっとこちらを見て何も喋らない。
「わかりましたよ。でも、選挙で落ちたら意味ないですけどね」
「ふふふ、ありがとう」
踏切の手間まで来ているとき、先輩が僕の左手をグッと寄せて上目遣いで見てくる。
「な、なんですか」
距離の近さに、僕は顔を赤る。
「もう、私は今我慢できない。だからこの際言わせてもらおう」
「は、はい?」
「サクマ君、そ、その…私と」
何か言おうとした瞬間、踏切の音が鳴り響く。
掴んでいた手を離し、先輩は笑顔でこっちを見る。
「やっぱりいいや!気にしないでくれ」
「え〜」
踏切が上がると、先輩は走るように渡っていく。
「はやく〜サクマ君も!」
「はい、はい」
急かしてくる先輩に追いつこうと走る。一瞬だった。何かがバチっと弾けるような音がして、目の前にいた先輩はすでに消えていた。
「は?」
おい、おい意味がわからない。どうなっているんだ?は?消えた?先輩は?
死んだ?いや、それはないか…まずい頭が回らない。とりあえずどうすれば…
[水平線]
まるまる5時間…警察、家族全員で捜索したが見つからなかった。
先輩は一体どこに行ってしまったのか…
[水平線]
それから三ヶ月。僕は、いや俺は亡骸のように過ごした。何せ生きる意味を失ったようなものだったからな。
「はあ…」
ベットに倒れ込みまた深く眠りについた。
「あ、れ?」
なぜか俺は広い荒野のど真ん中に立っていた。あたりは荒れ果て風は強く、空はとても曇っていた。
「俺は寝ていた…よな?夢ってことか?」
感覚もある。声も出る。でもなんだか不思議な感じだ。周りのものが全て触れることができない。
「不気味だ」
少しずつ進んでいくと、誰かの後ろ姿が見える。腰には刀?をつけているのだろうか。銀色の鎧から見える黒髪と、髪飾りはどこか見覚えがある。
「先輩…?」
俺の声が聞こえたのか、女性はこちらを振り向く…がその顔は白色の仮面で見えなかった。
「先輩なんですか…?」
じっと見つめられるが、声もかえってこない。
『ぐわおおおおおおおおおお!!』
大地が震えて、風がさらに強くなる。腰にあった刀を抜き、どこかえはしり出す先輩に似た人は俺の想像を絶するものとたたかっていた。
「ドラゴン…?」
大きな翼に、白い鱗に包まれた巨体。口から何かを吸収しているかのようなエネルギーの光は、俺でもわかるような最悪の事態だった。一気に放出された謎のエネルギーは謎の少女に放たれた。
「先輩!!」
そう叫んだ瞬間、俺は一気に飛び起きた。
「夢、だった…のか」
左腕がズキズキとする。よく見るとつけていたブレスレットが熱を発するように熱くなっていた。
「ますます意味がわから…」
独り言の途中で、つけていたブレスレットが青く光始める。
「え、ちょ!?はっ?」
待ってくれ、意味が!?なんでこうも変なことが起きるんだ!情報量がおおすぎるんだよ!!
そして俺は、光に包まれ姿を消した。
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