「え～っと…」
出演者パンフレットを手にとって、出場順を確認する。
アンカーもだいぶだけど、トップバッターも緊張しそう…
どっちも、期待があるよね。
「…[太字]クレイジーエナジー[/太字]だわ」
「うぇっ!？トップバッターって、すごいね」
「ザムト、見てるかなぁ」
大丈夫かな。仲直りは、できたみたいなんだけど…
やっぱり、気まずさがあるかもしれない。
「私、ちょっと見てきていいかな？」
ザムト、きっと関係者席にいるんじゃないかな。
奥の席の、スタッフさんがいるようなところでザムトを探す。
「トップバッター、クレイジーエナジーさん！意気込みは、どうですか？」
ミレドさんが、リーダーさんにマイクを向ける。
[太字]「少し前、ギターメンバーが、一人脱退しました。」[/太字]
リーダーさんが、関係者席を見つめながら言った。
きっと、そこにザムトがいるんだろうな。
「僕たちが、音楽を押し付けてしまったからです。その後、彼女はもうここには帰ってこないと。今は、新しい帰る場所があると言いました。そのメンバーに、音楽を楽しんでいるところを、知って欲しい。[太字]ちゃんと、見とけよ！[/太字]」
Vサインをして、位置に着いた。
ザムトも、クレイジーエナジーの人達も、すごいよ。
言いたいことをちゃんと伝えて、それを受け止めて。はっきり言って、しっかり悲しんで、しっかりお別れして、今、しっかり見てる。
そんなメンバーたちだからこそ、今までやってこれたんだな。
クレイジーエナジーのこと、あんまり知らないけど。
きっと、言いたいこと言って、喧嘩するから、仲が良いんだろうな。
だから、今の優しくて、まっすぐなザムトがいるんだ。
キアクの件も、だいぶ気にして、反省してそうだしね…。
メンバーさんは、カメラ…じゃなくって、ずっとザムトを見てた。
ザムトも、ずっとみんなのことを見てた。
(心配、いらなかったかな？)
ステージが終わって、裏でみんなで話すだろうな。
トップバッター、クレイジーエナジーのパフォーマンスは、すごかった。
なんていうか、キラキラしてて。みんな、全力で音楽を楽しんでるって伝わってくる。ザムトの、フロースムジカの最高のパフォーマンスも、伝わるといいな。
次々と、他のバンドもステージに上がっていく。
投票で選ばれたバンドは、どれも迫力がすごい。
みんな、楽しそうで、かっこいい。
これが、音楽祭。
楽しい。ワクワクする、ドキドキする。
音楽って、やっぱり楽しいなぁ。
早く、歌いたい。
色んな人に、私たちの『音楽』を見て欲しい。