「 [下線]お前も、1人？[/下線] 」

しゃがみながら、少し悲しげにそう呟く。
からっからの目には1匹の薄汚い黒猫だけ。

[水平線]


彼氏と別れた日のことだった。

夏の雨の日の、いつものずぅーんとした重い低気圧やじめじめした湿り気にすら負けてしまいそうな程、悲しくて、悔しくて、疲れていて、泣いていたんだ。


痛いほど全身に突き刺ささってくるしずく達。
1人寂しく泣き疲れた、路地裏にぽつんと悲しくしゃがんでいる汚れたアタシ。同じく1匹の薄汚い黒猫。

ざぁざぁと音が響く、せっんまい路地裏。耳を澄ますと、誰かの走る音が聴こえた。猫が逃げてった。

雷の様な衝撃、いや、頭の中でハートの花火が突然が打ち上げられた衝撃の様な、なにか、絶対に湿気では無いが、むわっとしていて、ぱりっとしている。そんな衝撃だった。

「 [斜体]ぁｰ 、あの、！こんな日に、傘持たずに、[小文字]こ、[/小文字]こんな所いたら、風邪、ひきますよ、？[/斜体] 」


きっと、勇気を出して言ってくれたのだろう。モジモジした、低いけど優しいような声だった。その声の持ち主が、ビニール傘をアタシにくれようとした。
人の温かさが滲みて、また泣きそうになった。

だけど、
意地を張ってしまった。

「 大丈夫です。ほっといてください。」

そっぽを向き、傘の先端を押し返す。
断ったら悪かったかなぁとか、猫、逃げちゃったなぁとか、後々思いながら、横目でその人を見る。
黒色無地のパーカーにジーパン、コンビニの袋。断られておどおどしている。数秒、それ を観察していたら、その人は躊躇しているのかおずおずとアタシの前に来て、目線を合わそうとしゃがんだ。
目が赤く腫れているのを見られまいと、顔逸らした。

「 ぁｰ、あの、えっと、なんか あったんですか？…その、相談ぐらいならの[小文字]れるんですけど…。[/小文字]」

声がどんどん小さきなっている。陰キャか？

「 [小文字]と、[/小文字]とりあえず、家、来ませんか、濡れてるし、雨で、」

声がなかったら下心だぞ？まんま。

でも、下心が無い芯から親切と心配するような、声だった。安心してしまった。

優しさが心に染みて、苦しかった。気がついたら、そいつにしがみつきながら、嗚咽が出る程泣いていた。




[中央寄せ][斜体][下線]それが“ 彼女 ”との 出会いだった。[/下線][/斜体][/中央寄せ]