ワンダフル・タイムズ!
side [漢字]灰原[/漢字][ふりがな]はいばら[/ふりがな] ほまれ
今日は陸上部のマネージャー体験だ。どんな事をしたりするのか、一応調べてはきたのだがやはり不安。陸上部が活動しているグラウンドへと足を運ばせると、沢山の人がそれぞれ色んな事を行っている。先生に誘導されて、何をやるのか教えてもらった後、もう一人にさせられた。
「…えっと。確か…。」
辺りを見回すと、疲れた様子で休憩している人が一人いる。なんて話しかければいいのか分からず、じーっと見ていると、その人にわたしの存在を気付かれた。その人は顔をしかめ、舌打ちをする。
「…何見てんだ。このボクは見せ物なんかじゃねーぞ。」
「いや、もしかしてきさま…今日体験に来たマネージャーか? それならさっきの言葉遣いを謝っておくよォ。」
もしかしてだが、先ほどの荒々しい言葉遣いが本性だったりするのだろうか。それだとすると少し怖い。
「えーっと…まァ。分かんねえのはしょうがねえよ。まあ、分かんねえならせんせーに話聞いた方が早いし、それが無理ならこのボクが一緒に行ってやるからさ。」
言葉遣いは荒いが、意外にも優しい人なのかもしれない。だが、まだ少し怖い。やはり最初の反応は警戒しているからなのかもしれないが、そうだとしてもあれが本性な気がしてたまらない。
「あ、ありがとうございます。」
一応お礼を言ってから、わたしはその場を離れた。
・・・
マネージャー体験が終わり、わたしは帰路につく。そして、後ろから少しだけ聞いたような声が響いた。後ろを振り向くと、見た事のある茶色でふわふわとした髪に翠色の瞳の身長が高い男性が現れる。
「よお、マネージャーさん。今日ボクの部活に来ていたよなァ? 覚えてるぜ。ところでお前の名前ってなんだ? ボクは狛犬如月。よろしくな。」
唐突で、何がなんだか分からない。もちろん、顔見知りだというのは確かだが、たった一度会った程度の人に自分から話しかけるという勇気はわたしにはないのだ。そしていきなりのアドリブなどには弱いわたしは、うまく返事が出来ない。
「あ………わたしの名前は灰原ほまれです…。」
なんとかして名前を呼ぶと、狛犬さんは「へぇ。そうなのか。」とからっと笑った。そういえば、なのだが、こんな口調でこんな外見をした人を清花から聞いたような気がする。
「…あの。もしかして…青野清花って子、知ってますか? 知らないなら知らないで…。」
「知ってるぜ。お前もあいつと知り合いだったのか。」
やはり、この人は清花から聞いた相談相手の人らしい。清花は昔から他人と仲良くなるのが得意で、同時に悩みも抱えている事が多いが、陽気な奴だとは思っている。
「ふーん…まさかこんな所で共通の知り合いを見つけるとはな。てめーもマネージャー体験してた事だし…こういうのってよぉありえないと思っていても意外とあるよな。ボクも結構そういう事があるんだが…帰り道もおなしで共通の知り合いもいるってさあよくある事じゃないとは思うんだよなァ。」
狛犬さんはこの長文をたったワンブレスで話し終わっていた。肺活量がものすごいのかもしれない。やはり、体力をつけているのだろうか。
「…そうですよね。清花の人脈が広いのもあるかもしれませんが…。」
初対面の人という事で、だいぶ話すのに苦労する。その苦労をわざと無視しているのか、それとも鈍感なだけなのかは知らないが、狛犬さんはそれに気づいていないように一人ぼっちでマシンガントークを続けている。
「あ、じゃボクこっちの道だから。じゃあな。」
やっと肩の荷が下りたような気がする。そして、狛犬さんの口元が軽く動いたのような気がした。独り言なのだろうが、その内容が気になってしょうがないが、また出会った時に訊ければいいのだ。
side 狛犬 如月
「ふーん…面白いやつかもな。」
ボクはそう呟いたのだが、どうやら聞こえていない様子。そして同時に、自分に対して違和感を覚えていた。いつもとはなんだか違う、好奇心。少ししか話していないのに、そして相槌した打たれていないというのに、ボクはあいつに事を知りたいと思っている。それは確かに青野とは違う好奇心。こんな気持ちボクは感じた事がない。心臓が高鳴るような、言葉にはとても表せないようなもの。この気持ちを理解するには、もう暫く時を要するのかもしれない。
「この、ボクが…なんだよ。調子狂うな…。」
