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迷ヰ犬の僕達は

#10


太宰「よく見ていたまえ敦くん
    これが探偵社を支える能力だ」
●●『あの眼鏡をかけることが
      乱歩先生の異能力
      超推理のトリガーなんだ』

乱歩を見るとたしかにそこには
何の変哲もないように見える眼鏡が
握られていた
 
敦〔事件の真相がわかる能力…
   …本当にそんな力が
     存在するのか…!?〕
乱歩「異能力」
[大文字][大文字][太字]乱歩《超推理》[/太字][/大文字][/大文字]

辺り一帯の空気に少し
ばかりの緊張が走った
そう思えば乱歩はまた自慢げで
不敵な笑みを浮かべる

乱歩「なるほど」
乱歩「…犯人が分かった」
乱歩「犯人は―――」

すると小説やドラマなんかに
でてくるような探偵のように
指を突き出す、その先には
   









乱歩「―――杉本巡査」
杉本「…え?」

腑抜けた声を出す杉本
無理もない、まさか自分に
矛先が向くなんて彼自身も
他の人間も思っていなかったからだ
今の今まで誰も

●●『…なるほど…そういうことか』
箕浦「バカ言え!!大体、こんな近くに
     都合良く犯人がいるなど…」
●●『バカ言ってんはそっちでしょ』
●●『犯人だから近くに居たい
       間近で近況が分かる』
●●『それに人間というものは
      非常に単純でね、犯人が
      こんなとろに居る訳が   
      ない、そう思い込むんだよ』
●●『あなたみたいにね?』
箕浦「…」
乱歩「それに言わなかったっけ?
     どこに証拠があるかも
     分かるって、拳銃貸して」

当たり前のように本来なら重い 
刑罰が警官に科せられることを
頼む乱歩、その表情はやはり
自慢げで子供のように無邪気な笑みだ

杉本「バカ言わないでください!!
    一般人に官給の拳銃を
    渡したら減俸じゃ済みませんよ!!」
乱歩「その銃を調べて何も出て来な
    ければ確かに僕も●●も    
     口先だけのアホって事になる」
箕浦「杉本!!見せてやれ!!ここまで
    吠えたんだ、納得すれば     
     大人しく帰るだろう」
箕浦「…どうした杉本」

なかなか拳銃を取り出そうと
せず、うつむく杉本

乱歩「いくらこの町でも
     素人が銃弾を補充するのは
           容易じゃない」
乱歩「官給品の銃ならなおさらだ」
乱歩「彼は懸命に考えている最中だよ
    使ってしまった3発分の銃弾に
     ついてどう言い訳するかをね」
箕浦「お前が犯人のハズない!!!
       早く銃を見せろ!!!!」

するとようやく拳銃に手を伸ばし
ゆっくり引き抜こうとしていると
思えば素早い動作で安全装置を外す
その銃口は乱歩を向いていた

[太字][大文字][大文字]ドンッ!!!!![/大文字][/大文字][/太字]

敦「乱歩さん!!!」

敦が声を上げる
その直後聞こえた言葉に
敦は戸惑いを隠せなかった

[太字]―――異能力―――[/太字]

[太字][大文字][大文字]《羅生門・叢》[/大文字][/大文字][/太字]

羅生門・叢、それはあの時
対峙したポートマフィア構成員
芥川龍之介から敦へ向けられた
異能力と全く同名だった
使用者は弾丸をしっかり掴む
叢の拳を解き、弾丸を手放す
地に落ちた弾丸がカランと
軽い音をたてた
その異能と声の持ち主は









●●だった

太宰「よし敦くんっ行け!!」
敦「あぇぇっ!!!?」

[太字][大文字]ドサッ!!![/大文字][/太字]

急に太宰に押され飛び出す
敦が杉本を捕らえる

乱歩「犯行時刻は昨日の早朝
    場所はここから140m上流の
    造船所跡地、そこに
      行けばあるハズだ」
乱歩「君と被害者の足跡、それに
     消しきれなかった血痕も」
杉本「…どうして…バレる
       筈…ないのに…」
箕浦「続きは職場で聞こう」
箕浦「お前にとっては最後の
     職場になるかもしれんが」

