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終わらない物語を終わらそう

#9


鏡の中はこの世とも思えない空間だった。
建物の中なのか、それとも外なのか、それすら分からない。

永遠に続くように見える廊下、景色はぐにゃりと歪んでいる。

後ろを向くと入ってきたはずの鏡が消えていた。


「後戻りはできない、か」


クルトガは覚悟を決めて果てなき道を歩きだした。

景色が変わらないため、下っているのか上っているのかすら分からない感覚に陥る。

方向は合っているのか。
ここから出ることができるのか。

そんなことをクルトガは考えていると、一つの大きな扉が現れた。

厳重そうだけれど、鍵穴は見当たらない。
試しに押してみると、扉はあっさりと開いた。

扉の向こうは玉座がポツンと置かれている。
そして、そこには道化師の様な格好をした老人が腰掛けていた。


「待っていたよ、クルトガ」


なぜか老人はクルトガの名前を知っていた。


「アナタは……」

「私の名前はDr.グリップ。物語の結末を奪った者、と言えば伝わるか」

「お前が……」

「さあ、これから最後の物語を紡ごう」


Dr.グリップがパチンと指を鳴らすと、結末のない一つの物語が現れた。


『昔々一人の字書きがおりました。字書きは様々な物語を終わらせてきました。そして、ついに物語の結末を奪った黒幕の前までやってきたのです。────』


物語はここで終わっている。


「いつものように結末を書くだけさ」


しかし、いくら書こうが物語は紡がれなかった。
インク?
いや、違う。
空に書く筆にインクなどという概念はない。
それならば何故。


「分からないようなら、私がキミの代わりに物語を書いてやろう」


Dr.グリップはひょいっと指を振ると、クルトガが持ってきた筆がたちまち宙に浮かんだ。
そして、静かにDr.グリップの手の中に収まった。

先程まで文字が出てこなかった筆の先からは、何事もなかったかのように物語を紡ぎ始めた。


『昔々一人の字書きがおりました。字書きは様々な物語を終わらせてきました。そして、ついに物語の結末を奪った黒幕の前までやってきたのです。しかし字書きは決して黒幕に勝つ事は出来ないのです。字書きは知らなかったのです。自分が黒幕が作り出した物語の一部だと言うことを。めでたしめでたし。』


この物語が意味することとは……。

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2024/09/19 18:12

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