【参加終了】無くした記憶と宝探しの旅
誠「ちょ、ったぁ!!!!!!!」
あたしの体を掴んでいた何かが力を緩め、地面に顔面から叩きつけられる。
結構痛い。ただでさえ低い鼻が潰れたんじゃないか?
ぺたんこになりそうな顔面をさすっていると、儚げで芯の通った女性の声が聞こえた。
『…お主、大丈夫か?』
声に反して古風な言葉遣いだ。
驚いて前を見ると、そこにはヴェールや絹を全身に纏った金髪碧眼の女性がいた。
周りには扉がたくさんあり、そのど真ん中にある巨大な大理石製の椅子に彼女は座っている。
誠「えっ、あっ。はぁ…」
あまりの神々しさにたじろいでいると、その女神のような女性はこういった。
『我はメモーリア。第一世界と第三世界の記憶を司る神じゃ。』
記憶の、神……記憶を、返してもらえるんだ!
誠「あのっ!」
『あぁ、わかっている。記憶を、返さねばな。……だが、少しばかり話を聞いてはくれまいか?』
急いでいる。だが、彼女のトルコ石のような不透明な目に射抜かれたような気分になり、黙っていた。
彼女は沈黙を了承と取ったのか、はたまた何があっても話すつもりだったのかはわからない。だが、確実に、一つ一つ言葉を噛み締めるように紡ぎ出した。
『…遠い昔、1人の人間に「息子の記憶を消してくれないか」と頼まれた。どうやら彼は浮気中のようでな、その現場を見られてしまい言いつけられそうで困っているらしい。』
誠「え、そりゃぁ、まぁ、言いつける、よな…」
『あぁ。その息子というのは12歳で、もう何事もわかってしまう達観した性格だという。我は不誠実な人間はあまり好きではないが、あの頃の我は慈愛に満ちておった。』
そこで言葉が途切れる。
慈愛に満ちていた。この言葉が意味することは、記憶を消してやったということだろう。
『そこからだ。子供の記憶を消してくれと頼む親が現れ出した。その度に願いを叶えていたが、このままではいけないと思い滅多に姿を現さなくなった。』
誠「つまり、どういうこと?」
『……なぜ、お主がここにいるかわかるか。』
急にこちらに目を向ける。ドクン、と心臓が脈打つ音がした。
誠「わかり、ません。」
『お主の親が、私に懇願したからだ。「娘の記憶を消してくれ」と。』
ひゅっ…と、息が出る。
言葉が出ないし、あの優しい父と母がそんなことをするとは思わなかった。
『……もう我は、終わりにしたかった。だから、お主らを攫った。まぁ、お主以外は迷い込んできた、と言った方が正しいかな。』
誠「……どういう、意味?」
『…それを、証明するためにお主がおる。』
そう言うと、彼女は椅子から立ち上がった。
2mはありそうな長身を持て余すように歩き出すと、ある扉の前で止まった。
重厚感のある白の扉だ。他の扉とあまり違いがあるようには見えない。
ドアプレートに『葉月 誠』と金字で刻まれていることくらいしか。
誠「これは…?」
『これは、お主の抜き取った記憶の倉庫だ。お主には、これから記憶の追体験をしてもらう。』
意味がわからない。だが、記憶を返してもらえるということだけは分かった。
メモーリア──女神というべきか──は、扉に手を触れた。
『扉よ、開け。』
そう唱えると、扉がズズズ…と音をたてて開く。
『行ってこい。お主の記憶はこの中じゃ。』
誠「…分かった。」
こく、と頷くと、虹色に輝く扉の向こうに一歩を踏み出した。
自分が、吸い込まれていく。
あたしの体を掴んでいた何かが力を緩め、地面に顔面から叩きつけられる。
結構痛い。ただでさえ低い鼻が潰れたんじゃないか?
ぺたんこになりそうな顔面をさすっていると、儚げで芯の通った女性の声が聞こえた。
『…お主、大丈夫か?』
声に反して古風な言葉遣いだ。
驚いて前を見ると、そこにはヴェールや絹を全身に纏った金髪碧眼の女性がいた。
周りには扉がたくさんあり、そのど真ん中にある巨大な大理石製の椅子に彼女は座っている。
誠「えっ、あっ。はぁ…」
あまりの神々しさにたじろいでいると、その女神のような女性はこういった。
『我はメモーリア。第一世界と第三世界の記憶を司る神じゃ。』
記憶の、神……記憶を、返してもらえるんだ!
誠「あのっ!」
『あぁ、わかっている。記憶を、返さねばな。……だが、少しばかり話を聞いてはくれまいか?』
急いでいる。だが、彼女のトルコ石のような不透明な目に射抜かれたような気分になり、黙っていた。
彼女は沈黙を了承と取ったのか、はたまた何があっても話すつもりだったのかはわからない。だが、確実に、一つ一つ言葉を噛み締めるように紡ぎ出した。
『…遠い昔、1人の人間に「息子の記憶を消してくれないか」と頼まれた。どうやら彼は浮気中のようでな、その現場を見られてしまい言いつけられそうで困っているらしい。』
誠「え、そりゃぁ、まぁ、言いつける、よな…」
『あぁ。その息子というのは12歳で、もう何事もわかってしまう達観した性格だという。我は不誠実な人間はあまり好きではないが、あの頃の我は慈愛に満ちておった。』
そこで言葉が途切れる。
慈愛に満ちていた。この言葉が意味することは、記憶を消してやったということだろう。
『そこからだ。子供の記憶を消してくれと頼む親が現れ出した。その度に願いを叶えていたが、このままではいけないと思い滅多に姿を現さなくなった。』
誠「つまり、どういうこと?」
『……なぜ、お主がここにいるかわかるか。』
急にこちらに目を向ける。ドクン、と心臓が脈打つ音がした。
誠「わかり、ません。」
『お主の親が、私に懇願したからだ。「娘の記憶を消してくれ」と。』
ひゅっ…と、息が出る。
言葉が出ないし、あの優しい父と母がそんなことをするとは思わなかった。
『……もう我は、終わりにしたかった。だから、お主らを攫った。まぁ、お主以外は迷い込んできた、と言った方が正しいかな。』
誠「……どういう、意味?」
『…それを、証明するためにお主がおる。』
そう言うと、彼女は椅子から立ち上がった。
2mはありそうな長身を持て余すように歩き出すと、ある扉の前で止まった。
重厚感のある白の扉だ。他の扉とあまり違いがあるようには見えない。
ドアプレートに『葉月 誠』と金字で刻まれていることくらいしか。
誠「これは…?」
『これは、お主の抜き取った記憶の倉庫だ。お主には、これから記憶の追体験をしてもらう。』
意味がわからない。だが、記憶を返してもらえるということだけは分かった。
メモーリア──女神というべきか──は、扉に手を触れた。
『扉よ、開け。』
そう唱えると、扉がズズズ…と音をたてて開く。
『行ってこい。お主の記憶はこの中じゃ。』
誠「…分かった。」
こく、と頷くと、虹色に輝く扉の向こうに一歩を踏み出した。
自分が、吸い込まれていく。