全部上書きして【Lier's world】
[斜体]prrrr......[/斜体]
「...............」
微かに電話の音が聞こえる。
鳴る電話の振動音と着信音が布団の中でくぐもった音となり耳に入る。
正直鬱陶しい。
[太字]______無論、私に出る気力などなかった。
きっと私のこと助けに来ようとするから。[/太字]
[小文字]『ただいまー!』[/小文字]
元気な弟の声が聞こえる。
もはや聞こえるすべての音が鬱陶しく聞こえてくる。
[太字]______こういう時こそ、ノイズキャンセリングができればいいのに。[/太字]
...............でも、私にその対の音の譜面は描けない。
そもそも、そのための羊皮紙を持つ資格すらないのだろう。
[小文字]『............兄さーん?どこいるのー?』[/小文字]
「...............」
[小文字]『兄さーん?いるなら返事してー!』[/小文字]
「...............」
[小文字]『............自分の部屋いるのかなー.........』[/小文字]
いつの間にか電話の音は諦めたかのように聞こえなくなっていた。
[斜体]コンコン[/斜体]
『兄さん?いるなら返事してってば』
いるのは分かってるでしょう。玄関に靴置いてあるんですから。
分かってるなら、どうして意味もない問いを投げかけるんですか。
虚空にその声を紙飛行機に乗せ飛ばす。
ただ、それはすぐに堕落した。
『開けるよ?』
[斜体]ガチャガチャ[/斜体]
『............兄さん?』
「............」
[斜体]ガチャガチャ[/斜体]
『.........え、ねぇ、扉を開けてよ兄さん......!』
『兄さん?ねぇ返事して!?』
無駄ですよ。
[太字]だってもう、鍵かけましたから。分かるでしょう。[/太字]
『兄さん...............ッそっか......もう............』
[太字]『______█████████ 』[/太字]
[太字]「っ!?」[/太字]
その一言だけ鮮明な、透明な声で聞こえる。
でも、何を言ってるか聞こえなかった。
[太字]まるでそれがノイズがかった声だと反応して消していくように。[/太字]
[太字]それなのに、聞こえなかったのに、_________。[/太字]
[水平線]
[斜体]ピーンポーン......[/斜体]
止め処なく出てくる焦燥感とどこから出てきたのかも分からない喪失感に苛まれる中、水を差すように玄関チャイムの音が鳴る。
不思議と目から涙は出ていなかった。
「っ.........はい......?」
《 あーえっとその声.........柊翔くんで合ってる......? 》
「あっはい.........えっと、朝露さんたちがうちに何か用でも......?」
《 えっとなー.........まぁ話すと長いんだ、それに立ち話するような内容でもないからな.........良ければ上がらせてほしいんだけどいいか? 》
「............いい、ですけど.........」
《 お、マジでいいの? すまんな急に押しかけたのに。 》
「いいです、けど..........ひとつ、さっき手伝ってほしい事ができて。それを一緒に手伝ってくれるって言ってくれるならいいですよ............」
《 ............? まぁその辺はギブアンドテイクだから全然条件飲むけど.........何かあった? 》
「詳しくは中でお願いしたいです。今、そっち行くので。ちょっと待っててください」
《 .........とりあえず分かった 》