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迷ヰ犬の僕達は

#9


敦〔正直驚いた、切符の買い方
   改札の通り方、ホームの場所〕
敦〔本当に何も分かんないとは…
   …異能力を使わないと
    この人何にもできないんだな〕

ちゃっかり失礼な敦

敦〔…あれ?乱歩さんには
   ●●さんって助手が
   居るのに、なんで僕が…〕
敦「●●さん」
●●『ん?どーした敦』

また幼い子供のように目を
輝かせて光が射し込んだ
キラキラ光るビー玉を
見つめ覗いている乱歩を横目に
ぼーっと何もない空間を見つめて
居た●●へ質問をぶつける

敦「あの、これ僕来る
     意味ありました?」 
敦「●●さんって助手が
      居たなら尚更…」
●●『いや、大アリだね』
●●『僕達だけで列車
      乗らせてみな?事務員に
       保護されて探偵社に
          連絡はいるよ』
敦「え?もしかして…
   …●●さんも…」
●●『うん、列車の乗り方…
      …というか、ヨコハマ郊外
      への出方が分からない』
敦「…なるほど…」
乱歩「ホント困っちゃうよね〜」

先程までビー玉を見ていた
乱歩が会話に乱入する

乱歩「僕の助手ときたら
    助手なのに列車の乗り方
     すら分かんないんだもの」
●●『おい。乗り物
      音痴はそっちもだろ。』
乱歩「僕は許されるのさ!!
    なんてったって僕はこの国
    最強の名探偵で異能ry」
●●『はいはいここ列車』

そう言って大声を上げていた
乱歩の口にどこからともなく
出した飴を食べさせ…というか 
突っ込み咥えさせ黙らせた
周りの目も集まっていたので
ここで異能力者という単語は
少しばかり面倒くさいと
思ったのだろう
こちらを見ている乗客達に
すみませんすみませんと
ぺこぺこ頭を下げる●●
はたから見れば構図的に
乱歩は兄に幼い妹の●●だ
最近の下の子はしっかりして
いるんだねーと和んでいるが
実際はまぁ、仕事の同僚だ
この態度すら彼女の算段である

敦〔この人達…ホントに
     大丈夫なのかな…〕

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

箕浦「遅いぞ探偵社」
箕浦「…なんで子供
     なんざ居るんだ」

そういうのは現場に
居た中年の刑事

●●『誰が子供だ』
●●『関係者リスト見てよ  
      探偵助手、○○●●
      って書いてあんでしょ』
箕浦「…」
乱歩「あれ?君誰?安井さんは?」
●●『乱歩先生ってほんっと
       人の話聞かないよね』
●●『今回は担当が安井さん
      じゃなくなって別で    
      後任の刑事さんが
       来るって、言ったよ』
乱歩「あれ?そうだっけ?」
●●『…まぁいいや』
箕浦「…俺は箕浦、その娘が言った
     ように安井の後任だ」
箕浦「本件はウチの課が
     仕切る事になった   
     よって探偵社は不要だ」
箕浦「今日は探偵になど頼らない
    殺されたのは俺の部下だからな」
●●『なるほどそういう系か…』
●●『…被害者のご遺体は
      あの女性で間違いないね』
箕浦「…ああ」
乱歩「ご婦人か…」
杉本「今朝、川を流されている
      所を発見されました」

乱歩が帽子を取り胸元に持ち
一礼する乱歩
その隣では●●が
しゃがんで手を合わせ、敦は
●●の隣で立ったまま
手を合わせている

箕浦「胸部を銃で三発
    殺害現場も時刻も不明
    弾丸すら発見できない」
乱歩「犯人の目星は?」
箕浦「わからん」
●●『へー…』

少しクスっと笑って
怪しげな笑みを浮かべる●●
その後に乱歩が続けた

乱歩「それってさ、なにも
    分かってないって言わない?」
箕浦「だからこそ、素人上がりの
     探偵などに任せられん」
●●『…ふふ…ふふふ…』
箕浦「!?」
●●『…素人上がりかぁ…
       …笑わせるねぇ…』

