全部上書きして【Lier's world】【Thanks for 2000 views over!!!!】
夕凪「.........ちょっと待て。俺は春喰に会った記憶は______ 」
春喰「うん。知らなくても当然だと思う。」
春喰「[太字]先生は、先生だから[/太字]」
夕凪「............」
[水平線]
僕はそもそも、親からの愛情なんてものはこれっぽっちも貰わなかった。
[太字]______否、知り得る事すらなかった。[/太字]
「うぅ......うっ、.........うわぁぁん............」
「ままぁ.........ままぁ.........どこなの............?」
変な髪の色だって言われて、それだけで俺は捨てられた。
これから一生、まともな生き方なんてできないと幼心ながらに理解していた。
???「[太字]______そこの坊っちゃん、どうしたん?[/太字]」
そこにいたのは、紛れもなく何の関わりもないただ通りすがりの人。
当時の僕でも「関西弁」を喋っているのは理解できたけど、無性に恐怖を感じてもいた。
「............」
???「うーん、頑なに喋らんなぁ.........」
???「.........じゃあ坊っちゃん、自分の名前は言えるか?」
「[太字]............なまえ、しらない[/太字]」
???「知ら、ない.........?」
「[太字].........なまえ、わからない[/太字]」
それこそ少しの時間は、育ててくれたけど。
[太字]名前なんて、呼んでもらったことがない。[/太字]
[太字]そもそも、僕に名前自体あるのかも分からない。[/太字]
???「.........それはいいとして、とりあえず。」
???「.........あんさんここじゃ寒いやろ?一緒に行こか。」
「.........どこ行くの」
???「ん、どこ行くんかって?せやな〜.........」
???「[太字]あんさんと同じような、生きる場所を失った人が生きるための楽園。[/太字]」
「............」
???「第一、ウチもそこで生きてる人間の1人やし。」
どこか、その「生きる場所を失った人たちの楽園」と言ったその言い方に、どこか聞き覚えがあったのは僕だけなのだろうか。
???「[太字]______ほら、もう着いたで[/太字]」
僕の目の前にはキレイな建物がただ広がっていた。
僕にとっての「家族」という名の世界とは真逆の世界だと、そう錯覚できてしまうほどの世界が、目の前に広がっていた。
???「______あ、 " 風ちゃん " どーして外なんかにおんの!」
???「あヤベ」
???「はぁ.........みんな心配しとったで?今は " 凪にぃ " おるからええけどはよ顔出してきぃや」
???「はいはーい」
建物の重たそうな扉から、一人の女の子が姿を表す。
雨が降っているどころか快晴なのに、なぜかレインコートを着ている不思議な人だった。
???「.........てか、その子は?拾い子?」
???「あぁせやな.........さっきそこで泣いとったから」
???「.........まぁ、ええか。自分、名前は言える?」
屈託のない笑顔で聞かれる。
当時の僕にとっては、いわゆる「営業スマイル」のそれとしか結びつけていなかったが。
「...............」
そして当然、2回言われても分かるわけなかった。
???「あー[漢字]露帰[/漢字][ふりがな]つゆき[/ふりがな].........それがこの子、名前知らんって言うんよ。」
???「え.........名前知らんって、どうなったら名前知らずに育つん?」
???「さぁ。どうしたもんか.........」
???「______じゃあ、ウチらで名前つけてあげんのはどうや?」
???「............名前を、つける?ウチらが?」
???「そう。そうすればこの子のこと、気兼ねなく呼べる。この子にもオトモダチができる。」
???「そう思えば名前はつけるべきやって、[太字]ウチは思うんや。[/太字]」
???「............そうやね、確かに名前がなきゃ名無しの権兵衛になってまうかw」
???「じゃあこの子の名前、みんなで考えよっか。」
そうやって、僕に「[漢字]柊也[/漢字][ふりがな]とうや[/ふりがな]」って名前をつけてくれた。
[水平線]
???「............お前、新しく来た " 柊也 " って子?」
「.........うん」
???「そっか。俺のことは " 凪にぃ " って呼んで」
「凪にぃ.........分かった。凪にぃね。」
蜜柑色の吸い込まれそうなほどキレイな瞳の男の子は、凪にぃと言った。
多分、あの建物の中では一番年上だったんだろう。しっかりしていたのを今も覚えている。
「.........ねぇ、凪にぃ。」
凪にぃ「どうした?」
「あの名前つけてくれたとお兄ちゃんとお姉ちゃん、何ていうの」
凪にぃ「あの2人?」
「うん。」
ふと、僕に名前をくれたあの2人のことが気になった。
凪にぃ「お兄ちゃんの方が " [漢字]風鈴[/漢字][ふりがな]ふうりん[/ふりがな]兄ちゃん " 、それでお姉ちゃんの方が " [漢字]雨傘[/漢字][ふりがな]あまがさ[/ふりがな]姉ちゃん " 。覚えたか?」
「風鈴兄ちゃんと、雨傘姉ちゃん!覚えた!」
凪にぃ「よーし、偉いぞ柊也!」
そう笑っている凪にぃだけど、いなくなってはいつの間にか帰ってきているの繰り返しをしていたみたいで、何だか不思議だった。
凪にぃ______どうして、どうしてこんな邂逅を果たしてしまったんでしょうか。
[太字]______[漢字]夕凪先生[/漢字][ふりがな]凪にぃ[/ふりがな]。[/太字]