全部上書きして【Lier's world】
夕凪「............お前にもいるんだな、その......大切な人」
朝露「..........まぁ、そうだね。若干『[漢字]好敵手[/漢字][ふりがな]ライバル[/ふりがな]』みたいな認識でもあったけどさ。」
夕凪「............もうそいつはいない......と」
朝露「............まぁ、そんな感じ。」
朝露「.........ほら、花手向けに行くんだろ?さっさと選ぼうぜ!」
夕凪「あっはい」
夕凪「...............」
こいつは、やっぱり何度見返しても、紛れもなく『 いいヤツ 』だ。
[太字]罪悪感の香りがする手が伸びてきている証拠だった。[/太字]
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朝露「ちなみにお墓に行くとか、そう言う感じ?」
夕凪「いや、まだあそこにいるんだよな。だからそこ行く。」
目線の先には、スズランに似たような白い花が咲いている。
花束には少し合わないような感じのする花なのは確かであった。
夕凪「.........」
夕凪「.........種類多いし、おまかせしてみよっかな」
朝露「いいんじゃない?」
夕凪「ちなみにお前はどうする?」
朝露「俺? 俺はまぁ.........そうだな、もうちょい自分で選んでみるよ。全部決まんなかったらおまかせする」
夕凪「分かった。」
夕凪「............」
大切な人を失っていて、どうして笑っていられるのか不思議でしかない。
その証明に、俺はそれに耐えられずに虚無の中で一人生きていたのだから。
今その悲しみ以上に幸せとでも言いたいのだろうか、それとも今日でケジメでもつけるつもりだったのだろうか。
どちらにせよ、今の俺の頭の引き出しでは到底理解できそうな気がしない。
[水平線]
朝露「.........うん、何かお前にも似合ってるよ、それ」
夕凪「そうか? 店員さんすごいな」
夕凪「お前もお前でセンスあるな、綺麗だよそれ」
朝露「.........そりゃどうも」
夕凪「[太字].........てか、お前の大切な人さ、俺も会いに行ってみてもいい?[/太字]」
朝露「え.........。」
夕凪「あ、いやすまん。別に嫌なら断ってくれていいんだけど.........」
朝露「[太字].........いや、いいよ。むしろ喜んでって感じかな。[/太字]」
微劣に神妙な面してそう言われた。
夕凪「.........」
こういうのはいつも反応に困る。
表情は第二のコミュニケーション、とでも言えばいいだろうか。
よくある話、人は声に出して『大丈夫』を伝えていても表情で『助けて』なんて言ってたりする。
だから、どちらの意思でその言葉を受け取ればいいのか分からないことがある。
顔色ばっかり伺って全力の機嫌取りしていた子どもの頃といい、
顔色から意思をくみ取るのが仕事になってしまった偽物の大人の頃といい。
[太字]知らない間に、社会の味付けが俺に馴染んでしまったようだった。[/太字]
[太字]いつかの後で天日干しにされたなら、それはさぞかし[漢字]美味しく[/漢字][ふりがな]たくさん[/ふりがな][漢字]食べられる[/漢字][ふりがな]嘲笑われる[/ふりがな]ことだろう。[/太字]
夕凪「すまん、お前の言う大切な人、どうしても気になったんだよな。」
夕凪「.........本当にありがとう」
こうやって都合よく受け取ってしまうのも、ある意味は調味料のスパイスに入った社会の気まぐれを模倣したようだった。
朝露「[太字].........じゃあお前の弟、俺も会ってみてもいい?[/太字]」
夕凪「......え?」
朝露「交換条件みたいなもんだよー。」
朝露「[太字]お前が俺の大切な人に会いに行く代わりに、俺もお前の大切な人に会いに行く[/太字]」
朝露「______別に悪い話じゃないだろ?」
夕凪「............あんま、気分いいもんじゃねーぞ.........?」
朝露「いーのいーの。俺の大切な人も、ま......まぁ、気分いいもんじゃないのは同じだしさ......?」
夕凪「.........分かったよ。」
夕凪「そんくらいの覚悟があるって言うんだったら、いいよ」
朝露「.........じゃあ一緒に行こうぜ、な?」
そう言って朝露は左手で俺の右手を握る。
夕凪「ちょちょちょ何、手繋いでくんな!?」
朝露「いいじゃん別に、たまにはいいでしょ〜?」
夕凪「良くねーんだよそれが......!!」
朝露「もー夕凪ったらツンデレー。」
夕凪「それは違う(迫真)」
夕凪「あと俺に花束義手だけで抱えさせようとすんな、せっかくの花束が落ちそうで怖い」
朝露「あそれはマジでごめん」
夕凪「分かったなら離せ」
半ば無理やり左手の拘束を解いた。
互いで利き手同士に縛りを設けていて、青春を駆け抜けていた頃におもちゃの手錠を使って二人で幼稚な遊びをしていたなと思い出す。
平行世界の俺は、もしかしたら本物をつけてたりするだろうか。
そんなことはないととりあえずは信じておきたかった。
夕凪「花束持って街出歩くのって何か卒業したみたいな.........w」
朝露「やめろ視線気になって死ぬwww」
二人静かに、とは言わない。
ただ二人で花束を持って、互い卒業式の入口で敷かれた赤いカーペットを歩くために向かう。
[太字]そして二人、冒涜的とも言えた真実を知らす時を刻む。[/太字]
[太字][中央寄せ]第7章「その太陽は真実を知る」編 開幕[/中央寄せ][/太字]