二次創作
蓋を開けられるのは角名倫太郎だけ。
#1
親友だった角名と付き合う話
「また振られた」
そういって愚痴を零した相手は、今ではすっかり有名人になってしまった男、角名倫太郎。
一年の時に席が隣になってからずっと仲が良くて、今では唯一無二と呼べる親友だ。
たまにこうしてどちらかの部屋で飲み会を開催しているのだけど。
彼はオッホホ、と若干気持ちの悪い(褒めてるよ、うん)笑い方で笑ってからビールの入ったグラスを傾けて、今度はなんて振られたの?と聞いてくる。
下手に同情せずに、愚痴を言いたいことをわかって聞いてくれるんだから有難い。
「『ほんまに俺のこと好きで付き合うてるかわからんし一緒居ても楽しないわ』ですって!別に好きじゃなくても好きにさせるから付き合ってって言ったの誰だよ!」
そう言って三杯目のビールを飲み干す。
「●●好きな人いたことないもんね」
「悪かったな、好きが未だにちゃんとわからなくて!」
今までにも何人かと付き合ったことはあるけど、全員押し負けて、付き合ったらそのうち、という気持ちでいただけなのだ。
「誰かさ、こう、ちゃんと好きってわからせてくれるさ、優しくて、出来れば知ってる人で、気が合う人がいればいいのに…」
正直今の年齢から初めて会って、見定めて、付き合って、っていうのは勘弁したい。
「いるっちゃいるよ」
倫太郎が少し考えてから口を開く。
「●●もよく知ってて、●●のこともよく知ってる、優しいかは別として話はちゃんと聞くし、気の合うやつ」
目から鱗だ。そんな人いただろうか。
「ほんとに⁇わたしの仲いい人は高校で止まってるけど…。侑、は話聞かないし…治も話聞かないし…銀?銀は優しいしな…。え、いる?」
仲のいいあのメンツを思い出してみるけどどれも当てはまらない。
「いるいる。あ、でも愛は重め」
「それは全然嬉しい」
誰だ、と思いながら倫太郎の言葉を待つついでに倫太郎のビールを拝借する。
仕方なかろう。もうこれしか残りがないんだ。
「…●●が男としてみてるかは置いといて、角名倫太郎なんていう優良物件があるんだけどさ、どう?」
「あー。ファンの子から笑い方で引かれてたよね」
「え?初耳なんだけど?…ってそうじゃなくて。結構いいと思うんだよね。どう?彼氏にしてみない?」
そう言って今までになく妖艶に笑う倫太郎。
その顔が妙に男らしい色気をまとっていて、顔に熱が集まる気がしたけど、頭を振って思考の路線を正す。そして、ちゃんと考えてみれば。気が合う。お互いよく知ってる。話もこうして聞いてくれる。わたしからしたら十分優しい。
確かに、結構いいのでは…?
「…あり寄りのあり。だけど、さ、倫太郎わたしのこと好きじゃないでしょ?いいの?」
もっとかわいい女の子のほうがいいんじゃないの、という言葉は、倫太郎の「は?」という地を這うような声に遮られる。
「一年の時からずっと好きなんだけど?なのに●●は俺のこと男としてみてないうえに彼氏勝手に作っちゃうし。強引に付き合うのも嫌だから言わなかったけどもう誰かのものになるのも耐えられないから言っちゃったけど」
そうやって少しすねた声で言う倫太郎。
「だから、俺と付き合って。なにがあっても離さないから」
なんとまぁ重い愛の告白なんだろう。でも、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
こうして親友だった倫太郎と付き合い始めたわけなのだけど。
彼氏になった倫太郎は倫太郎と思えないほど優しかった。いや、今までも優しかったのだけど。練習で疲れているはずなのに会社に迎えに来てくれて、デートの帰りはマンションまで送ってくれる。なのにそれ以外は前と同じように接してくれるから、相談だって出来て。
そんな甘い蜜に浸されて過ごしていたのに、デート帰りにマンション前で降ろしてもらった後に体が動かなくなる。
元カレがいたのだ。それも、無理矢理付き合わせて、無理矢理ヤってきて、ズタズタに振ったやつ。
そいつが呑気にこちらに寄ってきて、手を掴まれる。
触らないで。そう言葉にしたいのに恐怖で言葉がつっかえる。
「よかったわ、会社変えてなくて!やっと家見つけられたし。でさ、俺のことまだ好きでしょ?あいつも仕方なく無理矢理付き合ってるんでしょ?なら俺ともう一回付き合ってよ」
初めから最後まで何を言っているんだろう、この人は。