●●がなにか雰囲気が
変わったように笑いそう言った
次の瞬間、少し遠くに居た警官
やら鑑識やらの声が響いた

「おい!!網に何かかかったぞ!!!」
「人だ!!人がかかってるぞ!!!」

敦「まさか第二の被害者!?」
●●『…』

引き寄せられるようにして
無言でその人とやらが
引き上げられた場所に
歩み寄る●●
それを慌てて追いかける敦
その人と言うのを見た
敦は固まり、●●は
やっぱりかと片手で頭を抱えた
引き上げられたのは同僚の
太宰以外の何者でも
なかったからだ、もちろん
ピンピンとして生きてる

太宰「やぁ敦君!!これは奇遇だね」
太宰「●●まで!!ひょっと
     して、乱歩さんも
       居る感じかい?」
●●『居る…』
太宰「あらま」
敦「ま…また入水自殺ですか?」
太宰「いや一人で自殺なんて
     もう古いよ敦くん」
太宰「私は確信した、やはり
    死ぬなら美人との
    心中に限る!!ああ~心中!!
    この甘美な響き!!」
●●『いつか心中とか言い出す    
      気がしてたけど
      ホントにここまで
        来てしまったか…』

虚ろな目で言う●●
箕浦が最近の子供って大変
なんだなと眺めている
乱歩があれは探偵社の日常だ
彼女は来たときから
世話焼きと話している

太宰「というわけで一緒に心中
     してくれる美女を
       ただいま募集中~」
敦「え…じゃ今日のこれは?」
太宰「フン…これは単に
     川を流れてただけ」
敦「なるほど…」
太宰「ところで●●は
     まだしも敦くんまで
     こんな所で何してるの?」
敦「仕事ですけど…」
太宰「仕事?」

心から自殺を楽しみ
心中を望むそのキラキラした
目のままコテンと
首を傾げる太宰
その直後その顔は一変
とんでもない声と顔で
遺体の女性のを悔やむ

太宰「悲嘆で胸が破れそうだよ~
    どうせなら私と心中して
    くれれば良かったのに~」

呆れた顔で太宰を見る敦 

太宰「しかし安心したまえ
    ご麗人!!稀代の名探偵と
    幼き天才助手が必ずや
    君の無念を晴らすだろ~」
太宰「ね?乱歩さん、●●」
乱歩「ところが僕達は未だに
    依頼を受けてはいないのだ」
太宰「どういう事です?」
乱歩「この人に聞いて」
箕浦「探偵などに用はない
    実際、俺の部下は全員
    私立探偵などより余程優秀だ」
●●『なにも分かってないのに?』
乱歩「まーまー!!彼がそこまで
    意気込むならっ、よし!!
        君、名前は?」
杉本「自分は杉本巡査であります!!
    殺されたこの山際女史の
        後輩であります!!」
乱歩「よし杉本くん!!
     今から60秒でこの
      事件を解決しなさい」
杉本「え、えええーっ!!!?」

慌てふためく杉本とその横で
懐中時計を眺める乱歩と●●
残り時間を見ているらしい

●●『あと50びょー』
杉本「そ、そうだ!!最近山際
    先輩は政治家の汚職疑惑と
    ポートマフィアの活動を
         追ってました」
杉本「確か…マフィアの報復の
    手口に似た殺し方があった
    ハズです、もしかすると
     先輩は捜査した
       マフィアに殺され…」
太宰「違うよ」

先程と打って変わり
落ち着いて一言太宰は
杉本のことを否定し
その声色のまま再び口を開いた

太宰「ポートマフィアの報復の
    手口は身分証と同じで
     細部まで厳密に
      決められている」
太宰「まず裏切り者に敷石を
    噛ませ後頭部を蹴り顎を
    破壊、激痛に悶える
     犠牲者をひっくり
       返し、胸に三発」

