声の届かぬ世界で
伊藤「[大文字]君も視覚障害者だったんだね。[/大文字]」
廻「・・・そうだよ。」
淡々と話し始める。
廻「僕のお父さんはね、日本の為に戦いに行ったんだ。」
「その後は、お母さんと妹の道子と3人で帰りを待ってたんだ。」
「でも、ある日・・・」
知ってる。授業で習った。あの忌まわしき・・・・
東京大空襲だ。
死者約8万4000人に及ぶ第二次世界大戦中最悪の空襲だ。
まさか、廻君も被害者だったとは・・・。
廻「空襲にあって、お母さんと道子は死んじゃって、僕は、、、」
伊藤「眼に相当なダメージを負ったんだね。」
廻「うん。眼が急に見えなくなって、足を滑らせて、、、」
伊藤「亡くなったのか・・・」
廻「でも、不思議なんだけどね。僕は会えないんだ。」
伊藤「会えない?」
廻「死んでから、ずっとここに居る。」
「他の視覚障害者の子を見ることは出来ても、家族には会えない。」
伊藤「家族に・・・会えない・・・」
廻「どうやったら会えるか、たくさん考えたんだ。そして、思い付いたんだ。」
伊藤「まさか、それが・・・・・」
廻「そう。僕の家にある物を探してもらうようにしたんだ。」
時計を強く握りしめる。
伊藤「でも、、、」
廻「今日も、会えてない・・・」
眼に涙な滲む。
もらい泣きしそうになる。
伊藤「でも、君は今日から会えるよ。」
廻「え?」
伊藤「多分、君が見てきた視覚障害者たちは、まだ死んでないんだよ。」
「そして、その内の誰かが死ねば、君と交代できる。」
何を言ってるのか分からないような顔をしている。
廻「え、、それってつまり、、、、?」
伊藤「明日、楽しみにしていてね。」
そうして、目が覚めた。
耳に、自分の呼吸の音、鳥の囀り、強く吹き込む風の音が入り込む。
もう、10何年も感じていない感覚・・・
思わず涙が溢れる。
伊藤「戻ったんだ・・・聴力・・・!」
その時、兄の春馬が部屋に入ってきた。
春馬「おはよ・・おいどうした?なんで泣いてる?」
伊藤「兄さん、、、僕戻ったよ、、、!」
春馬「え?戻ったって・・・まさか!?」
伊藤「声が聞こえる!全部聞こえる!!!」
2人で抱き合う。
2人で泣きじゃくる。
大声を出して泣いた。いっぱい泣いた。
11年越しに聞く兄の声は、11年前より低くなっていた。
そりゃそうだよね、声変わりしたんだから。
ていうか、僕も喋れる!僕の声も聞こえる!!
そうして、気分も上々のまま、学校へ向かった。
次回、最終回「交代」
廻「・・・そうだよ。」
淡々と話し始める。
廻「僕のお父さんはね、日本の為に戦いに行ったんだ。」
「その後は、お母さんと妹の道子と3人で帰りを待ってたんだ。」
「でも、ある日・・・」
知ってる。授業で習った。あの忌まわしき・・・・
東京大空襲だ。
死者約8万4000人に及ぶ第二次世界大戦中最悪の空襲だ。
まさか、廻君も被害者だったとは・・・。
廻「空襲にあって、お母さんと道子は死んじゃって、僕は、、、」
伊藤「眼に相当なダメージを負ったんだね。」
廻「うん。眼が急に見えなくなって、足を滑らせて、、、」
伊藤「亡くなったのか・・・」
廻「でも、不思議なんだけどね。僕は会えないんだ。」
伊藤「会えない?」
廻「死んでから、ずっとここに居る。」
「他の視覚障害者の子を見ることは出来ても、家族には会えない。」
伊藤「家族に・・・会えない・・・」
廻「どうやったら会えるか、たくさん考えたんだ。そして、思い付いたんだ。」
伊藤「まさか、それが・・・・・」
廻「そう。僕の家にある物を探してもらうようにしたんだ。」
時計を強く握りしめる。
伊藤「でも、、、」
廻「今日も、会えてない・・・」
眼に涙な滲む。
もらい泣きしそうになる。
伊藤「でも、君は今日から会えるよ。」
廻「え?」
伊藤「多分、君が見てきた視覚障害者たちは、まだ死んでないんだよ。」
「そして、その内の誰かが死ねば、君と交代できる。」
何を言ってるのか分からないような顔をしている。
廻「え、、それってつまり、、、、?」
伊藤「明日、楽しみにしていてね。」
そうして、目が覚めた。
耳に、自分の呼吸の音、鳥の囀り、強く吹き込む風の音が入り込む。
もう、10何年も感じていない感覚・・・
思わず涙が溢れる。
伊藤「戻ったんだ・・・聴力・・・!」
その時、兄の春馬が部屋に入ってきた。
春馬「おはよ・・おいどうした?なんで泣いてる?」
伊藤「兄さん、、、僕戻ったよ、、、!」
春馬「え?戻ったって・・・まさか!?」
伊藤「声が聞こえる!全部聞こえる!!!」
2人で抱き合う。
2人で泣きじゃくる。
大声を出して泣いた。いっぱい泣いた。
11年越しに聞く兄の声は、11年前より低くなっていた。
そりゃそうだよね、声変わりしたんだから。
ていうか、僕も喋れる!僕の声も聞こえる!!
そうして、気分も上々のまま、学校へ向かった。
次回、最終回「交代」