あいつ、とは倫太郎のことだろうか。わたしが、倫太郎のことを好きでもないのに付き合わされていると思っているのだろうか。思考がやっとそこまで追いつくと、頭にカっ、と血が上る。倫太郎とお前を一緒にするな。倫太郎は、わたしにとって唯一無二の存在なのだから、
「あんたなんかと倫太郎を一緒にしないで!わたしは、倫太郎じゃなきゃ嫌なの!好きなの!だから放して、近づかないで!」
やっとわかった。わたしは倫太郎が好きなんだ。
だって、今助けに来てほしいのは倫太郎で、汚れてしまったところを上書きしてほしいのも、声が聞きたいと思うのも、隣にいてほしいと思うのも倫太郎だけ。
よく考えればわかったことで、わたしは高校の時からずっと倫太郎のことが好きなんだ。
けど、ファンもたくさんいて、人気者な倫太郎のことを好きだとわかるのが怖くて『好き』という感情自体に蓋をしてしまったのだ。
そんな時に、急に後ろに体が引かれる感覚。
「聞いた?俺の●●だから。二度と来んな」
そう言う倫太郎の顔は見えないけど、相手の顔を見る限り相当怖い顔をしていたのだろう。
「●●?大丈夫だった?なにもされてない?」
しゃがんで聞いてくる倫太郎を前に、蓋を外してしまった気持ちは永遠に溢れてくる。
「倫太郎、好き。大好き。ずっと、好きだったの。倫太郎だけなの。臆病でごめん」
いろいろな気持ちで満たされた涙が抱きしめてくれている倫太郎の服を汚すけど、なかなか止まらない。
「俺も大好きだよ。ずっと好き。」
優しい声で抱きしめてくれる倫太郎の匂いと暖かさに少し落ち着くけど、恐怖が消えたわけではなくて、これから一人になるのが怖くて仕方ない。
「倫太郎にこのあと予定があるとか知らない。わたしを一人にしないで。ずっと抱きしめていて」
そんなかわいくない言い方でお願いすれば、当たり前でしょ、と笑って、車を出してくれた。
そういって愚痴を零した相手は、今ではすっかり有名人になってしまった男、角名倫太郎。
一年の時に席が隣になってからずっと仲が良くて、今では唯一無二と呼べる親友だ。
たまにこうしてどちらかの部屋で飲み会を開催しているのだけど。
彼はオッホホ、と若干気持ちの悪い(褒めてるよ、うん)笑い方で笑ってからビールの入ったグラスを傾けて、今度はなんて振られたの?と聞いてくる。
下手に同情せずに、愚痴を言いたいことをわかって聞いてくれるんだから有難い。
「『ほんまに俺のこと好きで付き合うてるかわからんし一緒居ても楽しないわ』ですって!別に好きじゃなくても好きにさせるから付き合ってって言ったの誰だよ!」
そう言って三杯目のビールを飲み干す。
「●●好きな人いたことないもんね」
「悪かったな、好きが未だにちゃんとわからなくて!」
今までにも何人かと付き合ったことはあるけど、全員押し負けて、付き合ったらそのうち、という気持ちでいただけなのだ。
「誰かさ、こう、ちゃんと好きってわからせてくれるさ、優しくて、出来れば知ってる人で、気が合う人がいればいいのに…」
正直今の年齢から初めて会って、見定めて、付き合って、っていうのは勘弁したい。
「いるっちゃいるよ」
倫太郎が少し考えてから口を開く。
「●●もよく知ってて、●●のこともよく知ってる、優しいかは別として話はちゃんと聞くし、気の合うやつ」
目から鱗だ。そんな人いただろうか。
「ほんとに⁇わたしの仲いい人は高校で止まってるけど…。侑、は話聞かないし…治も話聞かないし…銀?銀は優しいしな…。え、いる?」
仲のいいあのメンツを思い出してみるけどどれも当てはまらない。
「いるいる。あ、でも愛は重め」
「それは全然嬉しい」
誰だ、と思いながら倫太郎の言葉を待つついでに倫太郎のビールを拝借する。
仕方なかろう。もうこれしか残りがないんだ。
「…●●が男としてみてるかは置いといて、角名倫太郎なんていう優良物件があるんだけどさ、どう?」
「あー。ファンの子から笑い方で引かれてたよね」
「え?初耳なんだけど?…ってそうじゃなくて。結構いいと思うんだよね。どう?彼氏にしてみない?」
そう言って今までになく妖艶に笑う倫太郎。
その顔が妙に男らしい色気をまとっていて、顔に熱が集まる気がしたけど、頭を振って思考の路線を正す。そして、ちゃんと考えてみれば。気が合う。お互いよく知ってる。話もこうして聞いてくれる。わたしからしたら十分優しい。
確かに、結構いいのでは…?
