全部上書きして【Lier's world】
夕凪「[太字]______は?.........、えっ......と.........?[/太字]」
朝露の放った一言に対して、死後硬直したくらいに身体が動かなかった。
動かせるのは口だけ。
本当に朝露が何を言ってるのかが分からなかった。
ただその場で呆然と立ち尽くすしかできなかった。
ずっと二本足で動かなかったからか、足の裏が身体に対して悲鳴をあげるようにして痛み始める。
朝露「...............」
夕凪「...............」
静寂が二人を包み込む。
空間の静けさと表面上の顔立ちと対照的に、俺の頭は混乱している。
『冗談やめろよ』なんて茶化そうとしたのだが、朝露の真剣な表情を見てしまったからこれが本気で言っていることなんだと分かっていた。
静寂の中、一層と聞こえている心臓の音はうるさい。
まるで、恐ろしい何かを知ってしまうような感覚。
それに合うような言葉は見つからないし、何なら見当たりすらもしなかった。
朝露「............ごめんな?......そりゃ困るよな、こんな事言われても.........」
夕凪「いや.........困る、ってか.........その.........」
朝露「本当ごめん。[太字].........忘れてくれて大丈夫だから[/太字]」
そう言って笑う朝露の顔がどこか苦しそうで、見てられなくて目を逸らした。
『 忘れてくれて大丈夫 』
そう言われた時、なぜか心が濁ったような感触がした。
どこかモヤッとするような、俺たちの間に深い霧がかかっていくような.........そんな感触。
[太字]______何言ってんだよ、忘れられるわけねーじゃん。[/太字]
夕凪「.........俺今、結構......と言うかだいぶ混乱してるんだけど........」
朝露「そうだな、本当ごめん。..........冗談、だから。」
冗談、って............
あぁ、まただ。
またモヤッとした............
何でそんな風に言うんだよ............
[太字]一番言いたいのは、自分なんじゃねーのかよ。
俺には、全然分かんねーけどさ。[/太字]
[太字]______『分かんない』って、どうしてかって言えば、俺は昔からずっと。
ずっと、コイツの『本当に言いたいこと』が分からないばかりだったから、分かんないのは当たり前だった。[/太字]
[太字]いっつも取り繕って、それで毎日を生きているようなヤツだったから、隣にいても、何が言いたいのかも何がしたいのかも分からない。[/太字]
夕凪「[漢字]庵[/漢字][ふりがな]いおり[/ふりがな]」
俺から逃げるようにこちらに背を向けたアイツの服の裾を引っ張った。
何気に、もしかしたら下の名前で呼んだのは初めてかもしれない。
夕凪「.........お前、さっきから本当に言いたいこと何なんだよ」
朝露「お前.........まだ、分かんない感じ?」
夕凪「はぁ......?」
朝露「読解力あるお前なら.........遠回しでも分かってくれると思ったんだけどな。」
朝露「分かってくれないみたいだし、もう答え合わせするか。」
コイツがどんな顔してるかは分からなかった。
朝露「俺が言いたいのはさ、夕凪。」
朝露「[太字]来世の存在の証明___前世の記憶なんてもんあるって言ったらお前はどう思うかって聞いてたんだよ。[/太字]」