【参加終了】無くした記憶と宝探しの旅
またあった大きな扉を押したり引いたりして開けると、中には何もいなかった。
美莉愛「あれ…?誰もいな…」
『ざぁんねん♡うちは、ウ・シ・ロ♡』
不気味な甲高い声が聞こえ、全員が一斉に後ろを向く。
そこに声の主はいなかった。
『あっはは♡騙されちゃって!バカだなぁ♡』
今度は上から声がしたので上を向くと、笑いを堪えた女性がいた。
真っ白な悪魔の羽と尻尾がついていて、広告でしか見ないような胸元の空いた服を着ている。
頭には天使の輪が付いていて、悪魔か天使かわからない見た目をしていた。
『あら珍しい。天魔も混ざってるじゃないの♡』
照「ひっ!?」
照の顔色が一瞬で青くなり、カタカタと震え始める。
『そんなに怖がらなくても大丈夫よ♡うちも天魔だしぃ♡』
彼女は美人なので違和感はあまりないが、そこらへんにいる人がこの口調で喋っていると思うと違和感がすごい。
理想と現実の乖離とはこのことだ。
凪「お姉さん、向こうの扉、通してくれない?僕ら、記憶を取り戻しにきたんだけど…」
平和解決が一番だ。
『ん〜?無理♡だって職務放棄になっちゃうもんっ♡…てことで…』
可愛らしくウインクした彼女は、その表情に似合わずこういった。
『皆殺しでいいかな?♡』
どうやら戦闘は避けられなさそうだ。
はられ「この方…さっきのコウモリの倍くらいの強さですね…」
誠「倍!?死ぬんだけど私!?」
美莉愛「大丈夫!誠ちゃんは死なないよ?だって…」
溌剌とした笑顔で、美莉愛は言った。
美莉愛「私達が命をかけて守るからっ!」
そう言った瞬間、先ほど出た部屋から地響きが聞こえた。
灯火…!
敵が目の前にいることも忘れ、全員が後ろを見る。
『忘れてもらっちゃ困るよぉ♡ブラックorスペード!』
地面に黒色の巨大スペードが現れ、光始める。
照「…!ホワイティングガード・アンダー!!!!」
照の珍しく張り上げられた声に呪文が載せられ、下にバリアができる。
とても大規模な呪文だ。
ゲームや漫画の世界なら、チート級の強さだろう。
そのバリアによって下からのスペード攻撃は防がれた。
凪「ミッドナイト・シェイド!!!!」
いつの間にか空に浮いていた凪の背中から真っ黒の影が生まれ、白を基調とした敵に襲いかかる。
『悪魔かぁ…♡闇属性、いいね〜…ブラン=バリア♡』
焦りを感じさせない声色で、彼女は闇を光で押し返す。
凪「…⁉︎ならこれはどうだ。シュヴァルツ!!!!」
凪の手に魔法陣が生まれ、そこから白とも黒ともつかない不思議な色のビームが出る。
突っ立ってばかりじゃいられない。あたしも動かないと。
農業用フォークを構え、ジャンプ力の上がった足に力を入れる。
普段は40cmくらいしか無いジャンプ力が、2mほどに上がっている。
空中でもう一度ジャンプすると、もっと高く飛ぶことができた。
凪が相手をしている間に後ろに忍び寄り、農業用フォークを突き刺そうとした。
『邪魔よ♡』
彼女の白い背中から黒い棘が生えてくる。
慌てて後ろに飛び退いても迫ってくる棘にどうしようもできなくなる。
美莉愛「危ないっ!!!」
世界がスローモーションに見えた。
昔の映画のコマ送りのように、ゆっくりと時間が過ぎていく。
ハッと気がついた時には、美莉愛の腹部に棘が刺さっていた。
はられ「…美莉愛!!!!!」
現実感のないその光景に、気を失いそうだった。