全部上書きして【Lier's world】
[小文字]朝露「えーと.........あ、あったあった」[/小文字]
彼は1つの墓の前に立ち、花束を置いた。
彼の前にある墓は随分と古ぼけたモノで、供養されてからかなり時間が経っているのが見て取れる。
見た目だけで言うのなら、とっくのとうに三十三回忌を迎え弔われ、そのまま忘れ去られて.........と軽く想像ができてしまうくらい。
それくらい古ぼけているように見える。
朝露「............めっちゃいいヤツだったんだよね、こいつ」
正直な話、いいヤツだったかどうかは俺にとっては知ったこっちゃないモノなんだよな。
ただ、1つの墓を愛おしそうな目で見る目の横の彼を見てそれは言えなかった。
そして目の前の墓に飾られた花束の中身は紫色と橙色の花を中心的に揃えられていて、やはりそれで一番に浮かんだのは雲のたなびく夕暮れの空だった。
赤いはずの夕暮れ空が紫色に染まるのは、空に存在している青が雲を通って散乱し赤と混ざり合うからだと聞いたことがある。
[太字]............何か、ちょっと俺みたいじゃないか。[/太字]
ちょっと、いやかなり自意識過剰だと自分でも分かってるが、アイツどんな感性してんだろうな、などと彼の感性を疑ってしまっていた。
夕凪「.........」
朝露「......どした」
夕凪「.........この花とかってお前が選んだのかなって」
朝露「あー、うん。大体は俺が選んだやつだよ。気に入ったの?」
夕凪「いや.........何かお前のセンス疑うなって」
朝露「えぇっ!?これでも俺結構頑張って選んだんだよ!?花言葉とかそういうのとかも結構真面目に考えちゃったんだぞ......!?」
[太字]______こいつさっきから何なんだよ、らしくない.........。[/太字]
一番に思い浮かび、一番に言葉の銃弾の装填がされたのがその一言だった。
.........常識のあるからこそ、流石に言えないってのは分かってた。
でも、それが一番に頭に出てくるくらいに、[太字]彼らしくなかった。[/太字]
朝露ならこういうの、俺みたく回りくどく言うようなやつじゃない。
花言葉なんかで想いを渡そうと考えるやつじゃない。
朝露なら、きっと墓にでも向かって喋ってるだろう。
それを容易に考えられるほどに、[太字]本当に、彼らしくなかった。[/太字]
夕凪「.........」
そんなことを思いながら、次のレボルバーに装填されていた言葉の方を彼に放つ。
夕凪「[太字]............こいつもこいつで、来世があるとしたら幸せに過ごせてんならいいな[/太字]」
もはや決まり文句のようだった。
朝露「.........ッ、どうだろうなぁ、......」
朝露「正直俺、今『幸せ』だって思ってくれてんなら別にそれでいいんだけど.........」
朝露「.........でも、何かの偶然でも何でもいいから、来世があったら俺のこと覚えててくんないかななんて思ったりするよ[太字]。置いてかれたような気がしてならなくて、どっかで『寂しい』って思ってる[/太字]」
テンションだけはいつも通りだったが、その声色は、顔は、とてもじゃないが悲しそうなモノだった。
夕凪「............。」
朝露「.........てか、お前そんなこと言うようなヤツだったっけ」
夕凪「は? 俺はいつも通り、なんだけど............」
夕凪「てか、変なのはお前の方だって.........本当にどうした?」
[太字]そう、本当におかしいんだ。
さっきから会話をしてはいても、こちらと目を合わせようとはしない。
こいつはただずっと目の前に鎮座する墓と花束の前で悲しそうな顔をして俯いて、呆然と突っ立ってるんだ。[/太字]
朝露「............夕凪。」
夕凪「.........どうした」
大体カイワレ大根くらいのピリピリとした空気の中、言葉を交わす。
朝露「............夕凪はさ。」
朝露「[太字]来世が本当に存在するのを俺が知ってるって言ったら、どう思う?[/太字]」