ワンクッション

[太字]BEAST　ネタバレ[/太字]
[太字]黒の時代[/太字][漢字][/漢字][ふりがな][/ふりがな]

曲⋯メランコリーキッチン


[水平線]












[斜体][明朝体][太字]誰もいないキッチン[/太字][/明朝体][/斜体]

珈琲をふたつのカップに注ぎ、クリームを入れた。
湯気を眺めながら、時間をかけてかき混ぜた。




[斜体][明朝体][太字]靡かないカーテン[/太字][/明朝体][/斜体]


「おやすみ、幸介」

私は煙草に火を付けながら云った。

「おやすみ、克巳。おやすみ、優。おやすみ、真嗣。おやすみ、咲楽。」



[明朝体][斜体][太字]いえない[/太字][/斜体][/明朝体]


「許可？許可など求めていないよ中也。君は幹部、私は[漢字]首領[/漢字][ふりがな]ボス[/ふりがな]。」




[明朝体][斜体][太字]いえないな[/太字][/斜体][/明朝体]


「お前は、誰だ？」

　思わず出た声は、自分のものとは思えないほどからからにひび割れていた。足元に力を入れていなければ、脚が勝手に一歩退いていただろう。




[明朝体][斜体][太字]独りでいいや　なんて[/太字][/斜体][/明朝体]


太宰の体が、縁を越えた。
屋上からの長い長い距離を、重力に引かれて落ちていく。
長い距離を、時間をかけて。



[明朝体][斜体][太字]話そう声を出して[/太字][/斜体][/明朝体]

「織田さ――」




[明朝体][斜体][太字]明るい未来について[/太字][/斜体][/明朝体]


「⋯⋯」



[明朝体][斜体][太字]間違えて　凍えても[/太字][/斜体][/明朝体]



「織田作⋯⋯私は、どうすればいい？」





[明朝体][太字][斜体][大文字][大文字][大文字]そばにいれるように[/大文字][/大文字][/大文字][/斜体][/太字][/明朝体]


「[漢字]人を救う側になれ[/漢字][ふりがな][太字][大文字]、、、、、、、、[/ふりがな][/大文字][/太字]」


[明朝体][斜体][太字]笑って[/太字][/斜体][/明朝体]

「やァ、織田作。」



[明朝体][斜体][太字]笑って[/太字][/斜体][/明朝体]


「俺はあんたとどこかで逢っているか？」
　太宰は無個性的な笑みを浮かべた。「いえ、初めてでしょう」



[明朝体][斜体][太字][大文字][大文字]笑って[/大文字][/大文字][/太字][/斜体][/明朝体]

「次はいつ集まる？」


[明朝体][斜体][太字]そうやって[/太字][/斜体][/明朝体]


風が強く吹いた。
赤い夕焼け。
赤い敷石。
ポートマフィアを統べ、この横浜の闇を支配した男。


[明朝体][中央寄せ]『第一段階』

『第二段階』

『第三段階』[/中央寄せ][/明朝体]



[明朝体][斜体][太字]きっと魔法にかかったように世界は作り変わって[/太字][/斜体][/明朝体]


「これがお墓参りしてるように見えるかい?」



[明朝体][太字][斜体]この部屋に立ちこめた救えない憂鬱を[/斜体][/太字][/明朝体]


「『人は自分を救済するために生きている。死ぬ間際にそれが判るだろう』か⋯⋯その通り⋯⋯だったな⋯⋯」




[明朝体][斜体][太字]おいしそうによく噛んであなたは飲み込んだ[/太字][/斜体][/明朝体]


「カレーが食いたいな⋯⋯」

織田作は震える指で、コートから煙草を取り出した。
のろのろした動きで煙草銜えた。
[漢字]燐寸[/漢字][ふりがな]マッチ[/ふりがな]を取り出したところで、指に力が入らなくなった。




[明朝体][太字][斜体]それにどれだけ救われたことか[/斜体][/太字][/明朝体]



太宰が燐寸を受け取り、煙草に火をつけてやった。
織田作はね目を閉じて、火のついた煙草を吸い込み、満足そうに微笑んだ。




[明朝体][斜体][太字]多分あなたは知らないな[/太字][/斜体][/明朝体]



「生きるなんて行為に何か価値があると本気で思ってるの？」




[明朝体][斜体][太字]明日会えたらそのときは[/太字][/斜体][/明朝体]


「じゃあ行くよ。織田作」





[明朝体][斜体][太字]素直になれたらいいな[/太字][/斜体][/明朝体]


グラスを持った手も、少年のような表情も、呼吸さえ、凍りついたように停止していた。


[明朝体][中央寄せ]『第四段階』

『第五段階』[/中央寄せ][/明朝体]


「その通りだね」


「私がどうかしていた。忘れてくれ」