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眩しかった。
[太字]見るもの全部。[/太字]
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朝露家.........中国拳法でそこそこ有名な家系に、俺は生まれた。
でも、俺は拳法を学ぶ道には行けなかった。
ただ稽古されているみんなを、追いやられた部屋の隅で見ているだけだった。
何でかって?
[太字]______[漢字]見えなかった[/漢字][ふりがな]眩しかった[/ふりがな]、それだけ。[/太字]
[太字]俺は「羞明」というモノだった。[/太字]
生まれつき瞳の色素が薄かったのが要因で、みんなにとっては「ただの光」でも俺にとっては「眩しい光」に見えた。
[太字]______ずっと割れ物扱いだった。[/太字]
[太字]『お前は我が一族の恥!! とっとと身ぐるみ剥いで死ね!!!!』
『何時になったら死ぬんだろうね、この出来損ないは』
『存在してるって事実だけで反吐が出る。拳法もまともに出来ない子ができるくらいだったら、産んでもらうんじゃなかったよホント』
『視界に映るな 次映ったら殺す』[/太字]
「.............」
そんな中で一人、ずっと耐えていた。
ただ2人、両親はそれでも俺の事を愛してくれた。
暴力を振るわれて戻ってくる度、手当して慰めてくれた。
[太字]唯一の心の支えだった。[/太字]
『この出来損ない!!』
顔を叩かれても、
『早く死ね、虫唾が走る』
腹を蹴られても、
『薄汚いドブヅラ見せんな』
何をされても、ずっと何も言わなかった。
何があっても、両親がいるなら俺はそれだけで立ち上がれた。
そして何か言ったところで、変わるモノでもなかったから。
[太字]______もっとも、それは一瞬で壊れ消え去っていった束の間の幻影だったが。[/太字]
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俺は強く願った。
みんなと同じように、並んで稽古して、家業継ぎたいんだって。
願うと、それが神様に届いて自分の能力となる不思議な世界。
[太字]神様は、あまりに無情で残酷に俺を嗤っていた。[/太字]
ただ『感覚の強化』という能力で、俺も晴れて稽古に______
[太字]______並ぶことは出来なかった。[/太字]
[太字]むしろ、救いようのないところまで堕ちただけだった。[/太字]
能力自体は、[太字]『視覚・聴覚・嗅覚の大幅な強化、および感情の認識能力』[/太字]。
その効力があまりに強く、自分の首を絞めることになる。
[太字]俺は、その能力のせいで羞明の症状がただ悪化しただけだった。[/太字]
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[太字][斜体][大文字][大文字][中央寄せ]ガシャンッ[/中央寄せ][/大文字][/大文字][/斜体][/太字]
繊細に入り組んだガラス細工を一瞬にして破壊するような音と共に、頭に釘で何本も、同時に刺すようなほどの強烈で鋭い痛みが走る。
『努力したところでお前は何にもならない いい加減にしろ』
ツンと鼻を刺すアルコールの香りで、酒飲んで暴力振るってるって中学生にもなった俺にはすぐに分かった。
[太字]そして、誕生日にもらった医療用のサングラス越しに分かる。[/太字]
[太字]俺に焼酎の瓶振りかざして殺そうとしてた。[/太字]
多分あれ2つ目だ。
そうでなければ周りに瓶の破片が散らばってるなんておかしかった。
祖父の怒鳴り声以外に、車からする独特のドアを閉める音がしたのを聞いた瞬間、真っ先に玄関へ走った。
そこに俺を救ってくれる両親がいるってすぐに分かったから。
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______今の俺がいる。
それでも、どうしようもない事を気にしてばかりいた。
言われたことだけやってそこから開放された瞬間、
何をすればいいのか分からなくなった。
俺の目指していた道はどこかへ行った。
そうなった今、どうすればいいのか分からなくなった。
とりあえず今やりたいこと全部やろうって結論になって、今のようにグレた。
グレた時も、中学生の時に成長期はほとんど終わって、そこから変わっていない遮光眼鏡が手放せなかった。
散々祖父に否定された力なんて、今更認められなかった。
ひねくれてしまっている自分にも嫌悪があった。
だからお前の前で一生懸命に祖父に認めてもらおうとした自分が馬鹿みたいだったからって、嘲笑ってやった。
いくら一番を取ったって『俺』だったから無駄だった。
意欲なんてもう捨てた。
[太字]でも、[漢字]眩しく[/漢字][ふりがな]・・・[/ふりがな]見えたのはどうしてだったんだろう。[/太字]
いつも誰かが、目が焼けるような笑顔を振りまく。
[太字]何で、そんな風に[漢字]笑え[/漢字][ふりがな]でき[/ふりがな]るのさ。[/太字]
[太字][漢字]眩しい[/漢字][ふりがな]助けて[/ふりがな]よ、[漢字]お前[/漢字][ふりがな]誰か[/ふりがな]。[/太字]
ただ俺の隣にいる、自分の片割れのようで正反対な[漢字]アイツ[/漢字][ふりがな]夕凪[/ふりがな]。
なぜか誰よりも一番眩しくて、キラキラした姿だった。
そんなお前の「俺じゃない」っていうその姿に、劣情が消えていく気がした。
俺のあるべき姿は、きっとこれなんだと思う。
朝露「なぁ、夕凪。」
朝露「[太字]生きがい見つけてくれて、ありがとう。[/太字]」