そして杉本の手首にひんやりと
した感覚…手錠がかけられた

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それから取り調べを受けた杉本は
またしても犯行動機から当時の状況
事細かな証拠を乱歩に暴かれ泣き崩れた
無理もない、山際女史を不本意では
あったが殺してしまったのだ
彼にとって大切で常に思い続け
杉本もまた思われ続けている
そんな関係だったのにも関わらず


箕浦「…世話んなったな…それに…
    …実力を疑って悪かった…」
箕浦「…難事件に当たったらまた頼む」
●●『こっちにも非はあったん
       だからトントンだよ』
●●『でも、悪かったね箕浦さん』
乱歩「僕達の力が必要になったら
    いつでもご用命を」  
乱歩「次からは割引価格で良いよー」
●●『こっちも一応商売だからね』
箕浦「…そいつは助かる」 

そう言って3人はにこりと微笑んだ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ガタンゴトン、先程も聞いた
走行音だが、雰囲気は行きより静かで
穏やか、そんな車内を夕暮れが染めていた
行きに比べ1人メンバーが増えた敦達
だが皆疲れたのか乱歩は●●に
寄りかかって眠り、太宰も敦に
寄りかかりはしないものの眠ってはいた

●●『…』
敦「…お二人…寝ちゃいましたね…」
●●『割と日常茶飯事だよこれも』
●●『なにより起こすのが面倒』
敦「ご苦労さまです…」
敦「…あの…」
●●『どうした?』
敦「…お二人眠ってますし聞くなら
   今かなって思ったので…その…
   …僕が知りたい八雲さんの   
    ことについて…お聞きしても
       いいでしょうか…?」
●●『…まぁ、どっかの
      タイミングで教えたげるって
        言ったような気も
          してるし、いーよ』
敦「…聞きたいこと沢山あるんです
   けど…まず、率直に」
敦「あなたの異能力って
   一体…なんなんですか…?」
●●『僕の異能?』
敦「はい」
敦「さっき、杉本巡査が発砲した時
       使ってましたよね…」
敦「…あれは芥川龍之介の異能力…
     …ハッキリ覚えてます…」
敦「…それにあの時意識は朦朧と
   していて会話内容がしっかり
   聞こえなかったですが…
   …確実にあなたが芥川の名を
    呼ぶのが、たったそれ
         だけが聞こえた」
敦「元々、親しかったように…」
敦「…もしかしてあなたは芥川の
   との深く固いなにか関係が
    ある…2人目の羅生門
    所有者なんじゃないですか…」

少し重たい空気が流れる
冷たい目で黙り込んでた八雲が
口を開いた

●●『…そうだね…』
●●『…やっぱり
       面白いな敦はw』
敦「へ…?」

どうやら敦に見えていた
●●は演技をしていたらしい
ケラケラ笑いおかしいやと
お腹を抱え、ひとしきり笑った
後、真面目な顔をした●●
そして言う

●●『でも現実はそんな
      都合よくないからね』
●●『まずは僕の異能に
       ついて話そうかな』
敦「●●さんの…異能力…」
●●『僕の異能力、天の河綺譚は
      簡単に言えば異能力を
       [漢字]複製[/漢字][ふりがな]コピー[/ふりがな]する異能力』
敦「コピー…だから芥川の
   異能力が使えたのか…」
敦「…って、最強じゃないですか!?
   そんなん簡単に世界征服
       とかも夢じゃな…」
●●『だーかーらー!!そんなに
       現実は都合よくない
        って言ったでしょ?』
●●『話は最後まで聞きなさい』
敦「あ…はい…」
●●『天の河綺譚は相手の
      異能をヒトダマっていう
      凝縮したコピーにして
      それを取り込み僕自身も 
      それを使えるようにする』
●●『例えば』

