恋というものは【短編】
#1
ある日のこと
[太字]ある日のこと[/太字]
6月、梅雨の時期に入り雨が多い日々だった。今日は珍しく晴れるという予報だったので傘など持ってきていない。
のに、
ザーザー.....
なんだこれは!?置き傘なんて持ってないよ!?もぉ!大好きな及川先輩に名前呼ばれて気分上がってたのにぃ!
『どうすりゃいいってんだ......』
「あれ?●●ちゃん、もしかして傘ない?」
突然聞き覚えのある声がしてぐるんっと後ろを振り返ってしまった。
『お、及川せんぱい...!?』
「うん、及川先輩だよ」
えっ、えっ!?こっ、これ私に話しかけてるんだよね?自惚れじゃないよね!?名前も呼ばれちゃったよ!?
『えっと、そ、そうなんです。晴れって聞いてて......』
「そっかぁ〜.....じゃあさ、一緒に帰らない?」
●●ちゃんが良かったら、と付け足して及川先輩が言う。え.....?おいかわせんぱいとかえる....カエル?帰る.......
『........えっ!?いっ、いいんですか!?』
「いいよいいよ〜」
そう言って置き傘であろう傘を、広げて及川先輩が手招きをしてくれる。
『し、しつれいします.....!』
えっ、えっ!?私今!好きな人と相合い傘してる!?
そう思って及川先輩を見ると、目が合って微笑んでくれた。
『.....!?』
し、心臓に悪いです....!!!
そう思いながら歩いていたら、あっという間に家に着いてしまった。
『あ、ありがとうございました!及川先輩!』
「あはは、いいってば〜、風邪引かないようにね?」
『は、はい!善処します!』
バタン......
お、及川先輩と相合い傘して.....!心配までしてもらってしまった....!!
『うぅ.....すきですぅ.....』
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昨日の事がまるで夢みたいに思えてきちゃう.....
「......聞いてんの?おい」
『わっ、ごめんごめん!何の話だっけ英』
目の前の男、国見英にそう言うと、やっぱ聞いてねぇじゃんと不貞腐れた顔をした。
『ごめんって〜!』
そうは言ったけど、脳内にはまだ及川先輩の笑顔がチラついている
[斜体]あなたをひっそりと思い出させて[/斜体]
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「ーーー、ーー?」
あっ、この声!き、昨日のお礼とか言わなきゃだしね!?断じて話したいとかじゃないし!
『及川せんぱ』
「好き、徹...」
「....俺もだよ」
『い........』
私は咄嗟に隠れた
あ........さっき、きす、して、た.......
おい、かわせんぱ、いと、おんなのひと........
『はは......そっ、か。そう、だよね。きのうのなんか......』
ただの後輩への優しさ
[斜体]諦めて恋心よ[/斜体]
次々と溢れ出す記憶と涙。結局は、あの楽しい時間も、後輩に対する優しさだっただけなのだ。何の意味もなかった。
[斜体]青い期待は私を切り裂くだけ[/斜体]
トンっ
「....次移動教室だろ、行くぞ」
誰かに背中を押されて顔を上げた
『あき、ら.....!......そっか、次移動教室......すぐに準備するね』
私は少し駆け足で教科書を取りに行った
ちゃんと笑えていただろうか、心配をかけていないだろうか、バレて、ないだろうか
色んな感情を巡らせて走った
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いつの間にか放課後になってしまっていた。周りを見渡しても私1人、あぁ、帰らなきゃな
今日は昨日と違いすごく晴れていて、周りが見やすい
私の心も晴れてたらなぁ
[斜体]あの人に伝えて[/斜体]
[斜体]寂しい[/斜体]
......帰ろ、そう思い、足を一歩踏み出したら
「徹〜!委員会めっちゃ長かった〜!待っててくれたんだ?」
「うん、まぁね。待ってたよ」
『っ....!』
私はまた咄嗟に隠れた
嫌な汗が頬を伝う。おち、つけ.......かえってるだけ....帰ってる、だけ.......
[斜体]大丈夫[/斜体]
そう無理矢理落ち着かせる
もう、行っただろうか。そう覗き込むと、及川先輩と目が合っ
『.......っ!?』
昨日と変わらない笑顔を見せてくれた。なんで.....なんでですか.....
そんなのされたら....この後を1人で、どんな思いで帰ればいいんですか.....?
『[斜体]寂しいっ.....[/斜体]』
「俺が居るだろ、馬鹿」
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