全部上書きして【Lier's world】
弟の夢を見ていた。
夕凪「.........」
もう夢の世界に、弟の姿はなかった。
伽藍堂となった夢心地のする空間に一人、取り残されいていた。
『 ありがとう 』
あの日聞こえた終わりの言葉を最期に、もう夢の世界からはいなくなってしまった。
[水平線]
[斜体][太字]PiPiPi PiPiPi PiPiPi . . .[/太字][/斜体]
[太字][斜体]PiPiPi PiPi(([/斜体][/太字]
夕凪「.............朝、......」
いつもより目覚めが良くなったような、悪くなったような。
どう言おうと『曖昧』という言葉が当てはまる。
夕凪「.........幸唄、......」
確かに、心が抜け落ちたような気がしていた。
夕凪「.........まだ、死んでなんかいないんだ」
夕凪「[太字]記憶の中で、ずっと生きている。[/太字]」
またそうやって唱えた。
[太字]確かに、過去そこまでにいた自分とは違った意志で。[/太字]
夕凪「[太字].........忘れないからな、絶対[/太字]」
[太字]誰かの記憶の中で生きていてくれれば、それでいい。[/太字]
[太字]______人間は二度死ぬ。
肉体が滅びたときと、人々に忘れ去られたとき。[/太字]
それは意外にも近代の俳優の言葉であった。
______なら、俺はもう一度死ぬその時が来るまでの延命処置をするだけでよかった。
たとえきっと死んでいても、俺の心の中で生き続ける。
______忘れてしまわないように、今日も。
夕凪「おはよう、幸唄。」
今日も、虚空に話しかける。
夕凪「今日は特段何かある日でもねーし.........[漢字]あそこ[/漢字][ふりがな]前の家[/ふりがな]に花束でも置いてってやるか。」
もちろん幸唄向けにな。
あんな目も当てられないようなクズ親に花束手向けるかっての。
さーて、何の花飾りに行こうかな。
[水平線]
生花店はここからだと少し遠い。
かと言って交通機関を使うかと言われても微妙な距離だ。
[小文字]夕凪「あー、疲れる.........」[/小文字]
そう言っても頭の中では花は何を選ぼうか考えていた。
夕凪「せっかくだし幸唄に似合いそうな花がいいよな〜.........」
向かう生花店はいわゆる老舗だ。
毎日色んな花が飾られていて、その度花はキレイだと五感で感じる。
着いた生花店の前には、馴染みのある後ろ姿が佇んでいた。
夕凪「.........あれ、朝露?」
朝露「え、夕凪?」
朝露「何でお前ここにいるんだ?」
夕凪「いやそっちこそ。お前が花束買うとか珍しくね?」
朝露「いやいやそれはこっちの台詞だぜ夕凪」
夕凪「俺は弟に花束手向けに行く。お前は?」
朝露「俺も大事なやつに花束手向けに行く。」
夕凪「ふーん。お前にもいるもんなんだな、大切な人」
朝露「そんくらい俺にもいるっての」
朝露「[太字]______守れなかったけど、それでも大切な存在だったってやつ。[/太字]」
[太字]そう語る彼の左目は悲しそうだった。[/太字]
[太字][中央寄せ]第6章「扉の向こう側の夢」 完[/中央寄せ][/太字]