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木葉秋紀はクリスマスまで待てない

#1

木葉がいろいろと待ちきれない話。

外に少しいるだけで指先が痛くなるような冬の日。毎日毎日冬休みだというのに塾に缶詰の日々。来週のクリスマスだってもちろん塾。まぁ、受験生だから仕方がないのだけれど。
髪を高くツインテールにしたクソ短いスカートの梨瑚ちゃんは塾を休んでデートらしい。別に僻みでもないけど。僻みでもないけど!受験なんて落ちちまえ!と思うのも仕方ないと思ってほしい。こちとら出会いも恋も碌にないのだ。
町中が明日のクリスマスイブに向けて飾り付けている街並みを、ぼーっとしながら通っていれば、後ろから声を掛けられる。
「…●●?」
「?あ、木葉くんか。木葉くんも塾帰り?」
声のもとは同じ中学の木葉くんだった。友達を挟んで何度か話したことしかないからいまいちの距離感の木葉くん。
「おう。朝からずっとなー。●●も塾だろ?おつかれさま」
「そちらこそおつかれさま」
そう言ってから言葉に詰まる。こうして二人きりで話すのは初めてだから、何をどんなテンションで話せばいいかがわからない。そんな風に悩んでいると、
「来週クリスマスだよなー。俺ら受験生には無縁だけど」
そう、笑って木葉くんが話を振ってくれる。
「だね。…って、木葉くんは誰かとどっかいかないの?」
「俺?俺は年中フリーです」
しくしく、と泣くふりをする木葉くん。
「いろんな人と夜中までパーティーしてそうなのに…」
「まって、俺のイメージどうなってんの、それ」
「優しいけどチャラい人…」
「ひどくね?」
なんて笑っていればそろそろ駅に着くころ。
「…待って、●●って何駅?家までどれくらいかかんの?」
唐突なる質問攻め。
「こっから三つ向こうで三十分くらいだよ」
「…俺も近くだから一緒帰ろーぜ」
「?うん、全然いいけど」
なんでわざわざ確認したんだろ。まあいいか。
そんな風に流して、気付けば家の前。
「ぁ、ごめん、送ってもらっちゃって…。話に夢中になりすぎた…。」
「いいっつーの。俺がこうしたかったんだし」
それは、どういう意味なのだろう。
この短時間で木葉秋紀という人にすっかり引き込まれてしまったわたしの思考は都合のいいように勘違いしそうになるけど、そんなわけない、と無理やり邪念を振り払う。
「っていうか●●いつもこの時間?」
「うん、基本そうだよ」
「ならさ、また一緒帰ろーぜ」
出来れば確かにいつも怖かったし、木葉くんとできるだけ距離を縮めたい私的にはそうしたいのだけれど。
「木葉くん帰るの遅くなっちゃうよ」
「大丈夫だって。俺がそうしたいの。女の子一人でこの時間歩かせるとかありえねーし」
そう話す木葉くんに自然と笑みがこぼれる。
「じゃあ、お願いしようかな」
よっしゃ任せろ、と胸をたたく木葉くん。
「あ、もし時間変わっちゃったときのために連絡先交換してもいい?」
「確かにな。はい、これ俺の。」
差しだされたQRコードを読み取れば、木葉秋紀、の文字。
よろしくねスタンプを送ってスマホを閉じる。
「じゃあ、ごめんだけど、これからよろしくお願いします。」
「おう、どんとこい!」
そんな風に手を振ってお別れをすれば、来た道を戻っていく木葉くん。遠回りさせちゃったのか、申し訳ない。でも、本当に楽しくて、塾の疲れが吹っ飛んでしまった。それはそれは、お母さんに帰ってから「なにかあった?」と聞かれるくらい。
明日の塾、ちょっと楽しみかも、なんて。


昨日と同じ時間に塾を出て、大通りへ出たところのガードレールに腰掛ける姿。
「木葉くん。おまたせ」
急いで駆け寄って声をかける。
「いや、今来たとこ。いこーぜ」
そうして歩き始める木葉くん。噓つき。鼻、赤くなってるじゃん。気づいたけど言わないでおく。彼なりのやさしさだから。
でも、本当に、たった一日でここまで引き込まれるなんて思っていなくて、少しドギマギする。
「てかさ、気になってたんだけど。呼び捨てでいいよ、俺」
「…木葉?」
呼んでみると、少し恥ずかしい。好きな人の名前、だからだろうか。
「おう」
「ふふ、木葉」
なんだか恥ずかしいけど、それ以上に嬉しくて、もう一度呼んでみる。なんか、バカップルみたい。
「木葉、明日空いてたりしない?」
「明日?多分。閉館日だった気がする」
「そうそう、わたしも。一緒勉強会しよ」
ほんとは一緒に居る口実が欲しいだけだけど。
「ナイス、めっちゃいい。●●ん家の近くのガ○トでいい?」
「え、いいの?」
「いいに決まってんだろー?なに持ってく?」
「んー。数学苦手だから数学かなぁ。」
「マジ?じゃあ俺国語持ってくわ。苦手なんだよな、国語」
作者の気持ちなんてわかるわけない、と顔を顰める木葉。
「ふふん、じゃあわたしが教えて進ぜよう!木葉理系なんだね」
「得意っつっても大体グラフは小さい五角形だけどなー。」
「羨ましい…。わたしいっもしずく型だよ」
こんな風な、と手で形を作れば、それを見て笑う木葉に釣られて二人で笑うこの瞬間をわたしは忘れることはないんだろうなぁ、と密に思った。