そう言うと●●はぽんっと
自分の体に白虎の尾と
耳を生やし、ゆらゆらと
ゆっくり振ってみせる
敦の月下獣を複製したのだ

敦「!!それ、僕の!!」
敦「もしコピーされたら
   所有者はどう
    なっちゃうんですか!?」
●●『落ち着け落ち着け大丈夫』
●●『技を使用できると言っても
      結局はコピー、複製物
      だから所有者の異能が
      消えるとかはないよ』
●●『でもやっぱり無敵ではない』
●●『ヒトダマの生成条件と
      異能の使用条件が
       どうしても邪魔でね』
敦「条件?そんなに厳しいものが
    かせられてるんですか?」
●●『少しね、その条件は3つ』
●●『1,この目で一度異能力
      発動中を視認すること』
●●『これは割と簡単、動画とか
       でも大丈夫で判定緩め』
●●『2,その異能の内容をある
       程度知っていること』
●●『こういうのあるから僕は
      敵対側より味方側の
       人間の方が再現し
          やすいかな』
敦「僕…入社したてなのにコピー
   されるくらいまで内容
    知られちゃってるんだ…」
●●『まぁまぁ』 
●●『そんで3…これが1番鬼畜』
●●『…3,僕のキャパを
      オーバーしないこと』
敦「キャパ…ですか?」
●●『元々所有しない様々な
      異能を取り入れる
      っていうのは並大抵の
       ことじゃないからね』
●●『筋肉…血管…骨…臓物…
      …脳…人体の全てに負荷が
      かかる、異能が複雑な
      仕組みのものほど…例えば
      “人間失格”とか、負荷は
      大きくなってオーバーした
      その時僕はそこに
         居ないだろうね』
敦「居ない…?」
●●『単純に死ぬってこと』
●●『皮膚が引き千切れて
      全身から血ぃ噴き出して
      その後筋肉が膨張して裂けて
      次に骨が粉々なるかな、四肢
      とか弾け飛ぶときもあるけど
      そのまま異常な程細胞分裂が
      繰り返されその後臓物破裂
      そのまま内部から爆発してる
      みたいな全身がバラバラの
      肉塊に…って敦、大丈夫?』
敦「そ…想像するだけで…
    …ぐ…グロい…です…」
●●『ウサギみたーい』
敦「最強とか言って…
    す、すみません…」
●●『別にいーよ、それに僕
      だってそんな胸糞悪い
        死に方はごめんさ』
●●『一応仕組みが複雑なものを
      使うこともできなくは
     ないんだ、でも使うと肉塊に
     なるか1から2時間かけて   
     完全体を少しずつ構築するか
     時間かかるし緊急性には
        向かないんだけどね』
敦「でも凄いですね、万能な能力ですよ」
●●『まだできることあるよー』
敦「え!?まだあるんですか!?」
●●〘反応大きくて面白いな敦〙
●●『僕の異能力はどちらかと
      いうと僕自身がその異能を
      発してるんじゃなくて
      異能生命体と僕が同じ
       体で共存してるんだ』
●●『僕はあのコを天音と呼んでる
      意思疎通は波長の問題で
         難しいんだけどね』
敦「共存って、大丈夫なんですか?」
●●『全然平気、なんなら僕は
      天音が居ないと日々健康で
      居ることすらままならない
      逆にあのコも僕って
       器があるから消滅
       しないで済んでる』
●●『普通の異能生命体と違って
      体内収容を目的とした異能
      それを所有するにあたって
       僕もまた完全な状態の
       生物になれなかった』
●●『月並みな言葉だけど
      二人三脚とか
       一心同体ってやつ』
●●『だけど、最低限の一部分
      だけ切り離して飛ばせば
      視覚を共有したりもできる』
●●『べーんりなの』
敦「は…はぁ…」
敦〔…なんだか、一気に力の差を
   見せつけられたような気がした〕
●●『で?僕の異能については
      終わり、他に聞きたい
      ことは?あるんでしょ?
      受付時間は到着までね』
敦「あぁ、はい!!」
敦「この間、実年齢は25だけど体が
   幼女って言ってましたよね
   一体、何があったんですか?」
●●『あー、それか』
●●『実は幼いときに事故に
      遭ってしまってね…以来
      事故の怪我でこのまま
      成長が止まってしまった  
          それだけだよ』
敦「いや十分重症…!?!?」
●●『僕にとってはそれだけなの』
敦「じゃあ、さっき言い当てた
   “案外犯人は身近な人間
   だったのかも”って、ホントに
   ただの勘だったんですか?」
●●『そうだねー』
●●『唐突だけど、僕は並の
      人間より頭いいと思う』
●●『洞察力も並外れ
       てんじゃない?』
敦〔…え、自慢???〕
●●『でも我が社はブレーン
      まみれでね、まぁ探偵だし
          悪いことないけど』
●●『太宰の予言は必然で』
●●『乱歩先生の推理は百発百中』
●●『なら僕の勘は絶対だよ』
敦「なるほど…?」

