全部上書きして【Lier's world】
夕凪side
捨て飯「今日はありがとうございました〜!」
柊翔「お世話になりました〜!」
朝露「また会ったら話そうな〜!」
朝露の言葉に笑って手を振ると、兄弟は振り返って来た道を辿って帰っていく。
こういう所まで全部似てしまっているのが、兄弟と言える何よりの証明だった。
.........アイツと俺も、そうだったのかな。
夕凪「.........俺たちも帰ろうか。」
朝露「.........そーだな。」
もう思い出したくなんてないから、帰らせてくれ。
帰り道
朝露「にしても学生時代ねー......いい思い出そんなないかもなぁ。」
夕凪「学生時代、か」
夕凪「.........安心しな、俺もまともな思い出はねぇよ。」
朝露「もうちょいマシな未来とか、夕凪はそん時見れなかったんだよね?」
夕凪「......あぁ、うん。あの能力使えるようになったのは大学行ってからだったしな......」
______いや、本当は全くもってそんな事はない。
夕凪「それに、能力が使えるようになったにせよ、何ができるかは分からなかったからな。」
これだって、そんなことない。
そんなの、この世界の不変の理に則れば誰でも分かることなのに。
「俺...もう、お前が......に目覚...る前から......」
______「過去」を、「未来」に送る力。
嫌でも自分が願ってしまったのだから、これが自分の望みであると知ってしまったから、
「俺...目......た瞬間...から周......景色......変に見えて。」
正直自分が持っているこの力は、とてもじゃないけど、好きじゃない。
「.........おー......凪、聞こ......る?」
もし取っ替えっ子でもできたら、どれだけ楽なんだろうか.........
「.........夕...?おーい、聞...えてるかー?」
...............きっと、もっと楽しい人生を送れていたはずだ。
「.........おーい。」
.....................。
「聞こえてんのかって聞いてるんだけど!?」
夕凪「おわっ!?」
朝露「あやっと反応した」
夕凪「あ、......ごめん、何かボーッとしてた」
朝露「......お前どうしたんだよ、何からしくないぞ。」
朝露「お前の周りに広がってる『色』も......お前で見たのだと初めての色。」
朝露「何とも言えない、何色とも言えない......そんな色。」
朝露の瞳越しには何の色も見えないからそれがどんな色かは分からなかった。
夕凪「...............。」
それにこれは、
夕凪「......何でもないんだ、放っておいてくれ。」
夕凪「お前に関係あるもんでもねぇよ。」
きっと言葉で伝わるもんじゃねぇ。
???side
「............あれ、もういたんですね。随分と楽しみだったようで。」
薄暗く寂れ、まるでそこだけ時が止まっているような錯覚をするようなトンネル。
???「さっき来たばっかりだっての......うちは遠足前日の子どもなんかじゃないよ〜?」
トンネルの中、それはただ1人そこにいた。
「そんな悪趣味な玩具持っておままごとなんかしてる時点で、自分からすれば大分おこちゃまですよ」
鮮明な黄色とも、光り輝く金色とも見て取れる髪色。
???「あっはは〜、その言い回しいいね。気に入ったし今度からありがたく使わせてもらおっかなぁ。」
水色のネクタイが目を引くようなその姿は、相変わらずと言った所だった。
「......それで、今日は何の用で呼んだんですか、はちみつレモンさん。」
レモン「ん〜まぁ用件は話すんだけどその前に......フルネで呼ぶのは肩苦しいからやめてくれって言わなかったっけ〜......?」
レモン「ね、朱肉くん?」
朱肉「はいはい、分かってますよ......貴方みたいな人なら否が応でも、尚更ね。」