たとえすべてが嘘だとしても。
――そうこうしながらも、自己紹介から数分。夢野さんと私は中々良い雰囲気の会話を続けられていた。
さっき彼が読んでいた本の事、彼の書く小説の事、そして今話しているのは、互いの職業の事だ。
「私も、出版関係の仕事をしているんですよ。夢野さんみたいに、書く側ではないんですけど……」
「そうなんですか。ご職業は?」
「ブックデザイナーです」
私の職業は、今言った通り、ブックデザイナーと呼ばれるものだ。それ以外にも、[漢字]装丁家[/漢字][ふりがな]そうていか[/ふりがな]という呼ばれ方も時々される。
書籍の表紙、本文ページ、挿絵。本の全てのデザインを手掛けるこの仕事は、大変なものだが、やりがいがある。
「二人とも出版関係のお仕事なんて、奇遇ですね。縁……本当にあるのかも」
偶然の重なりに、二人して笑っている時。突然、誰かの携帯の着信音が聞こえた。
「ん……?誰だろ…」
「ああ、すみません。小生の携帯です。出てもよろしいですか?」
その着信音は、夢野さんのものだった。私がどうぞ、と小さく言うと、彼は目の前で携帯電話を取り出し、誰かと話し始めた。
「…………どうかしました?はい、はい……。えぇ、またなんですか?本当にあの人は懲りませんね……」
それほど遠い距離には居ないので、彼の電話の音は、少しだけ耳に入ってしまう。聞いてしまうのも失礼だと思うので、窓から見える外の風景を見て、私はそれをなんとか誤魔化した。
数分ばかりの時間が過ぎると、夢野さんは「しょうがないですね。今から行きます」と言って、電話を切った。
「すみません。ゆうじ……知り合いに色々ありまして、ちょっとそちらに行ってきます」
そう言って、目の前の彼は店を出る準備を始めた。もう離れてしまうのは寂しかったが、知り合いというならしょうがない。ここはあっさり連絡先でも聞いておこうか、と脳に考えが巡る。
連絡先を聞くのも、少し恥ずかしかったが、さっきまでの緊張に比べれば、それほど強くもなかった。
「では、さようなら」
「はい。またどこかで…」
私と彼は、連絡先を交換してから喫茶店を出て、それぞれ別の場所へと向かっていった。
彼は知り合いのところに向かって、私はまだ昼食を取っていなかったので、どこか別のところにでも行こうと思う。
「緊張で空腹無かったな……」
さっきまでの一連の流れをフラッシュバックさせながら、私は暑さが少しばかりマシになったシブヤの街を歩いていた。
だが、その最中。私のバッグの中で、携帯電話がバイブを鳴らした。
「なんだろう」
すぐさま画面を見てみると、電話が来ていた。発信者は少し関わりがあるだけの知り合いだった。
彼は、私にあまり連絡をしてこない。なのに今この時掛けてくるとは、何があったんだろう。電話を取って、携帯を耳に当てる。
「もしもし。どうしました?」
「もっしもーし!●●、おひさだね☆」
さっき彼が読んでいた本の事、彼の書く小説の事、そして今話しているのは、互いの職業の事だ。
「私も、出版関係の仕事をしているんですよ。夢野さんみたいに、書く側ではないんですけど……」
「そうなんですか。ご職業は?」
「ブックデザイナーです」
私の職業は、今言った通り、ブックデザイナーと呼ばれるものだ。それ以外にも、[漢字]装丁家[/漢字][ふりがな]そうていか[/ふりがな]という呼ばれ方も時々される。
書籍の表紙、本文ページ、挿絵。本の全てのデザインを手掛けるこの仕事は、大変なものだが、やりがいがある。
「二人とも出版関係のお仕事なんて、奇遇ですね。縁……本当にあるのかも」
偶然の重なりに、二人して笑っている時。突然、誰かの携帯の着信音が聞こえた。
「ん……?誰だろ…」
「ああ、すみません。小生の携帯です。出てもよろしいですか?」
その着信音は、夢野さんのものだった。私がどうぞ、と小さく言うと、彼は目の前で携帯電話を取り出し、誰かと話し始めた。
「…………どうかしました?はい、はい……。えぇ、またなんですか?本当にあの人は懲りませんね……」
それほど遠い距離には居ないので、彼の電話の音は、少しだけ耳に入ってしまう。聞いてしまうのも失礼だと思うので、窓から見える外の風景を見て、私はそれをなんとか誤魔化した。
数分ばかりの時間が過ぎると、夢野さんは「しょうがないですね。今から行きます」と言って、電話を切った。
「すみません。ゆうじ……知り合いに色々ありまして、ちょっとそちらに行ってきます」
そう言って、目の前の彼は店を出る準備を始めた。もう離れてしまうのは寂しかったが、知り合いというならしょうがない。ここはあっさり連絡先でも聞いておこうか、と脳に考えが巡る。
連絡先を聞くのも、少し恥ずかしかったが、さっきまでの緊張に比べれば、それほど強くもなかった。
「では、さようなら」
「はい。またどこかで…」
私と彼は、連絡先を交換してから喫茶店を出て、それぞれ別の場所へと向かっていった。
彼は知り合いのところに向かって、私はまだ昼食を取っていなかったので、どこか別のところにでも行こうと思う。
「緊張で空腹無かったな……」
さっきまでの一連の流れをフラッシュバックさせながら、私は暑さが少しばかりマシになったシブヤの街を歩いていた。
だが、その最中。私のバッグの中で、携帯電話がバイブを鳴らした。
「なんだろう」
すぐさま画面を見てみると、電話が来ていた。発信者は少し関わりがあるだけの知り合いだった。
彼は、私にあまり連絡をしてこない。なのに今この時掛けてくるとは、何があったんだろう。電話を取って、携帯を耳に当てる。
「もしもし。どうしました?」
「もっしもーし!●●、おひさだね☆」
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