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木葉秋紀はクリスマスまで待てない

#2

木葉とクリスマスイヴ

世間はイルミネーションやツリーを飾って甘い雰囲気を漂わせている中、わたしは塾の真っ只中。…木葉、何してるかな。
すっかり集中力も切れてそんなことを考えていると、携帯が通知音を鳴らす。
マナーモードにし忘れていたらしい。慌ててスマホ画面を見れば、“木葉秋紀”の表示。
なんだろう、と思って通知を開く。
『今日、少し早めに出てこられる?』
集中力がすっかり切れ果てていたわたしは、その甘い言葉に飛びつく。
『出れる!何時に出ればいい?』
『●●の都合のいい時間で』
『じゃあ今すぐ向かいます』
木葉がこうやって塾中に誘ってくれるのもなんだか少し悪いことをしているような気になるのも、全てが嬉しいし楽しくて、大急ぎで荷物を纏める。
あ、でもお迎え来ようとしてくれてたらどうしよう。何にも考えないで送っちゃったけど、入れ違いになるよね。そう思って携帯を開くと『了解。もう下にいるよ』と来ていた。
わたしがまだかかるって言っていたらどうするつもりだったのだろう。
塾の階段を駆け下りて、木葉に駆け寄る。
「お疲れさま。ごめん、切り上げてもらって」
「いや、丁度集中も切れてたし。嬉しかったよ」
そう言うと、顔を赤らめる木葉。かわいい。
「それで、どうしたの?」
「ああ、そう。ちょっとどっか周ろーぜ、って思ったんだけど」
クリスマスくらい多少遊んでも大丈夫だろ、と付け足して、手をつないで歩きだす。
もう8時だというのに、東京の街はまだ昼のように煌びやかに輝いている。
木葉が調べてくれたらしいお洒落な喫茶店に入って、ご飯前だからわたしはカフェラテ、木葉はエスプレッソを頼む。
「これ、メリークリスマス。気に入ってもらえるかわかんないけど」
そう言って差しだされた小包。
「わ、綺麗…。ネックレス?」
丁寧に放送された袋を開ければ小さな青い宝石で装飾されてるしずく型のネックレス。
「ありがとう、すっごい好き!大事にするね」
多分、一所懸命選んでくれたんだろうな、と思うと自然と笑みがこぼれる。
気に入ってもらえてよかった、と照れて笑う木葉。
「これ、わたしからも」
正直このネックレスほどいいものではない気もするけど、一生懸命選んだからご愛嬌だ。
「!腕時計か!」
へぇー、とニコニコしながら眺める木葉。
「こーゆー柄めっちゃ好き。ありがとな」
にっ、とはにかむ木葉にぎゅっ、と心臓がつかまれる感覚がする。
「お待たせ致しました、カフェラテとエスプレッソです」
そんな空気の中店員さんが若干入りにくそうに届けてくれる。
「あっ、すみません、ありがとうございます」
お礼を伝えて受け取って一口啜ってから木葉が、あ、そうだ、と切り出す。
「空いてる日あればどっか行こうぜ。塾ばっかだと疲れるし、ゆっくりできる場所でもさ」
たしかに、付き合って一週間程度だけどお互い塾ばかりでどこにも行ってない。
「賛成。どこがいいかな」
と話し始めればここがいいな、だの、そこもいいな、だの止まらなくて、帰路に就いたのはいつもより少し遅い時間。
「ごめんね、遅くなって」
そう言いつつも家の前で少し話していると、ガチャ、と玄関のドアからお母さんが顔を覗かせる。
「あ、すみません、遅くなって」
木葉がかしこまってお母さんに頭を下げる。そんな仕草に、大事にしてくれてるんだな、と改めて感じる。
「あら。いいのよ~!○○から連絡は来てたし、木葉くんがいれば安心だもの!」
「ちょ、お母さん!余計なこと言わなくていいから!」
「この子、木葉くんといるから遅くなるかもって。」
恥ずかしいことをぺらぺらと話すお母さんに怒りつつも、恥ずかしくて木葉から目を逸らす。
「だって木葉と話してると時間すぎるの早いんだもん」
あら~!なんていうお母さん。黙って。
「木葉くん、もう遅いしうちで食べていったら?」
とうとう爆弾発言を落としたなこいつ。
「え、でも、」
ほら、木葉困ってんじゃん!
「いいのよ~!○○もまだ一緒に居たいって顔してるし!」
「!じゃあお邪魔します」
「え、木葉?いいの?」
まさか乗るとは思わなくて木葉に聞けば、「俺もまだ一緒居たいし、お義母さんに早く認めてもらいたいからな~」なんて言われる。
完全にかっこよすぎてキャパオーバーだ。
「ほら早く来なさ~い!」と奥から呼ばれてリビングに入ると、クリスマスのごちそうが並んでいて、その中には木葉の分も食器が出してあった。
…多分、わたしが連絡した時からこうする予定だったのだろう。
手洗いうがいをして木葉の隣につけば木葉が嬉しそうな顔をする。
ほんとに、私の彼氏はかっこいいのにかわいくてたまらない。


仕事から帰ってきたお父さんは、木葉の存在に驚きつつもお母さんに聞いていたのか仲良く二人で話し出すんだからびっくりだ。
でも、こんな風に家族と仲良くしてもらえるのは矢張り嬉しくて、わたしも今度木葉の家にお邪魔してみよう、と秘かに決意した。


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作者メッセージ

番外編でした!いかがでしたでしょうか?
若干短めではありますが楽しく読んでいただけたら幸いです!
感想やリクエスト、大募集中です!

2024/08/29 16:02

みこ ID:≫.p/urPjL4qdic
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