そのまま敦の質問はなかなか
途絶えることのなかった
●●もまたその質問の
返答を途絶えさせることはなかった
そして敦が1つ●●に聞く

敦「●●さんはなんで乱歩さんと
   組んでるんですか?
    やっぱりずっと相方
     同士なんですかね」
●●『いや、そんなことないよ』
●●『僕は探偵社に来てから
      初めて乱歩先生に会った』
●●『一言で言うと自由奔放な変人
     とてもだけど、僕と1個違い   
       には見えなかったかな』
●●『…でもその変人のもたらす
      影響は僕の姿を明るく
      照らした、まるでまばゆい
      光を放つ一等星のように』 
敦「一等星…」
●●『乱歩先生は異能力者じゃない
      でもこの力は、この人は
      異能力者なんかよりも強い』
●●『だから僕は常に一等星が
      1番輝ける環境を作り上げる』
 ●●『僕は乱歩先生の為なら
         なんだってする』
●●『世界の敵になっても
       乱歩先生と居られ
          なくなっても』
●●『…なんてねw
      冗談だよ、言い過ぎた』
敦「冗談…」
●●『言い過ぎたけどあの人の
      為になりたいのはホント』
●●『乱歩先生には笑って
        てほしいんだ』
敦「…」

敦は思った、本当に先程の
言葉は冗談なのか…と
どうやら敦は人の心の変化を
見るのが得意らしく、あの
言葉が冗談か、といわれると
少し違うように見えたのだ

敦「…あ」

そんなこんなで列車が
駅についた、どうも不思議な
時間を過ごしたなと心の
傍らで思いながら

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

探偵社についた一同
すると事務所の作業場には
誰も居なかった、だが何ら
心配することはなく、各自持ち場や
やることをやっていただけである
帰宅に合わせるように国木田が
現れ、書類整理の労働力として敦を
連れていき、働きたくない太宰は
知らぬ間にどこかへと消えていた
乱歩はデスクで腕に顔をうずめ
寝息を立て残された●●は
乱歩を横目で見た後
夕暮れの空を眺めている

●●『なんだって…ね…』
太宰「考え事かい?」
●●『どこに消えて
      どこから現れてんだよ』
太宰「なんだっていいじゃないか」
太宰「というかさっき敦くんと
    話していた時、嘘ばかり
    だったけど、ホントの
    ことは教えてあげなくても
        よかったのかい?」
太宰「大分矛盾して言い訳の
      ようだったけど」
●●『やっぱ起きてたか』
●●『…言わないよ
      僕は太宰じゃない』
●●『事実を知る人こそ数
        少ないからね』
●●『あと言い訳じゃなく
      ヒントさ、これから
      ここに居るうえできっと
       敦は気付くはず』
●●『…それに乱歩先生と
      約束してしまった  
      もうあのようなことを
      言わないこと』
●●『思い出したことが
      バレればまた
       怒られしまう』
●●『ホントに人間らしい
      言動だと思わないかい?』
太宰「…●●」
太宰「互いに言う時は来てしまう
    もの、君もバカじゃない
        分かっているよね」
太宰「その時には潔く
    なろうじゃないか、●●」
●●『…はいはい』

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作者メッセージ

夢主ちゃんの異能力判明、そして夢主ちゃんの
発言にある矛盾、読者の皆様は気付けるかな〜
じゃ、次回までばいばーい

2024/09/25 17:51

のん ID:≫.pZpFfoSwOZ4Q
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