【参加終了】無くした記憶と宝探しの旅
扉が閉ざされた後、義人に解放された。
誠「照っ!はられ!美莉愛!灯火!」
その瞬間、扉に寄って開けようと格闘するが、鍵がかかったように開く気配は一切なかった。
この扉は、一回閉めてしまうと外からも中からも開けられないのかもしれない。
それに気がついて、灯火たちは私たちを逃したのだ。
きっと、あのコウモリは灯火より何十倍も強かった。
照だって、苦しいはずだ。
はられや美莉愛も、こちらに刃を向けたくなかったはずだ。
はられはさっきの敵より弱いと言っていたが、嘘をつくのが下手すぎる。
もう、あたしにバレちゃったじゃん。
開かない扉に寄りかかり、魂が抜けたように腰が落ちる。
ギュッと握った手には、鮮やかな朱色の簪が折れていた。
義人「…まこちゃん…辛いだろうけど行こう。」
誠「…やだ…」
初めて、口から本音が出た。
凪「誠くん…」
誠「やだって言ってんじゃん!なんでみんなしてあたしを超人扱いするの!?あたし、そこら辺にいるただのガキなんだよ!」
小さな子供のように泣きじゃくり、喉が枯れるのも構わず叫び続ける。
誠「嘘ついて!誤魔化して!バカみたい!ほんと、何がしたいの!?こんなになるなら記憶なんていらない!!!!ずっとここにいる!」
黒鵜「ですが──」
誠「ですが何!?なら黒鵜がやってよ!!!あたしみんなみたいに強くないし!」
八つ当たりだとはわかっている。
あたしを超人扱いするみんなより、八つ当たりをして泣き叫んでいる自分がバカだ。
そして、一番嫌いだ。
義人「…そうか。ごめんな、こんなところに連れてきて。」
驚いて顔を上げると、義人が近くの壁に寄りかかって下を向いていた。
誠「義人だって…おんなじ経験したはずなのに…なんで…」
口から溢れた言葉は、先ほどの大声とは打って変わって掠れていた。
投げ出した足を抱え、顔を膝に埋めて返事を待つ。
義人「…まこちゃんは、僕とは違うって思いたかった。いや、僕が、誰かのヒーローになりたかったんだ。」
とつとつと語り出した義人の表情は、暗くて見えなかった。
義人「過去の自分に決着をつけたかったんだ。元いた世界に戻って、普通の学生に戻りたかったんだ。」
体だけが大人になっちまった、と顔を上げて自嘲するように微笑む。
細められた青と紫の瞳は、後悔と迷いで揺れていた。
少しだけ、案内人の少年のあの表情と似ている。
誠「…そっか。」
そういうことしかできなかった。
凪「…ふは、誠くんより年上でも、僕の方がよっぽど子供だなぁ…羨ましい…」
大人びて見えた凪の姿が、一瞬自分と同い年くらいの男の子のような姿に変わった。
誠「え…凪、小さく…」
そう発した瞬間、脳みその奥の方がズキンと痛む。
今までにない痛みに、思わず顔を顰める。
凪「…?って、誠くん!?」
黒鵜「血が…」
義人「え!?」
誠「……ぅ…」
視界が赤黒い色に染まっていく。
意識も朦朧としてきて、慌てる3人の声がかろうじて聞こえる程度だ。
軽く麻痺した舌の奥が、少しだけ動いた。
唇が無意識に動くと、脳裏に映る彼らが目を丸くする。
それを確認する間もなく、ぷつりと赤黒い視界が真っ黒にそまった。