全部上書きして【Lier's world】
寝汗がひどく、少し手間がかかってしまった。
______あれは『悪夢』と呼ぶようなものではない。
むしろ心地よい、ずっとあそこにいたくなるような夢を見ていたはずなのに、なぜ............
夕凪「............」
.........いや、理由は最初から分かっている。
分かっているんだ............
[太字]俺がただ、それを『分かりたくない』ってワガママ言ってるだけで、ただ............[/太字]
[水平線]
夕凪「.........すまん、待たせた」
朝露「あ、よかった来てくれて。バックレるかと思ったわ」
夕凪「俺がそんな事するように見えるかよ」
レモン「そこはやっぱ変わんないっすね〜.........はは」
レモンが苦笑いをしながらゆっくりと思い出すように夏祭の方を向く。
察するように捨て飯も目の先を変え口を開く。
捨て飯「.........それで夏祭さんの言う、『水晶体事変』について分かった事って言うのは......?」
夏祭「あぁ、それは今から説明するとこや」
水晶体事変。
蕉創高校より1月10日に発生した事変であり、事後異変者は死亡が確認されていたという。
[太字]『八尋 翠』
それが異変者の名前であって、俺の担当したクラスの一人だった。[/太字]
夏祭「............まず『水晶体事変』発生当時の状況として、空も雲も、いつものように青くはなかった。」
夏祭の言う通りだった。
放送室に向かう道中で見た空は赤く染まっていて、
空の光源の出処だけが臓物を握りつぶしたような色となりその先に光は届かず、
雲は鮮血を含んだガーゼのような色味だった。
廊下を走った日だったから、よく覚えている。
夏祭「[太字]本来、これは相当な力が働かんと起こらん現象なんや。[/太字]」
捨て飯「[太字]............『水晶体事変』の異変者にあたる人は一人でそれを起こしたんですか.........?[/太字]」
夏祭「.........そういう事や」
相当な力............相当情緒不安定にならない限り、あんな事にはならなかったんだろうか。
俺がもっと早くSOSに気づいていれば、何も起こらなくて済んだだろうか。
レモン「ただ話はそれだけじゃなくてですね〜.........」
ひょこっと顔を覗かせながらしれっと話に混じるレモン。
朝露「えまだあんのかよ」
これに関しては流石に朝露に同情だった。
お前も調べてたのかよ。
レモン「まだありますよー。ジャーナリスト舐めてもらっちゃ困りますね」
そう言えばそうだった。こいつ職業ジャーナリストだったわ。
レモン「んで、警察の調査の結果.........あ、公安警察じゃなくて能力課警察の方っす。」
能力課が出るって.........思ったよりも一大事になってたのか.........
レモン「[太字]んで調査の結果、異変者は既定値を大幅に超えた『憎悪の力』を発生させていたって言うんです。[/太字]」
朱肉「憎悪の力?」
レモン「まぁ呼んで字の如く、マジそのまんまっす。人を妬む感情やら、恨みつらみはまとめてそう呼ばれるんすよ」
レモン「んで人にもよりますけど、[太字]本来一人の人間で生成できる『憎悪の力』はほんの微量でしかないんですよ。[/太字]」
夕凪「[太字]............じゃあそれって、普通に考えたらおかしい.........[/太字]」
レモン「.........そう、そうなんです。憎悪の力はやろうとすれば一人の人間からでも大量の生成が可能なんですけど、そうすると先に壊れるのは確実に身体の方なんです」
レモン「憎悪の力ゆえの得も言われぬ本能的な狂気に飲み込まれて............」
レモン「[太字].........警察の調べでも、異変者はその憎悪の力に耐えられず死亡したとされてるんですよね[/太字]」
夕凪「憎悪の力で.........?」
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[中央寄せ]「______『[漢字]気体構築[/漢字][ふりがな]クリエイト[/ふりがな]・[漢字]冷却[/漢字][ふりがな]ブリザード[/ふりがな]』」[/中央寄せ]
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[中央寄せ]「蒼き水の波紋、我が足元に広がれ!!」
「渦巻き、怨念となり、全てを覆い尽くし、やがては針と成る!!」
「『[漢字]水針獄零[/漢字][ふりがな]シャレスティ[/ふりがな]』ッ!!」[/中央寄せ]
[水平線]
夕凪「............いや、あの日八尋は何かの詠唱で.........」
夏祭「[太字]______そう、それこそがウチらの中で生じた矛盾点なんや[/太字]」
[小文字]レモン「てかその子八尋さんて言うんすね」[/小文字]
夏祭「あの子は、確かに『憎悪の力』で暴動を起こしているとも思えないほど『[漢字]人間[/漢字][ふりがな]ヒト[/ふりがな]』として生きていた。」
夏祭「やのに、警察の見解は下手の横好きって言ってもいいくらいに的外れで。」
夏祭「[太字]______まるで、ウチらが見たあれは『触れてはいけない』と言われんばかりに。[/太字]」
夕凪「............」
朱肉「............水の詠唱、しかも上級だった.........」
朱肉「............あの、」
朝露「、?」
朱肉「[太字]それって、僕の『世界樹』の時もいた人.........?[/太字]」