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たとえすべてが嘘だとしても。

#12

「恋は盲目、だが瞳は輝く」

そのメールは、私にとって奇跡そのものだった。
「う、嘘でしょ?いや、嘘じゃない……。本当!私、本当に夢野さんとまた繋がれるんだ!」
嬉しさのあまり、つい舞い上がってしまう。これは偶然なんかじゃない、運命だと感じてしまう程に。
「どうしよう。とりあえず返信しなきゃ!」
少しばかり震えた手で、キーボードを打つ。さっきまでは起きたばかりでサラサラしていた手が、緊張でなんだか汗ばんでいるような、そんな感覚を覚えた。震えているせいで、タイプミスが起きてしまうが、都度修正、都度修正を繰り返す。仕事周りでこんなに緊張したのは、本当にいつぶりだろうか。久しぶりの強張るような、同時に力が抜けていく感覚に、思わず一端の懐かしさを感じてしまった。
「はぁー……。待ってよ、打ち合わせとか会議の時間はいつになるんだろう。それらは絶対やるに違いないでしょ?原作者の意向を確認するために、出版社は絶対会議で夢野さんも連れてくるよね。あぁ、これって本当に運命ってやつなのかな?
長めの独り言。私は一人だけの時、独り言をつぶやく癖がある。こんな状況なのだから、なおさら癖は悪化した。
「どうしよう。本当に……あの時の言葉を信じちゃうな」
喫茶店で彼と会った時、彼が言ったあの言葉。
『これも何かの縁ですし』
縁。運命。こんな都合の良い概念に私が惹きつけられてしまうのだから、恋というのは恐ろしい。元々私は、このような類の話は信じないタイプの人間だったはずなのに。恋は人の趣味嗜好すらも、別のものにすり替えてしまう。本当に恐ろしい。いや、恐ろしいのは特定の人をそこまで盲目にさせてしまう人間なのか。恋に関しては素人の私がそんな事を考えても、別に何も分かりはしなかった。だがまぁ、メールの返事を待つ暇つぶしには、ちょうどいい思考の題材だったのかもしれない。
「なんか、世界が輝いてるみたい」
恋は盲目、でも今の私の瞳は、きっと輝いているに違いない。
「……ご飯の時、乱数さんに話そうかな」
久しぶりだった。希望がかすかに溢れる午前は。

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作者メッセージ

何気にサブタイトルを回収したの初めてかもしれません。今まではとりあえず綺麗な表現の言葉を組み合わせていただけなんでね。


さて、話は変わるのですが、先程私は昔に自分が書いたヒプマイ夢小説を読んできました。本当に数年前、まだ小説執筆に関しては本当に素人だった頃です。あれは完全な黒歴史なのですが、あれに向き合わないとダメな気がして、やっと読んできました。驚くべき事に、表現は意外と悪くなかったです。そりゃもちろん、今と比べて語彙力もそんなに無かった頃ですし、年相応の色々な文字は使っていましたよ。でも、なんか「私が書いた」と思えるような文章をしていたんですよね。やっぱりそういうのって、生まれつきのものなんですかね。表現は悪くなかったんですが、いかんせんそれ以外の部分がちょっと黒歴史で受け付けられていません……。幼い、あまりにも幼すぎる。私は赤子か。
まぁでも、そんなに悪いもんでも無かったので、別に良いかなと思えました。小説作りのモチベも上がりました!これからも頑張りますので、どうか皆様よろしくお願いいたします!


次回の更新は10月9日、または10月10日を予定しております。気長にお待ちくださいませ。

2024/10/06 11:14

夢野 シオン@水野志恩SS ID:≫7tLEh4qnMjetA
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