鬼神様は憂鬱な日々を楽しく過ごしたい
#1
__________毎日が退屈だ。
[漢字]一ノ瀬[/漢字][ふりがな]いちのせ[/ふりがな][漢字]楓[/漢字][ふりがな]かえで[/ふりがな]、十七歳。日本の中でも屈指の名門校である『[漢字]出雲[/漢字][ふりがな]いずも[/ふりがな]学園』の高等部に通う、極々平凡な女子高校生だ。
楓は窓際の席で、頬杖をつきながら窓の外の景色を眺めた。
まるで檻のようにも思えるこの教室も、我が物顔して大声で話すカースト上位のクラスメイトも、そんな彼らに心の中でしか文句を言うことができない自分自身も、楓は大嫌いだ。
楓は誰にも気付かれないように溜息を吐きながら、空を流れる白い雲を眺めた。 ぼーっとしながら雲を眺めていると、後ろからふと話しかけられた。
「ねえ、一ノ瀬さん」
振り返ると、そこには煌めく金髪を持った少女がこちらを見下ろしている。
一つ一つの髪が絹のように綺麗で美しく、小さな顔の中には顔のそれぞれのパーツが見事なまでに並んでいる。全体的にも線が細い体に制服を着たその姿は愛らしい西洋人形のようにも思わせるほど整っている。
「えっと・・・・・・[漢字]睦月[/漢字][ふりがな]むつき[/ふりがな]さん。どうしたの?」
「どうしたのって・・・昨日頼んでたじゃない!ほら、数学Ⅱの課題だって。貸してちょうだい!」
「あ、ああ。ちょっと待ってね」
彼女の名は[漢字]睦月[/漢字][ふりがな]むつき[/ふりがな][漢字]李咲[/漢字][ふりがな]りさ[/ふりがな]。
この学校の中でもカースト上位に位置する生徒。実家は睦月財閥という、国内でも有数の財閥である。要するに、彼女は財閥令嬢なのだ。
楓は急いで机の中からワークを取り出し、李咲に渡す。李咲は差し出されたワークを礼も言わずに取り、取り巻き達と席へ戻っていった。
楓は昔から自分の意見をはっきりと言えない。幼い頃からの悩みだ。言おうと思っても、もし言って周りに何か言われたらと思うと、口を噤んでしまう。
直したくても、直せないのだ。
楓が小さく溜息を吐くと、担任教師が入ってきた。少し熱血が過ぎるので、楓は苦手な教師_____名は[漢字]草薙[/漢字][ふりがな]くさなぎ[/ふりがな]_____である。
草薙が入ってきた瞬間、立って話していた生徒は全員すぐに着席し、そのままホームルームへと入る。
「えー今日はなー、いい知らせがあるぞ」
草薙の言葉に真っ先に反応したのは、李咲だった。李咲はその綺麗な金髪を自分の指に巻き付けながら口を開いた。
「転校生でしょ?もうみんな知ってるって!」
「お、本当か?なら話が早いな!」
草薙と李咲の会話に、知らなかったであろう生徒らも騒ぎ始める。
「え?男子かな?男子だったらイケメンがいいなぁ」
「女子だとやっぱ可愛い子だろ!」
「可愛かったらオレ、狙っちゃおっかなー!」
「絶対イケメンが来た方がいいでしょ!」
ざわつき始めた教室の中で、草薙が声を張る。
「はいはい、みんなが楽しみなのは分かった!んじゃ、入ってきてもらおうか!」
草薙はそう言うと、ドアの方へ「いいぞー」と声をかけた。草薙の声に合わせて、ドアがゆっくりと開く。
_________入ってきたのは、美しい少女だった。
[漢字]一ノ瀬[/漢字][ふりがな]いちのせ[/ふりがな][漢字]楓[/漢字][ふりがな]かえで[/ふりがな]、十七歳。日本の中でも屈指の名門校である『[漢字]出雲[/漢字][ふりがな]いずも[/ふりがな]学園』の高等部に通う、極々平凡な女子高校生だ。
楓は窓際の席で、頬杖をつきながら窓の外の景色を眺めた。
まるで檻のようにも思えるこの教室も、我が物顔して大声で話すカースト上位のクラスメイトも、そんな彼らに心の中でしか文句を言うことができない自分自身も、楓は大嫌いだ。
楓は誰にも気付かれないように溜息を吐きながら、空を流れる白い雲を眺めた。 ぼーっとしながら雲を眺めていると、後ろからふと話しかけられた。
「ねえ、一ノ瀬さん」
振り返ると、そこには煌めく金髪を持った少女がこちらを見下ろしている。
一つ一つの髪が絹のように綺麗で美しく、小さな顔の中には顔のそれぞれのパーツが見事なまでに並んでいる。全体的にも線が細い体に制服を着たその姿は愛らしい西洋人形のようにも思わせるほど整っている。
「えっと・・・・・・[漢字]睦月[/漢字][ふりがな]むつき[/ふりがな]さん。どうしたの?」
「どうしたのって・・・昨日頼んでたじゃない!ほら、数学Ⅱの課題だって。貸してちょうだい!」
「あ、ああ。ちょっと待ってね」
彼女の名は[漢字]睦月[/漢字][ふりがな]むつき[/ふりがな][漢字]李咲[/漢字][ふりがな]りさ[/ふりがな]。
この学校の中でもカースト上位に位置する生徒。実家は睦月財閥という、国内でも有数の財閥である。要するに、彼女は財閥令嬢なのだ。
楓は急いで机の中からワークを取り出し、李咲に渡す。李咲は差し出されたワークを礼も言わずに取り、取り巻き達と席へ戻っていった。
楓は昔から自分の意見をはっきりと言えない。幼い頃からの悩みだ。言おうと思っても、もし言って周りに何か言われたらと思うと、口を噤んでしまう。
直したくても、直せないのだ。
楓が小さく溜息を吐くと、担任教師が入ってきた。少し熱血が過ぎるので、楓は苦手な教師_____名は[漢字]草薙[/漢字][ふりがな]くさなぎ[/ふりがな]_____である。
草薙が入ってきた瞬間、立って話していた生徒は全員すぐに着席し、そのままホームルームへと入る。
「えー今日はなー、いい知らせがあるぞ」
草薙の言葉に真っ先に反応したのは、李咲だった。李咲はその綺麗な金髪を自分の指に巻き付けながら口を開いた。
「転校生でしょ?もうみんな知ってるって!」
「お、本当か?なら話が早いな!」
草薙と李咲の会話に、知らなかったであろう生徒らも騒ぎ始める。
「え?男子かな?男子だったらイケメンがいいなぁ」
「女子だとやっぱ可愛い子だろ!」
「可愛かったらオレ、狙っちゃおっかなー!」
「絶対イケメンが来た方がいいでしょ!」
ざわつき始めた教室の中で、草薙が声を張る。
「はいはい、みんなが楽しみなのは分かった!んじゃ、入ってきてもらおうか!」
草薙はそう言うと、ドアの方へ「いいぞー」と声をかけた。草薙の声に合わせて、ドアがゆっくりと開く。
_________入ってきたのは、美しい少女だった。
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