【参加終了】無くした記憶と宝探しの旅
「行かないで!」
顔色を真っ赤にして、真っ青にして──母は、激怒していた。顔に血管が浮き出ている。元々些細なことであたしを叱る厳しい母だったが、ここまで怒ることはなかった。怒られる理由もなぜ母の逆鱗に触れたのかさえわからない、そんなことは初めてだった。
誠「なんで…?あたし、全部思い出したよ?」
「あなたは病気なのよ!?[漢字]新山[/漢字][ふりがな]にいやま[/ふりがな]先生もそう言ってたじゃない!過去を忘れる病気なんだから、ちゃんと忘れてないとダメでしょ!!!」
そういえば、あたしの記憶が抜け落ちてから義人と同じ病院へ連れて行かれた記憶がある。そこで、解離性健忘という病名を私はつけられた。
解離性健忘──過度なストレスにより、自分に関する記憶を思い出せなくなる精神疾患。こんな言葉は、何度も聞いた。
洗脳のように、父と母に植え付けられた。『誠の記憶がないのは、病気だから』と。
誠「そっか、お父さんとお母さんが……メモーリアに頼んだんだっけ?」
「…っ……なんで、知ってるの?」
驚いたのか、絶望したのか。母の腕を握る力が緩む。
その隙に母の手を振り払うと、先ほど外れてしまった学校用のリュックサックを引っ掴み、扉を叩きつけるように閉めた。
アパートの階段をガッタンゴトンと音を立てて下る。そのまま駐輪場までダッシュすると、鍵を開け、何ヶ月かぶりの自転車にまたがり街へ繰り出した。
風が耳元を吹き抜けていく。開成医療センターまで、もう少し。
[水平線]
誠「はあっ…はっ……あのっ!面会って、できますか?」
開成医療センターに到着。その瞬間に面会受付まで行くと、受付の人に訝しむような顔をされた。が、すぐに笑顔を作って応対する。
「どの患者さんのご家族?」
誠「南館307号室、如月義人の友人です」
彼女は作り笑顔をキープしたまま、申し訳なさそうにこう言った。
「ごめんね〜、ご家族以外は面会できないの。義人さんのご家族から許可をもらってからじゃないと、患者さんのプライバシーにも関わりますから…」
誠「彼、親がいないんです!」
「あぁ……でも、彼自身ほぼ意識がないようなものだから、面会は難しいです」
誠「……わかりました、すみません」
キッパリと断られてしまった。それじゃあ何がいい?
病院の出口まで歩いていると、ちょうど南館へ向かう廊下がざわついている。
「捕まってたまるかぁ!!!!」
病院指定の入院着に身を包み、体のところどころにチューブを貼り付けたままの子供が、地面を這うようにして転げ回っている。後ろから走ってくる看護師や医者、病院関係者にスリッパを投げつけると、そのままこちらへ向かって転がってきた。
その少年は、狐色のボブカットに青と紫のオッドアイ。少し幼い顔に必死の形相──この世界の、如月義人そのものだ。
顔色を真っ赤にして、真っ青にして──母は、激怒していた。顔に血管が浮き出ている。元々些細なことであたしを叱る厳しい母だったが、ここまで怒ることはなかった。怒られる理由もなぜ母の逆鱗に触れたのかさえわからない、そんなことは初めてだった。
誠「なんで…?あたし、全部思い出したよ?」
「あなたは病気なのよ!?[漢字]新山[/漢字][ふりがな]にいやま[/ふりがな]先生もそう言ってたじゃない!過去を忘れる病気なんだから、ちゃんと忘れてないとダメでしょ!!!」
そういえば、あたしの記憶が抜け落ちてから義人と同じ病院へ連れて行かれた記憶がある。そこで、解離性健忘という病名を私はつけられた。
解離性健忘──過度なストレスにより、自分に関する記憶を思い出せなくなる精神疾患。こんな言葉は、何度も聞いた。
洗脳のように、父と母に植え付けられた。『誠の記憶がないのは、病気だから』と。
誠「そっか、お父さんとお母さんが……メモーリアに頼んだんだっけ?」
「…っ……なんで、知ってるの?」
驚いたのか、絶望したのか。母の腕を握る力が緩む。
その隙に母の手を振り払うと、先ほど外れてしまった学校用のリュックサックを引っ掴み、扉を叩きつけるように閉めた。
アパートの階段をガッタンゴトンと音を立てて下る。そのまま駐輪場までダッシュすると、鍵を開け、何ヶ月かぶりの自転車にまたがり街へ繰り出した。
風が耳元を吹き抜けていく。開成医療センターまで、もう少し。
[水平線]
誠「はあっ…はっ……あのっ!面会って、できますか?」
開成医療センターに到着。その瞬間に面会受付まで行くと、受付の人に訝しむような顔をされた。が、すぐに笑顔を作って応対する。
「どの患者さんのご家族?」
誠「南館307号室、如月義人の友人です」
彼女は作り笑顔をキープしたまま、申し訳なさそうにこう言った。
「ごめんね〜、ご家族以外は面会できないの。義人さんのご家族から許可をもらってからじゃないと、患者さんのプライバシーにも関わりますから…」
誠「彼、親がいないんです!」
「あぁ……でも、彼自身ほぼ意識がないようなものだから、面会は難しいです」
誠「……わかりました、すみません」
キッパリと断られてしまった。それじゃあ何がいい?
病院の出口まで歩いていると、ちょうど南館へ向かう廊下がざわついている。
「捕まってたまるかぁ!!!!」
病院指定の入院着に身を包み、体のところどころにチューブを貼り付けたままの子供が、地面を這うようにして転げ回っている。後ろから走ってくる看護師や医者、病院関係者にスリッパを投げつけると、そのままこちらへ向かって転がってきた。
その少年は、狐色のボブカットに青と紫のオッドアイ。少し幼い顔に必死の形相──この世界の、如月義人そのものだ。