うっ…と眉間にシワを寄せ
顔をしかめる敦、どうやら
ポートマフィアの残忍な
報復を不愉快に感じたらしい

●●『被害者の山際女史が
      ポートマフィアの
      裏切り者という
       線は薄いと見た』
●●『あと、もし仮にポート
      マフィアの裏切り者
      だったとして報復の
      手順がどんなパターンを
      考えたとしてもおかしい』
●●『普通に考えて何故
      身分証に間違った内容を  
      記載する必要があったのか』
●●『つまり何故手順を変える
        必要があったのか』
●●『答えはかんたーん 
      容易に内容を変えたのは
      加害者がポートマフィア
           ではないから』
●●『きっと山際女史の顎は
     砕かれてもいない綺麗な
     状態なんだろう?まぁ
     確認する余地もないけどね』
箕浦「なぜそうだと断言できる」
●●『だって実際そうですよね』
箕浦「…」
太宰「まぁ、こんな感じで我々は
    この職業柄、ポート
    マフィアと衝突することも
     多く、割と詳しいのです」
太宰「そこで言わせてもらいますが
   この手口はマフィアに似ている
   だがマフィアじゃない、つまり…」
箕浦「…犯人の偽装工作」
杉本「偽装の為だけに遺骸に
    2発も撃つなんて…酷い」
●●『…犯人は割と身近な 
      人間だったのかもね』
敦「そういうの分かるんですか!?」
●●『いや全然』
敦「え???」
乱歩「ぶぅぅーっ!!!ハイ時間切れー」

うわぁぁと乱歩の大きな声に
驚き背筋を伸ばす杉本
まぁ、無理もないだろう

箕浦「いい加減にしろ!!!」
箕浦「さっきから聞いていれば
    やれ推理だのやれ名探偵だの
    通俗創作の読み過ぎだ!!」
箕浦「事件の解明は即ち地道な調査
     聞き込み、現場検証だろ!!」
乱歩「はぁ??まだわかってないの?
    名探偵は調査なんてしないの」
乱歩「僕の異能力超推理は、一目
    見れば犯人が誰で、いつ
    どうやって殺したか
      瞬時に分かるんだよ~」
乱歩「僕は異能力者だからね」

呆れたような声を出したと
思えば次は自慢げに異能力を
説明しだす乱歩

箕浦「そんな便利な異能力が
     あるなら、俺達刑事は
       いらねぇじゃねぇか」
乱歩「まさにその通り!!ようやく
    理解が追いついたじゃないか」
●●『すごーいすごーい』
●●『あと補足だけど
      うちの乱歩先生はホラを
      吹いたりはしないんだ』
●●『それに推理小説やら
      なんやらは嫌いでねー』
●●『よくも知らないというのに
      知ったような口を
      聞くのは少々ダサいよ
      オジさ…間違えた
         おっさんだった』
箕浦「貴様らァ…!!!」
太宰「まーまー刑事さん
    乱歩さんは終始あんな
    感じですし、●●は 
    乱歩さんの話になると少し 
     熱くなってしまうのです」

3人の間に立ち、どーどーと
箕浦の怒りを鎮めようとする太宰
その直後バーンと手を前に
突き出し、大きな声で乱歩は言う

乱歩「何しろ僕の座右の銘は
    “僕が良ければすべてよし!!”
           だからな!!」
敦〔座右の銘を聞いてこんなに
    納得したのは始めてだ…〕

ちなみに敦の座右の銘は
“生きているならいいじゃない”


太宰「やれやれ」

太宰は
“清く明るく元気な自殺”

●●『全く…あなたは自由奔放が
       過ぎるんだ乱歩先生』

●●は
“独りも二人も然程変わらん”


箕浦「そこまで言うなら見せて
     もらおうか、その能力を」
乱歩「おや~?それは依頼かな~?
    最初から素直に
       頼めばいいのに」
●●『そんな頑固じゃ顔に
      どんどんシワが
        増えるばかりだよ?』
箕浦「フン!!何の手がかりもない
    この難事件を相手に大した
    自信じゃないか
      60秒計ってやろうか?」

するとなにか雰囲気が変わる乱歩
やはり自信ありげな顔をし
箕浦をおちょくっていたが
更ににやりと広角を上げ先程と
変らぬ声色で一言

乱歩「そんなにいらない」

呟いた

このボタンは廃止予定です

作者メッセージ

地味に夢主ちゃんの座右の銘悩んだ

2024/08/22 04:01

のん ID:≫upKx/dE9wxWbw
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