朝の六時半。約束は十時からだけど、できるだけおしゃれをしていこう、と髪を巻いて、目立たない程度の色付きリップを塗って、一番お気に入りのワンピースを着る。
どんだけ気合い入れてんの、って思われるかなと一瞬考えたけど、木葉はきっとそんなこと思わないな、なんて。根拠もないけど。何度も何度も鏡で確認して、そろそろいいかな、なんて思った時、お母さんが部屋の中に駆け込んでくる。
「○○!あんたいつの間にあんないい彼氏作ったの~⁉」
お母さんもうメロメロよ~、というお母さんにサーっと冷える背筋。
「え、ちょ、今どこに、」
「リビングにお招きしてあるわ!」
うせやん。
急いで階段を駆け下りてリビングの扉を開ければ、絶賛片思い中の人の姿。
「木葉⁉わ、わたし時間間違えてた⁉」
リビングの机に座る木葉に慌てて確認する。
「いや、全然合ってるけど、待ちきれなくて」
へにゃ、なんて効果音が着きそうな顔で笑った木葉の言葉に顔が赤くなるのがわかる。
まぁ~!って。お母さん。黙ってくれ。
「そ、それならよかった、けど、お母さんになんか言われた…?」
恐る恐る聞けば、あ~、と顔を逸らして赤らめる木葉。
最悪。言ったやつやん、これ。
「ちょ、ごめん、行こう、木葉。」
そう言って木葉の背中を押す。
こういう時でさえ自分より高い身長にドギマギするんだからたまったもんじゃない。
「お義母さん、ありがとうございました!今度またちゃんと顔出します」
「ほ、ほんとに!いいから!行こう!」
ここから五分もかからないガス○まで、お互い真っ赤な顔で歩いていく。
「いらっしゃいませ~!何名様でしょうか?」
店員さんに状況を悟られるのが恥ずかして、二人でお願いします、と口早に伝えて一番隅の席に着く。
「えっと…。聞いたと思うんだけどね、わたし、その、ほんとこんな三日で好きになるとかびっくりなんだけどね、木葉が好きなの、だから、その、」
あまりの羞恥心で言葉が詰まる。告白なんてしたことないけど、今までしてくれた人はこんなに恥ずかしいものをしていたのか、なんて考えて現実逃避をしようとするも木葉に阻止された。
「俺でよければ付き合ってください」
木葉の顔も赤いし、色んな感情でごった返しになっていると、木葉が慌てて「ほんとはクリスマスとかにもっと雰囲気があるところで言いたかったんだけどやっぱ俺から言いたくて、」なんてわたわたと弁明し始めるものだから、ついふふっ、と吹き出してしまう。
今まであんなにかっこつけていたのに肝心なところで不器用になるのがあまりにも木葉らしくて。
「こんなにちょろいわたしでよければよろしくお願いします」
そう返すと安心したように息をつく木葉。
「マジ俺かっこつかねぇな…。」
「ふふ、そんなところが好きだよ」
「否定はしねぇのかよ!」
っていうか。
「勉強道具忘れたね」
「あ」
やってしまったといわんばかりの顔をする木葉。
「家でやろっか。お母さん居るし。」
「だな。たださすがになんか少し頼んでからいこーぜ」
「だね」
そうして期間限定のパフェとタルトをひとつづつ注文する。
「…甘いな」
「わたしは好きだけどね」
そうして手をつないで帰ったのは言うまでもないが、クリスマスに木葉もうちでご飯を食べたのも、これから将来を誓う関係になるのも、わたしはまだ知らない。

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作者メッセージ

初投稿ですが、どうでしたでしょうか!
ほんとは木葉が1年のころから片思いしてた、というエピソードも入れたかったんですけど入らなかった…。
感想やリクエスト、お待ちしてます!
みこ

2024/08/28 23:18

みこ ID:≫.p/urPjL4qdic
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