【参加終了】無くした記憶と宝探しの旅
黒鵜が、一瞬で隣から消えた。
激しく壁を打つ音が聞こえるので壁を見ると、黒鵜が壁を跳んでいる。
まるで、あの時の灯火のように。
背中からバズーカを生やして変形した黒鵜は、どこでその技を覚えたのだろうか。
エフェ「致しかないですね…」
そう言ってエフェは、腰に下げていたレーザーガンを取り出した。
乱射されるレーザーを黒鵜は軽々と避けていく。
凪「このままじゃ巻き添え喰らうよ!とりあえず逃げて!」
誠「うん!ほら、義人!」
義人「…あ、ああ!」
義人の腕を引っ張り、追ってくるレーザを避けて地面をつま先で蹴る。
美莉愛やはられが残してくれた満月の加護がまだ残っているので、思っていたより高く飛んだ。
凪『黒鵜!!!!!落ち着いて!!!!!』
そう凪が呼びかけても無反応だ。
エフェもエフェで、必死である。
誠『エフェさん!攻撃をやめて!!!!』
誠ご自慢の大声はエフェに届き、彼は銃をしまった。
だが、黒鵜は治らない。
黒鵜「攻撃をやめたということは、頭をすっ飛ばしてよろしいのですね。」
そう呟き、バズーカを発射する。
黒鵜の目には、エフェ以外の人は写っていなかった。
エフェ「ガード!」
エフェは防御耐性に入る。
誠たちを傷つける意向はなさそうだ。
だが、黒鵜は容赦なく攻撃を続ける。
義人「黒鵜っ!!!」
義人が黒鵜めがけて走り出す。
どんどん距離が縮むが、黒鵜の目には入らない。
このままでは、死者が出る。
エフェ「義人さん!!!死にますよっ!!!!」
声をあげるエフェは、かなり焦っていた。
凪「義人くん!!!」
誠「義人!!!」
その瞬間、大きな破裂音がして、黒鵜はバランスを崩した。
義人「黒鵜!!!!!はぁっ…黒…ゲホッゲホ…黒鵜!」
義人が黒鵜に駆け寄り、倒れた黒鵜を支えた。
エフェ「A-216…!あれほど言ったのに…」
凪「誠くん!行くよ!」
誠「あ、うん!って、わっ!」
凪の傍に抱えられ、早く黒鵜の元へ向かう。
見ると、黒鵜の胸あたりが粉々に割れていて、中からコードやら鉄板やらが覗いている。
エフェ「ここは私に任せてください。」
誠「…でも…」
エフェ「あなた方は記憶を取り戻しにきたんでしょう?試練が自ら退いてくれるなんて、ラッキーなことは滅多にありませんよ。」
ふっと優しく笑ったエフェは、工具箱を取り出した。
凪「…そう、だね。黒鵜、意識ある…?」
エフェ「気を失っています…」
誠「……そっか…ねぇ黒鵜、死んでも戻ってきてね。」
ロボットだということを再認識させられるほど壊れてしまった黒鵜に声をかけ、義人を見た。
誠「義人…行こう。黒鵜は、絶対直してくれるよ。」
義人「…まただ。また…やっちまった…。どうせ、そこのエフェってやつも、あの黒鵜じゃない。偽物なんだ。あの時、黒鵜は死んだんだ。」
凪「…義人くん…」
エフェ「私の、どこが偽物ですか?貴方、体が大きくなっても変わりませんねぇ…」
そう言って、エフェは義人の肩をポンポンと叩いた。
エフェ「私は、確かに死にました。…でも、私のクローンを治しに、また戻ってきたのです。」
義人「…ほんと、なのか…?嘘だろ、だって黒鵜は…」
エフェ「いいから行きなさい。人間のお嬢さんは、あなたが一番わかってあげられるのですよ。ほら。」
義人は、エフェに肩をさすられながら、泣いていた。
凪「……義人くん、行こう。」
義人「………あぁ、わかった。黒鵜…じゃなくてエフェ、お前のクローン絶対治せよ。そうじゃないと殴り倒すからな…」
エフェ「ひっぱたいてでも直しますよ…誰だと思ってるんですか、私を。」
義人はその一言で安心したように微笑み、凪が差し出した手を取って重い扉を開けた。