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終わらない物語を終わらそう

#10


「私が、作られた存在……」


絶望の表情を浮かべるクルトガ。


「いかにも。気付かなかったのかね?キミが書く物語の結末がどれもバッドエンドだと言うことに。あれは私の意思だ」

「そんな」

「実に愉快愉快」


Dr.グリップは満足気に拍手をした。


「今までご苦労様。キミはもう用済みなんだよ」

「……」

「キミも他の物語同様、光となって消えてゆく定め。そう、それが私の書いたシナリオ」

「そんなことはさせない。消してやる……」

「私を殺そうというのかね」

「いや、この消しゴムで!」

「なんだと!」


クルトガは胸ポケットから白くて丸い塊を取り出した。
これは岸辺で物語を紡いだときに拾った物。


「ホワイトアウト!」


クルトガがそう叫ぶと、今まで紡いできた物語の結末が次々と消えていく。

物語だけでなく、玉座も、歪んだ空間も、Dr.グリップ自身も。


「これは面白い。私の意志に背くというのか」


口だけしか残っていないDr.グリップは、思いがけない展開になっていると言うのにも関わらず、どこか嬉しそうだった。


「ハッピーエンドを返してもらう」


口元も消されたDr.グリップは完全に消滅した。
残されたのは一本の筆。


「ここからは私の物語だ」


『昔々一人の老人がおりました。彼は自分の生み出した主人公にお話の続きを書かせていました。そしてお話の最後はとびきりの悲劇になるはずでした。だけどそのお話は、思わぬ展開に。そのきっかけは、老人自身が気まぐれで持たせた消しゴムによって変わったのです。

そして一人の男がお話を書き始めました。次こそは自分の意志で物語を書きたい、と。希望に溢れたお話を。男の物語はまだまだ始まったばかりです。』




ーーFinーー

このボタンは廃止予定です

作者メッセージ

これにて完結です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

2024/09/20 10:16

edp ID:≫0tS.Wi/U8jY6Y
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