「うぅ……あっついな……」
外に飛び出してからもう数分。私たちの上にある太陽はとにかく輝いていて、今が夏だという事を嫌でも認識してしまう。
暑さに弱い私は、今既にダウン寸前だ。周りの人たちは平気な顔をして歩いているが、あちらの方が普通ではないと私は思う。ここまでの暑さで涼しい顔出来る方がおかしいでしょう。
「…にしても、本当に色んな物がある。まぁここ街だから、当然っちゃ当然だけど」
よくよく辺りを見渡すと、この世界には色々な物があった。さっき通った雑貨屋なんて、なんのためにどう使うのか分からない謎の家電が置いてあった。まぁきっと、私なんかでは想像できない最先端な事のために使うんだろう。例えば、物作りとか。
こうしてみると、やっぱり私は何も知らないんだなと感じる。まだまだ勉強、という事か。
「お昼ご飯…どこ行こうかな」
考え事はさておき、とりあえずお腹が空いた。近くに良いお店は無いか、少し探してみよう。
「うーん…それっぽいお店無いかも。もうちょっとした所かな」
もう少し遠くまで歩いてみよう、そう思った時。
「あ、おねーさん。君かわいいねー。俺達と遊ばない？楽しいとこ連れてってあげるからさー」
「……」
「ちょっと、おねーさん！」
「え、あ。私ですか？」
私に声をかけてきたのは、一人の男性だった。後ろにも数人の男性がいた。どちらも体つきが良く、純粋な力は強そうだ。見た目も普通にイカつい感じで、言うなればチンピラ、といった感じ。正直に言うと、怖い。
「そうそう、君だよー。俺らと遊ばない？おねーさん可愛いからさー」
これは嘘だ。彼らが声をかけてきた時、私は背を向けていた。一瞬も顔を見せていないのだ。だがしかし彼らは、私が後ろを向く前から可愛いと口にしていた。
あまり人を疑いたくはないのだが、彼らはきっと、私の体か金目当ての奴ら、だと思う。どうやら、厄介な人に目をつけられてしまったらしい。
「遠慮しておきます…」
とりあえず、こういう誘いはやんわりと断っておこう。
「えー、ちょっとでいいから！俺らと遊ばない？」
そう言うと、男性は私の腕を掴んできた。気持ち悪い、怖い。早く離れてほしい思いでいっぱいになる。
「や、やめて！」
私は咄嗟に、男の手を振り払った。彼はまだ強い力を出していなかったので、振り払うだけなら容易いものではあった。
だが、問題はその後。
「は…？おねーさん、素直になった方が楽だと思うけど？ほら、こっち来なよ」
「い、嫌です！やめてください！」
後ずさりながら言葉を吐く。彼らから逃げられるだろうか、とにかく怖いばかりだ。
「…ちっ、何逃げてんだよ。お前ら、あれ出せや」
男の表情は、さっきまでのものとは大違いだった。とにかく怒っていて、何をされるかはもう分からない。
そんな中、ずっと後ろに居た彼らへの命令。こんな世界に生きているから、意味は分かる。
ヒプノシスマイク。彼らはそれを懐から取り出した。私の愚かさを見て、けたけたと笑いながら。