たとえすべてが嘘だとしても。
無事に合流してから、おおよそ数時間後。私達は食事を終わらせて、ここから帰るところだった。食事中は、特に何かが怒ったわけでもなく、ただただ会話を楽しんだ。夢野先生とか、帝統さんの事については、正直言いそびれてしまった。言いそびれたというか、忘れていたと言うか、雰囲気を崩したくなかったというか。色々な心情や状況が重なり、結局大事な何かを言える事は無かった。
「今日は楽しかったよ!また今度も会おうねー!」
「は、はい。私も楽しかったです。それじゃあ、また今度……」
自分が少しだけ浮かない顔をしている、そんな事は分かっていた。でもそれが乱数さんにバレないように、少しだけ下を向く。前髪と夜の影のおかげで、少しは隠せているだろうか。
「うん!じゃあねー!」
私達は解散して、それぞれの家路につく。私達の家は完全に逆方向だから、顔と体を背けて、お互いの家路を進む。そこに寂しさを感じるのは、数年前が最後だった。
「はぁ……。自分のこういうとこが好きじゃないんだよなぁ」
この言いたい事が言えない性格は、時に自分自身の事を嫌う要因になりえる。私は昔から、自分の引っ込み思案なところをどうしても好きになれなかった。というより、そんな自分を好きになれなかった。しかし直そうとすると、周りの人が怖く見える。まるで怪物のよう、と言ったら失礼かもしれないが、怖くて話しかけられないのだ。だから私は、この先もずっと付き合っていかなければいけないこの短所が嫌いだ。そしてその短所を、今日も発動させてしまったというわけだ。
「どうしようかな……。そうだ、後でお礼のメールと一緒に言おうかな……」
考えてはみたものの、いまいちしっくりこない。メールは味気ないというか、なんでさっき言わなかったんだろうとか思われそうで不安だ。いや、そう思われても良いのだが、なんだか違う。違う気がした。こういう気持ちになる事は、きっと誰しもあるんだろう。こういう感情を積み重ねた先に、何かがあるのだろうか。
そうこう思っていると、駅のホームに着くのはあっという間だった。電車の走行音と人の話し声が、いつもよりもやけに騒がしく感じる。
「次は、三番線。三番線に、電車が参ります」
自分が乗る電車がやってくる。シュンと盛大な風の音を立てて飛んでくる電車は、私達の前でピタッと止まる。風の感覚が消えていった。
「はぁ、疲れた」
明日はゆっくりしたいが、仕事がある。休むと言っても、きっと数時間経てば私は仕事を始めるんだろう。在宅でできる仕事は、休みという存在が曖昧になる。あると思ったら無いとか、そんな事ばかり。休日という大事なメリハリがつけられないのは、在宅仕事のデメリットの一つなのだろう。
「……でも」
次の仕事では、夢野先生と関わる事ができる。それがただ、嬉しかった。それなら、休日とかの概念は無くてもいいのかも、途端にそんな考え方にシフトチェンジしていく。休日がないというのも、見方や状況によってはメリットとなるのかもしれないな、そう感じた。
明日も頑張ろう、そんな王道の言葉が脳の中で浮かぶ。
「ドアが閉まります。ご注意ください」
電車のドアが閉まる。そして電車は、私たち乗客を乗せて、ゆっくりと揺れだした。
「今日は楽しかったよ!また今度も会おうねー!」
「は、はい。私も楽しかったです。それじゃあ、また今度……」
自分が少しだけ浮かない顔をしている、そんな事は分かっていた。でもそれが乱数さんにバレないように、少しだけ下を向く。前髪と夜の影のおかげで、少しは隠せているだろうか。
「うん!じゃあねー!」
私達は解散して、それぞれの家路につく。私達の家は完全に逆方向だから、顔と体を背けて、お互いの家路を進む。そこに寂しさを感じるのは、数年前が最後だった。
「はぁ……。自分のこういうとこが好きじゃないんだよなぁ」
この言いたい事が言えない性格は、時に自分自身の事を嫌う要因になりえる。私は昔から、自分の引っ込み思案なところをどうしても好きになれなかった。というより、そんな自分を好きになれなかった。しかし直そうとすると、周りの人が怖く見える。まるで怪物のよう、と言ったら失礼かもしれないが、怖くて話しかけられないのだ。だから私は、この先もずっと付き合っていかなければいけないこの短所が嫌いだ。そしてその短所を、今日も発動させてしまったというわけだ。
「どうしようかな……。そうだ、後でお礼のメールと一緒に言おうかな……」
考えてはみたものの、いまいちしっくりこない。メールは味気ないというか、なんでさっき言わなかったんだろうとか思われそうで不安だ。いや、そう思われても良いのだが、なんだか違う。違う気がした。こういう気持ちになる事は、きっと誰しもあるんだろう。こういう感情を積み重ねた先に、何かがあるのだろうか。
そうこう思っていると、駅のホームに着くのはあっという間だった。電車の走行音と人の話し声が、いつもよりもやけに騒がしく感じる。
「次は、三番線。三番線に、電車が参ります」
自分が乗る電車がやってくる。シュンと盛大な風の音を立てて飛んでくる電車は、私達の前でピタッと止まる。風の感覚が消えていった。
「はぁ、疲れた」
明日はゆっくりしたいが、仕事がある。休むと言っても、きっと数時間経てば私は仕事を始めるんだろう。在宅でできる仕事は、休みという存在が曖昧になる。あると思ったら無いとか、そんな事ばかり。休日という大事なメリハリがつけられないのは、在宅仕事のデメリットの一つなのだろう。
「……でも」
次の仕事では、夢野先生と関わる事ができる。それがただ、嬉しかった。それなら、休日とかの概念は無くてもいいのかも、途端にそんな考え方にシフトチェンジしていく。休日がないというのも、見方や状況によってはメリットとなるのかもしれないな、そう感じた。
明日も頑張ろう、そんな王道の言葉が脳の中で浮かぶ。
「ドアが閉まります。ご注意ください」
電車のドアが閉まる。そして電車は、私たち乗客を乗せて、ゆっくりと揺れだした。
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