願いは貴方と会う事でした。
「あナたの願イ事ハ、ナぁニ?」
人形の小さい手が、私の頬に触れる。目の前で浮かびながら笑みを浮かべる人形は、妖しくて、蠱惑的で、それでいて私は、世界で一番美しいと感じた。
「私の願い?……き、決まってる」
「ナぁニ?聞かせてチょウだイ」
人形は笑う。私はそれを見て、さらに決心を深めた。
「クロケスタの皆に会わせてほしい。お願い、ティンク!」
[水平線]
ティンクと出会う前まで遡って、少し前。街が眠りこけた夜、私は布団にもぐってスマホを見ていた。
「はぁ、クロケスタマジで神。ほんと皆もっと見てよー……!」
Click Over ORQUESTA、略してクロケスタ。私はその時、クロケスタの公式サイトを眺めていた。
「ほんとにもー……好き!」
私はいわゆる、オタクだ。クロケスタの事が大好きでたまらない。愛が暴走まではしていないが、たまに胸が張り裂けそうにもなる。今思えばこの気持ちは、愛というより、恋というものに似ていた。
そんなクロケスタのオタクとして生きている私だが、たった一つだけ、願いを持っている。
「……クロケスタの皆に会いたいよ」
叶わぬ願いだと、そう思っていた。だって、誰が叶えられるだろうか。二次元のキャラクターとリアルの人間が出会うだなんて。最新の技術なら出来ると言ってみたいが、それもまだ難しい。せいぜい、推しそっくりのアバターを作って、推しの性格を投影させたAIを作ればどうにかなるかな、といった程度だ。本人に会えるわけではない。
私は本気で願う一方、どこか自分の夢を馬鹿にしたい気持ちも抱いていた。なんて滑稽で、不可能な夢なんだろう、そう嘲りたいと感じていた。
それなのに、そのはずだったのに。私のその思想は、今日打ち切られる事になる。
「はぁー……。いつかは会えるかな?いや、無理だよね。うん」
会いたい、でも会えるわけがない。でもそれでも。堂々巡りを繰り返していた、その時。
「……ふふ」
「え?なんだろ……スマホの音じゃない」
部屋のどこかから、誰かの笑い声が聞こえてきた。その笑い声は少女のようで、それでいて、どこか聞き馴染みがあるように感じた。
「まさか、さぁ」
「……ふふ。クふふふふふふ!」
突如、私の目の前に一人の少女が現れた。少女の肘と膝部分には目立つ何かがあって、まるで関節人形のようだった。服装は華奢、体は小さめ。そして……宙に舞っている。それはそれは優雅に。舞踏会で踊るシンデレラのように、彼女はくるくると回って、自由自在に動いていた。
「…ティンク……?」
「ええ、ええ、そウヨ、○○。ワタシはティンク。あなたのお願イハ、なぁニ?」
彼女は、数え切れないほど見た姿で、私の前に現れた。彼女の名前も、これからする事も、全て分かっているつもり。なぜかって、彼女は__ティンクはクロケスタのキャラクターだから。
「なんでティンクが、ここに」
「あなたの願イ事を、叶えニ来たのヨ。サぁ、○○ハ何を叶えたイ?」
くるくると空を舞うティンク。彼女を見て困惑はしたものの、私の中で、彼女にする願い事はもう決まっていた。
ティンクがいるのなら、きっと叶えられる。いや、それは確実に、不可能だと言う事が不可能なまでに、きっと果たせられる事。
「私の……願いは」
「ええ、なぁニ?」
「__クロケスタの皆に会いたい。だから、ティンク……私を、ネバーランドに行かせて!」
人形の小さい手が、私の頬に触れる。目の前で浮かびながら笑みを浮かべる人形は、妖しくて、蠱惑的で、それでいて私は、世界で一番美しいと感じた。
「私の願い?……き、決まってる」
「ナぁニ?聞かせてチょウだイ」
人形は笑う。私はそれを見て、さらに決心を深めた。
「クロケスタの皆に会わせてほしい。お願い、ティンク!」
[水平線]
ティンクと出会う前まで遡って、少し前。街が眠りこけた夜、私は布団にもぐってスマホを見ていた。
「はぁ、クロケスタマジで神。ほんと皆もっと見てよー……!」
Click Over ORQUESTA、略してクロケスタ。私はその時、クロケスタの公式サイトを眺めていた。
「ほんとにもー……好き!」
私はいわゆる、オタクだ。クロケスタの事が大好きでたまらない。愛が暴走まではしていないが、たまに胸が張り裂けそうにもなる。今思えばこの気持ちは、愛というより、恋というものに似ていた。
そんなクロケスタのオタクとして生きている私だが、たった一つだけ、願いを持っている。
「……クロケスタの皆に会いたいよ」
叶わぬ願いだと、そう思っていた。だって、誰が叶えられるだろうか。二次元のキャラクターとリアルの人間が出会うだなんて。最新の技術なら出来ると言ってみたいが、それもまだ難しい。せいぜい、推しそっくりのアバターを作って、推しの性格を投影させたAIを作ればどうにかなるかな、といった程度だ。本人に会えるわけではない。
私は本気で願う一方、どこか自分の夢を馬鹿にしたい気持ちも抱いていた。なんて滑稽で、不可能な夢なんだろう、そう嘲りたいと感じていた。
それなのに、そのはずだったのに。私のその思想は、今日打ち切られる事になる。
「はぁー……。いつかは会えるかな?いや、無理だよね。うん」
会いたい、でも会えるわけがない。でもそれでも。堂々巡りを繰り返していた、その時。
「……ふふ」
「え?なんだろ……スマホの音じゃない」
部屋のどこかから、誰かの笑い声が聞こえてきた。その笑い声は少女のようで、それでいて、どこか聞き馴染みがあるように感じた。
「まさか、さぁ」
「……ふふ。クふふふふふふ!」
突如、私の目の前に一人の少女が現れた。少女の肘と膝部分には目立つ何かがあって、まるで関節人形のようだった。服装は華奢、体は小さめ。そして……宙に舞っている。それはそれは優雅に。舞踏会で踊るシンデレラのように、彼女はくるくると回って、自由自在に動いていた。
「…ティンク……?」
「ええ、ええ、そウヨ、○○。ワタシはティンク。あなたのお願イハ、なぁニ?」
彼女は、数え切れないほど見た姿で、私の前に現れた。彼女の名前も、これからする事も、全て分かっているつもり。なぜかって、彼女は__ティンクはクロケスタのキャラクターだから。
「なんでティンクが、ここに」
「あなたの願イ事を、叶えニ来たのヨ。サぁ、○○ハ何を叶えたイ?」
くるくると空を舞うティンク。彼女を見て困惑はしたものの、私の中で、彼女にする願い事はもう決まっていた。
ティンクがいるのなら、きっと叶えられる。いや、それは確実に、不可能だと言う事が不可能なまでに、きっと果たせられる事。
「私の……願いは」
「ええ、なぁニ?」
「__クロケスタの皆に会いたい。だから、ティンク……私を、ネバーランドに行かせて!」
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