【参加終了】無くした記憶と宝探しの旅
義人side
義人「はぁ…」
12歳の時からずっと、1人で過ごしてきた。
教養もない、友達もいなくなった。家族も…
…家族なんていたっけ?
所詮、[漢字]あいつら[/漢字][ふりがな]誠[/ふりがな]にうまく利用されてるだけだ。
記憶を戻したら手のひらを返すだろう。
表面上は取り繕っていても…まこちゃん、いや誠が羨ましくて仕方がない。
友達もいる、教養はあるか知らないけど、そこまでバカってことはなさそうだ。
帰る家も、待っている家族もいる。
義人[小文字]「いいなぁ…」[/小文字]
黒鵜「何がですか?」
義人「うわぁあああ!?!?」
びっくりしてそりかえる。
腰が痛い。歳かな…
黒鵜「そこまで驚かなくても…」
一つも表情を変えていない。
表情筋固まってんじゃねぇの?
黒鵜「ところで何がいいんですか?」
義人「あ〜、えっと、まぁ、気にすんな!」
大嘘。
僕は明るくて、悩みなんか無さそうな『如月義人』を演じなきゃ。
黒鵜「…そうには思いませんけどね、あなたの思い詰めた顔なんて初めて見ましたよ。」
義人「別に、気にすんなよ〜気のせい気のせい!」
黒鵜「…無理しなくていいですよ、心はまだ12歳なんですから。」
義人「ガキだって言いたいの?」
黒鵜「はい。」
黒鵜は何を考えているんだ?
よくわからない、が
少しだけ、自分の気持ちを吐き出してみたくなった。
義人「聞いてくれよ、黒鵜。僕はあの子達が羨ましくて仕方ない。」
聞いているかはわからないが、構わず続ける。
義人「友達も、教養もある。幸せそうな顔をしている。僕なんかと大違いだ。」
「ずっと昔から1人だったんだ。慣れているはずなのに、羨ましい。」
言葉に出すうちに自分の本心が迷走してきた。
黒鵜「なるほど。つまり1人は嫌だと。」
義人「ズバッというねぇ…まあ当たりなんだけどさ。」
黒鵜「見損ないました。」
義人「は⁉︎」
散々話せって言っておいてそれかよ!
黒鵜「私は、というかこの場所にいる皆さんは義人殿のことを、仲間だと思っていますよ。」
…!
黒鵜「それに…親友の私を友達の中に加えてくれないのは少々いかがなものかと。」
義人「…それはほんとごめん」
黒鵜「謝罪の気持ちがあるなら、魚取ってきてくださいよ。」
義人「なんで…?」
黒鵜「その泣きそうな顔を皆さんに見せるためですが?」
相変わらず無表情だが、黒鵜の優しさが滲み出ている。
義人「ははっ…知らんうちに人間らしくなりやがって…」
黒鵜「私は人間です。それよりほら、皆さん待ってますよ。」
灯火[小文字]「義人さ〜ん!!!魚焼きますよ〜!!!」[/小文字]
凪[小文字]「いつまでもサボるな〜〜!!!!」[/小文字]
黒鵜「行きましょう。」
そういって手を取る黒鵜からは、機械油の混じった懐かしい匂いがした。
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