今日は陸上部のマネージャー体験だ。どんな事をしたりするのか、一応調べてはきたのだがやはり不安。陸上部が活動しているグラウンドへと足を運ばせると、沢山の人がそれぞれ色んな事を行っている。先生に誘導されて、何をやるのか教えてもらった後、もう一人にさせられた。
「…えっと。確か…。」
辺りを見回すと、疲れた様子で休憩している人が一人いる。なんて話しかければいいのか分からず、じーっと見ていると、その人にわたしの存在を気付かれた。その人は顔をしかめ、舌打ちをする。
「…何見てんだ。このボクは見せ物なんかじゃねーぞ。」
「いや、もしかしてきさま…今日体験に来たマネージャーか? それならさっきの言葉遣いを謝っておくよォ。」
もしかしてだが、先ほどの荒々しい言葉遣いが本性だったりするのだろうか。それだとすると少し怖い。
「えーっと…まァ。分かんねえのはしょうがねえよ。まあ、分かんねえならせんせーに話聞いた方が早いし、それが無理ならこのボクが一緒に行ってやるからさ。」
言葉遣いは荒いが、意外にも優しい人なのかもしれない。だが、まだ少し怖い。やはり最初の反応は警戒しているからなのかもしれないが、そうだとしてもあれが本性な気がしてたまらない。
「あ、ありがとうございます。」
一応お礼を言ってから、わたしはその場を離れた。
・・・
マネージャー体験が終わり、わたしは帰路につく。そして、後ろから少しだけ聞いたような声が響いた。後ろを振り向くと、見た事のある茶色でふわふわとした髪に翠色の瞳の身長が高い男性が現れる。
「よお、マネージャーさん。今日ボクの部活に来ていたよなァ? 覚えてるぜ。ところでお前の名前ってなんだ? ボクは狛犬如月。よろしくな。」
唐突で、何がなんだか分からない。もちろん、顔見知りだというのは確かだが、たった一度会った程度の人に自分から話しかけるという勇気はわたしにはないのだ。そしていきなりのアドリブなどには弱いわたしは、うまく返事が出来ない。
「あ………わたしの名前は灰原ほまれです…。」
なんとかして名前を呼ぶと、狛犬さんは「へぇ。そうなのか。」とからっと笑った。そういえば、なのだが、こんな口調でこんな外見をした人を清花から聞いたような気がする。
「…あの。もしかして…青野清花って子、知ってますか? 知らないなら知らないで…。」
「知ってるぜ。お前もあいつと知り合いだったのか。」
やはり、この人は清花から聞いた相談相手の人らしい。清花は昔から他人と仲良くなるのが得意で、同時に悩みも抱えている事が多いが、陽気な奴だとは思っている。
「ふーん…まさかこんな所で共通の知り合いを見つけるとはな。てめーもマネージャー体験してた事だし…こういうのってよぉありえないと思っていても意外とあるよな。ボクも結構そういう事があるんだが…帰り道もおなしで共通の知り合いもいるってさあよくある事じゃないとは思うんだよなァ。」
狛犬さんはこの長文をたったワンブレスで話し終わっていた。肺活量がものすごいのかもしれない。やはり、体力をつけているのだろうか。
「…そうですよね。清花の人脈が広いのもあるかもしれませんが…。」
初対面の人という事で、だいぶ話すのに苦労する。その苦労をわざと無視しているのか、それとも鈍感なだけなのかは知らないが、狛犬さんはそれに気づいていないように一人ぼっちでマシンガントークを続けている。
「あ、じゃボクこっちの道だから。じゃあな。」
やっと肩の荷が下りたような気がする。そして、狛犬さんの口元が軽く動いたのような気がした。独り言なのだろうが、その内容が気になってしょうがないが、また出会った時に訊ければいいのだ。
side 狛犬 如月
「ふーん…面白いやつかもな。」
ボクはそう呟いたのだが、どうやら聞こえていない様子。そして同時に、自分に対して違和感を覚えていた。いつもとはなんだか違う、好奇心。少ししか話していないのに、そして相槌した打たれていないというのに、ボクはあいつに事を知りたいと思っている。それは確かに青野とは違う好奇心。こんな気持ちボクは感じた事がない。心臓が高鳴るような、言葉にはとても表せないようなもの。この気持ちを理解するには、もう暫く時を要するのかもしれない。
「この、ボクが…なんだよ。調子狂うな…。」
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