「…あり寄りのあり。だけど、さ、倫太郎わたしのこと好きじゃないでしょ?いいの?」
もっとかわいい女の子のほうがいいんじゃないの、という言葉は、倫太郎の「は?」という地を這うような声に遮られる。
「一年の時からずっと好きなんだけど?なのに●●は俺のこと男としてみてないうえに彼氏勝手に作っちゃうし。強引に付き合うのも嫌だから言わなかったけどもう誰かのものになるのも耐えられないから言っちゃったけど」
そうやって少しすねた声で言う倫太郎。
「だから、俺と付き合って。なにがあっても離さないから」
なんとまぁ重い愛の告白なんだろう。でも、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
こうして親友だった倫太郎と付き合い始めたわけなのだけど。
彼氏になった倫太郎は倫太郎と思えないほど優しかった。いや、今までも優しかったのだけど。練習で疲れているはずなのに会社に迎えに来てくれて、デートの帰りはマンションまで送ってくれる。なのにそれ以外は前と同じように接してくれるから、相談だって出来て。
そんな甘い蜜に浸されて過ごしていたのに、デート帰りにマンション前で降ろしてもらった後に体が動かなくなる。
元カレがいたのだ。それも、無理矢理付き合わせて、無理矢理ヤってきて、ズタズタに振ったやつ。
そいつが呑気にこちらに寄ってきて、手を掴まれる。
触らないで。そう言葉にしたいのに恐怖で言葉がつっかえる。
「よかったわ、会社変えてなくて!やっと家見つけられたし。でさ、俺のことまだ好きでしょ?あいつも仕方なく無理矢理付き合ってるんでしょ?なら俺ともう一回付き合ってよ」
初めから最後まで何を言っているんだろう、この人は。
あいつ、とは倫太郎のことだろうか。わたしが、倫太郎のことを好きでもないのに付き合わされていると思っているのだろうか。思考がやっとそこまで追いつくと、頭にカっ、と血が上る。倫太郎とお前を一緒にするな。倫太郎は、わたしにとって唯一無二の存在なのだから、
「あんたなんかと倫太郎を一緒にしないで!わたしは、倫太郎じゃなきゃ嫌なの!好きなの!だから放して、近づかないで!」
やっとわかった。わたしは倫太郎が好きなんだ。
だって、今助けに来てほしいのは倫太郎で、汚れてしまったところを上書きしてほしいのも、声が聞きたいと思うのも、隣にいてほしいと思うのも倫太郎だけ。
よく考えればわかったことで、わたしは高校の時からずっと倫太郎のことが好きなんだ。
けど、ファンもたくさんいて、人気者な倫太郎のことを好きだとわかるのが怖くて『好き』という感情自体に蓋をしてしまったのだ。
そんな時に、急に後ろに体が引かれる感覚。
「聞いた?俺の●●だから。二度と来んな」
そう言う倫太郎の顔は見えないけど、相手の顔を見る限り相当怖い顔をしていたのだろう。
「●●?大丈夫だった?なにもされてない?」
しゃがんで聞いてくる倫太郎を前に、蓋を外してしまった気持ちは永遠に溢れてくる。
「倫太郎、好き。大好き。ずっと、好きだったの。倫太郎だけなの。臆病でごめん」
いろいろな気持ちで満たされた涙が抱きしめてくれている倫太郎の服を汚すけど、なかなか止まらない。
「俺も大好きだよ。ずっと好き。」
優しい声で抱きしめてくれる倫太郎の匂いと暖かさに少し落ち着くけど、恐怖が消えたわけではなくて、これから一人になるのが怖くて仕方ない。
「倫太郎にこのあと予定があるとか知らない。わたしを一人にしないで。ずっと抱きしめていて」
そんなかわいくない言い方でお願いすれば、当たり前でしょ、と笑って、車を出してくれた。
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