全部上書きして【Lier's world】
目に映る君がずっと眩しくて、
その度怖くなっていた。
親父は俗に言う『ヤクザ』って人だったけど、それがどうにも俺にはかっこいいと思えた。
俺たちのことは『大切な存在』って言ってくれて、その手で育ててくれたことが何よりの幸せだった。
親父みたいに『大切な何かを守れるような強い人になりたい』と心から思った。
______すぐその幸せは奪われた。
バァンッ
という乾いた銃声が聞こえて、気づけば隣で手を握ってくれていた親父はそのまま倒れ込んでいた。
『誰か救急車!!警察呼んで!!』
『とりあえずこの子を保護しよう』
『ほら、こっちおいで』
幼心でも悟れたその死を前に、こちらまで鉄砲を喰らったような気分だった。
そんな惨憺たる光景の中独り、ずっと親父の手を離せないでいた。
3歳の頃だった。
______その日に引かれた引き金で、母は変わってしまった。
『お前のせいで、お前のせいで.........お父さんは.........!!』
「い゛っだい......!! 母さんやめて!!」
『お前が死ねばよかったのに、お前が死ねば!!』
俺が泣いている事すら気にも留めず、ただ一心不乱に俺を殴る生みの親。
変な勘違い一つでこの酷い仕打ちの様だった。
『.........お兄ちゃん、大丈夫なの......?』
「.........うん大丈夫、大丈夫だから............幸唄はあっちで遊んでな」
『............うん』
心配そうな、涙を浮かべた瞳でこちらを静かに見つめる俺の弟。
______『幸唄』という、俺の元にいた、たった一人だけの大切な弟。
俺は幸唄が笑ってくれるなら、それだけでよくて。
別に他には何もいらなかった。
俺はそのおかげでずっと一人で耐え続けていられた。
母は親父が殺されたことをキッカケに、幸唄に対してはとにかく過干渉になった。
二度と同じ苦しみが起こらないようにと。
______母の言っていることは、分からなくもない。
ただそのためにしている事全部が、俺には歪んでいるように見えた。
幸唄もその違和感には気づいていた。
ただ心までも幼い一人の子どもに、それが耐えられるわけがなかった。
ある日幸唄は一人で外に飛び出した。
新しい世界を知るために巣立ったヒナのように。
キンセンカ揺れる窓の先で遠くに見える公園で幸唄は無邪気に笑って遊んでいた。
一番に『羨ましい』と思った。
ちょうど帰ってきた母親は狂ったように叫び、そして俺に聞く。
『幸唄をどこにやった!!!!』と。
「......幸唄は一人でどこかに行っちゃったんだ、探してみたらあの公園にいた」と窓の先にいる幸唄を指差す。
そういうと血相を変えて、無言で、足早に公園に向かう。
______あの後首根っこ掴まれて引きずられて、無理やり家に連れて帰られた幸唄は、
______誰もが口を揃えて言うであろう『地獄』に連れてかれた。
______幸唄は監禁されたんだ。