男達の声がする場所まで行くと、そこには拡声器を持った数人の男が居た。彼らは前会った男と同じような雰囲気を持っていて、まぁ結構なチンピラといった見た目をしていた。
「か、拡声器が音拾いすぎて何言ってるか分からない……なんなんだろう」
ごちゃごちゃとした声をかき分け、男たちの言っている言葉をなんとか聴いてみた。
「今日からこのシブヤは！俺たち『The Takers』が乗っ取ってやるぜ！他のチームなんてクソ喰らえだぜ！いーひっひ！」
聞こえたのは、リーダーらしき男の謎な宣言だった。
「な、何言ってるんだ……？」
さっきとは別の意味で、意味不明な事を喚いているんだなと感じた。そんな彼らに対して、群衆は怯えている。子供連れの母親は焦り、子供はパニックになり、彼らのせいで道路は塞がれているので、家に帰りたいサラリーマンや学生はイラついている。そこはとても、混沌とした空間だった。
「これで何もしないのは無理なんだよなあ……」
みすみす彼らを見逃し、この状況をただ見ているだけでは居られない。私一人の力でなんとかでこるとは思えないが、せめて私が口火を切るぐらいなら出来るだろう。少しばかりの恐怖と戦いながら、私は自分の足で、その一歩を踏み出した。
[太字]「……ちょっと！そこのあんた達！」[/太字]
声を張り上げて叫ぶ。すると、チームのリーダーらしき男と、目が合った。しっかりと、離さないように、彼を睨み付ける。
「あぁ……？んだよテメェ！喧嘩売ってんのか？」
怖い。そういう気持ちもあった。でも、それ以上にどうにかしたいという気持ちがあった。必死に勇気を振り絞って、力一杯声を出す。
「喧嘩を売ってるつもりはない！でも、あなた達の行動が目に余るの！周りに迷惑をかける方法でしか欲しい物を手に入れられないわけ？」
試しに相手を煽ってみる。その隙に、私はバッグからマイクを取り出した。
彼らはすぐに頭に血が上るタイプらしい。私がそう言うと、たちまち彼らは眉をしかめて、いかにもな怒り顔を作っていた。
「あぁ！テメェふざけんなよ！」
「ふざけてない！ただ私は……」
「ごちゃごちゃるっせぇ！」
男はそう怒鳴ると、ヒプノシスマイクを懐から取り出し、そしてノールックで起動した。
「なっ……！」
形勢は逆転していく。強気な感情で溢れていた私も、その光景を見ると一気に恐ろしいという気持ちが溢れてくる。
「へへへ……やってやんよぉ！」