私は先輩に恋をした
#1
初めて先輩と話したのは、この文芸部に入部してから、数か月ほどたった夏だった。
私の先輩、福島先輩は、かなりトリッキーな文章を書ける人だった。所謂、叙述トリックというものだ。文章の中だけでは分からないようなことを、ミステリ小説の犯人隠しとして使用することである。別人だと思っていた二人が実は同一人物だったり、神の視点(読者の視点)だと思っていた文章が、本当は登場人物の視点だったり、最後の最後で驚かされるミステリを書くのが、福島先輩は得意だった。
「どうして佐野さんは、この部活に入ろうと思ったの?」
それが先輩から聞かれた最初の言葉だった。
「私は...そうですね、小説家に憧れたんです」
私は小学生の頃から、小説が好きだった。というより、文章を読むのが得意だった。見た文章がすぐに頭に入ってくる。そのせいか、小説を書く人たち、小説家になることを夢見た。
私は恋愛小説を書くのが得意。恋愛であれば、なぜかいくらでも書ける気がするのだ。
だから試しに、文芸部に入ってみた。
この文芸部では二か月に一度合同誌を出し、購買や同人イベントなどで販売している。あまり買う人は居ないので、みんな趣味で書いているようなものだが、それでも楽しく部活を出来ていた。
そしてその文芸部で出会ったのが、福島先輩だった。
先輩はいつも優しく、文章のクオリティも高く。文章を書くのが速かった。そして、部活のみんなも先輩を信頼している。
そして私が最近気づいたことは、私は先輩に恋してしまったのかもしれない。
そう思ったきっかけは、秋の初め頃に出した合同誌の執筆中だった。文章を書いている最中に、ついつい先輩のことが気になってしまう。先輩はどんな文章を書いているんだろう、どんなトリックを思いついたんだろう。そんなことを考えるうちに、気付いたら鉛筆を持つ手が止まっていた。
先輩を見ると、ドキドキする。先輩に話しかけられると、もっとドキドキする。こんな気持ちを文章の中に表すことが出来ないだろうか。この恋を小説にできないだろうか。次の日には、原稿が大体できていた。
先輩に憧れて、叙述トリックを入れてみた。恋愛小説で叙述トリックというのは、少し変かもしれない。それでも先輩への気持ちを文章に表すなら、そんな文章を書きたい。
(この原稿が完成したら、先輩に思いを伝えよう)
そう思いながら書いた文章は、今までの小説よりもっといい文章になったと思う。
10月の中旬、紅葉が咲き乱れる体育館の裏に、先輩を呼んだ。一緒に紅葉狩りをする予定で、二人きりになる時間を作った。
「綺麗だね、佐野さん」
やはり、先輩と話していると心がドキドキする。
「先輩...綺麗ですね」
先輩が綺麗だという意味で、言ってみた。
「それはどういう意味?佐野さん」
先輩は少し微笑みながら聞いてきた。
「それは...その...先輩が綺麗で...」
少し、声が小さくなってしまったように思う。
「その...私、先輩のことが好きなんです」
それでも、自分の想いを伝えることが出来た。
「え...それって...」
先輩は、驚いたように言った。
「佐野さん女の子なのに...私が好きって事...?」
私は、先輩、福島桃香さんのことを好きになってしまった。女の子同士の恋愛。所謂、百合というものだ。自分がそんな恋愛をするなんて、思ってもいなかった。
私の先輩、福島先輩は、かなりトリッキーな文章を書ける人だった。所謂、叙述トリックというものだ。文章の中だけでは分からないようなことを、ミステリ小説の犯人隠しとして使用することである。別人だと思っていた二人が実は同一人物だったり、神の視点(読者の視点)だと思っていた文章が、本当は登場人物の視点だったり、最後の最後で驚かされるミステリを書くのが、福島先輩は得意だった。
「どうして佐野さんは、この部活に入ろうと思ったの?」
それが先輩から聞かれた最初の言葉だった。
「私は...そうですね、小説家に憧れたんです」
私は小学生の頃から、小説が好きだった。というより、文章を読むのが得意だった。見た文章がすぐに頭に入ってくる。そのせいか、小説を書く人たち、小説家になることを夢見た。
私は恋愛小説を書くのが得意。恋愛であれば、なぜかいくらでも書ける気がするのだ。
だから試しに、文芸部に入ってみた。
この文芸部では二か月に一度合同誌を出し、購買や同人イベントなどで販売している。あまり買う人は居ないので、みんな趣味で書いているようなものだが、それでも楽しく部活を出来ていた。
そしてその文芸部で出会ったのが、福島先輩だった。
先輩はいつも優しく、文章のクオリティも高く。文章を書くのが速かった。そして、部活のみんなも先輩を信頼している。
そして私が最近気づいたことは、私は先輩に恋してしまったのかもしれない。
そう思ったきっかけは、秋の初め頃に出した合同誌の執筆中だった。文章を書いている最中に、ついつい先輩のことが気になってしまう。先輩はどんな文章を書いているんだろう、どんなトリックを思いついたんだろう。そんなことを考えるうちに、気付いたら鉛筆を持つ手が止まっていた。
先輩を見ると、ドキドキする。先輩に話しかけられると、もっとドキドキする。こんな気持ちを文章の中に表すことが出来ないだろうか。この恋を小説にできないだろうか。次の日には、原稿が大体できていた。
先輩に憧れて、叙述トリックを入れてみた。恋愛小説で叙述トリックというのは、少し変かもしれない。それでも先輩への気持ちを文章に表すなら、そんな文章を書きたい。
(この原稿が完成したら、先輩に思いを伝えよう)
そう思いながら書いた文章は、今までの小説よりもっといい文章になったと思う。
10月の中旬、紅葉が咲き乱れる体育館の裏に、先輩を呼んだ。一緒に紅葉狩りをする予定で、二人きりになる時間を作った。
「綺麗だね、佐野さん」
やはり、先輩と話していると心がドキドキする。
「先輩...綺麗ですね」
先輩が綺麗だという意味で、言ってみた。
「それはどういう意味?佐野さん」
先輩は少し微笑みながら聞いてきた。
「それは...その...先輩が綺麗で...」
少し、声が小さくなってしまったように思う。
「その...私、先輩のことが好きなんです」
それでも、自分の想いを伝えることが出来た。
「え...それって...」
先輩は、驚いたように言った。
「佐野さん女の子なのに...私が好きって事...?」
私は、先輩、福島桃香さんのことを好きになってしまった。女の子同士の恋愛。所謂、百合というものだ。自分がそんな恋愛をするなんて、思ってもいなかった。
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